衝撃の告白!?

 俺は志保ちゃんの部屋に遊びに来ているところだ。友達の由香ちゃんを誘わず、俺だけを誘う事に、疑問は抱いても訊けずにいた。


そんな中、志保ちゃんが真面目な顔で「先輩に訊きたいことがあるんです」と言ってくる。何を訊く気なんだ?



 「それで、訊きたいことって?」


「それはですね…」

深呼吸する志保ちゃん。そんなおおごとなの?


「先輩とって、付き合ってるんですか?」


「え?」

何を訊かれると思えば、そんな事か。


「どうなんですか? ねぇ?」

志保ちゃんの顔は、未だに真剣だ。俺をからかっている訳じゃないのか?


「付き合ってないよ。俺と由香ちゃんは友達さ」

連絡先は知ってるんだから、友達で良いよな?


「そう思ってるの、先輩だけですよ」


「そうなの?」

嫌われてはいないと思うけど、好かれている実感はないな。昨日だってジト目で観られたし。…昨日より前もあるな。


「あたし、先輩とまかちゃんの出会いを聴いた時、ずっと疑問だったんです。あたしが知る限り、まかちゃんはたとえパンツを観られても、男の人に文句を言うタイプではありません。当然、自分から連絡先を訊くタイプでもないです」


それは友達視点の話だろう? 友達だからと言って、全てを知ってる訳じゃない。


「まかちゃんは、先輩に一目惚れしたんです。だから話すきっかけを作るために『文句を言う』なんて言ったんですよ」


昨日の志保ちゃんみたいに、腕にしがみついて胸を押し付けるぐらいの行動があれば、説得力があるんだけど…。志保ちゃんはあの話を知ってるのかな?


「志保ちゃんは、由香ちゃんのご両親の出会いを知ってる?」


「いえ、知りませんが…」


「由香ちゃんのお父さんが、暴漢からお母さんを助けたのがきっかけらしいよ。その出会いを『運命の出会い』と言ってたね」


「へぇ~。そんな事が」


「ご両親の出会いと俺の出会いを重ねた結果、甘い評価になったんじゃない?」

方法は違うが、助けたことは共通している。強引に解釈すれば、こうなるかも?


「まかちゃんのご両親の出会いは素晴らしいですが、先輩はまかちゃんのパンツを観たんですよ。同じような評価になる訳ないでしょ」


厳しいツッコミだ。俺も納得だけどね。


「なるとしたら、だからでしょうか? 好きな人のことは、何でも許したくなります。恋は盲目ですからね」



 ここまで志保ちゃんの仮説を聴いてきたけど、仮説の域は抜けない。

志保ちゃんは俺の返事待ちだ。俺は返答に困っている。


このまま黙っているのは良くないな。


「志保ちゃんの考えは、仮説の域を抜けないと思う。俺は由香ちゃんからアタックに近いことを受けていないからね」


本当に俺が好きなら、もっと行動で示すだろう。今のままだと、ただの勘違い男になってしまうぞ。それは恥ずかしい。


「それも、まかちゃんの計画だとしたら?」


「計画?」


「まかちゃんの予定では、少しずつ先輩の好感度を上げて、告白されるのを待つつもりでした。ライバルはいないし、急ぐ必要はないですよね。ですが、ここで問題が出ます」


「問題って何?」


「まかちゃんの友達である『あたし』が先輩に惚れてしまう点です。…思い出してください先輩。まかちゃんの気になった点を全部」


そういえば、志保ちゃんを名前呼びする時…


―――


「渡辺さんなんて堅苦しいなぁ。『志保』で良いですよ」


「…だったら、私も『由香』って呼んでください」


―――


「志保ちゃんを名前で呼ぶことにした時、由香ちゃんもすぐに答えたよね」

まるで対抗しているような…。


うんうんと頷く志保ちゃん。次は…。


「俺が志保ちゃんのパンツを観た時、由香ちゃん強い口調で注意してたね」


―――


「志保ちゃん。本当にパンツが見えてた! 気を付けて」


―――


「まかちゃんからしたら、好きな人が他の女の子のパンツを観てデレデレしてるんですから、注意もしたくなります。先輩ではなく、あたしに言ったのもポイントです。『これ以上、誘惑するな』という意味ですね」


「最後はわかりやすいですよ。ね?」


志保ちゃんが俺の腕にしがみついて、胸を押し付けた時だ。

不機嫌そうに、由香ちゃんは言ったんだ。


―――


「付き合っていない人に、そういうのは止めたほうが良いと思うけど」


―――


「あたしの中ではほぼ決まっていましたが、あの時の言葉でに変わりました。『まかちゃんも先輩が好きなんだな』って。だってそうでしょう? 好きでもない人が女の子と腕を組んで、不機嫌になりますか?」



 「どうです? わかってもらえましたか? 先輩は、2人の女の子に好かれていることが」


正直なところ、理解が追い付かない。女子と仲良くできただけでもラッキーなのに、好かれているなんて。本当に現実なのか?


「本当は今日中に先輩に告白するつもりでしたが、先輩は既にパンクしてますし、時間も遅くなりました。告白は別の機会にします」


急いで志保ちゃんの部屋の壁時計を観たが、そろそろ帰ったほうが良い時間だ。

俺は急いで立ち上がる。


「先輩、玄関まで送ります」

俺達は一緒に階段を下りた。



「先輩、あたしとまかちゃんのことばかり考えて、事故に遭うのは止めて下さいね」


「不吉なことを言わないでくれ」

そうは言ったが、あり得そうで怖い。2人のことで頭がいっぱいだ。


自分の部屋でじっくり考えないと、この状態は解消しない。


「じゃあ、お邪魔しました」

俺は靴を履いた後、玄関の扉を開けた。


「では、に会いましょう」

手を振っている志保ちゃんを確認してから、玄関の扉を閉める。


ん? 月曜の朝? 志保ちゃんは朝が苦手だから、一緒に登校しないはずでは?

再び玄関の扉を開けて訊くほどではないな。


俺は自宅に向かって歩き出す。

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