関係が動き出す!?

 今日は土曜日だ。登校しないから、由香ちゃんと志保ちゃんに会う事がない。連絡先は知ってるから気軽に連絡できるけど『ウザい』と思われないかな?


そう思われたら立ち直れないので諦める俺。

女子と仲良くなったことないんだぞ。距離感がわからないよ…。


やることがないので、好きなゲームでもやるか。やってないゲーム、いわゆる積みゲーはあるんだけど、なんかプレイする気になれない。


買って満足してる気がする。無駄遣いは減らさないとな。


そう思った時、携帯に着信が入る。メッセージじゃなくて電話?

急いで確認すると志保ちゃんからだ。何の用だろう?


「もしもし。志保ちゃん? どうしたの?」


「あ、先輩。今、時間あります?」


「あるよ。自分の部屋でゴロゴロしてるところ」

ゲームするところだったけど、志保ちゃんの方が大事だ。


「そうなんですか。良かったらですけど、あたしの家に来ませんか?」


「志保ちゃんの家に?」

女子の家にお邪魔するのか。嬉しいけどハードルが高いな…。


「はい。もしかして嫌ですか?」


「そんなことない。喜んでお邪魔させてもらうよ。俺を誘ったってことは、由香ちゃんも既に誘ってるよね?」


「まかちゃん? いえ、あたしは先輩だけを誘ってるんですよ」

友達の由香ちゃんを差し置いて、俺だけを誘う?


「俺だけを誘ってくれるの? 嬉しいけど、俺だけで志保ちゃんの相手になるかどうか…」

元々おしゃべりは得意じゃないんだ。女子と1対1は厳しいぞ。


「あはは。そんなに気を遣わなくて良いんですよ。あたしは先輩とおしゃべりしたんですから」


「そこまで言ってくれるならわかったよ。今すぐ向かうけど良いかな?」


「良いですよ。住所は…」

言われた住所をメモする。本当に近場だ。


「じゃあ、準備をしてから向かうね」


「はい。待ってまーす」

そう言って電話を切る志保ちゃん。



 …どうしよう? 服選びに悩むな。


デートではないからラフで良いと思うけど、志保ちゃんの思うラフと俺の思うラフにズレがあるかも? かといって、ダラダラ悩むわけにも…。


志保ちゃんには情けない部分を見られている。着飾る必要はないな。

俺はお気に入りのTシャツと7分丈のパンツを履いて、志保ちゃんの家に向かった。



 ここが志保ちゃんの家か。一軒家の2階建て。平均的な感じか?

偉そうに観察する資格はないけど。


俺は深呼吸してから、呼鈴を押す。


『ピンポーン』


「先輩、今は誰もいないので上がって下さい」


志保ちゃんは早々に応対してから、呼鈴のモニターを切った。

本当に勝手に入って良いの? 不審者扱いされない?


俺は不安な気持ちを抱きつつ、玄関を開けた。



 「先輩、いらっしゃい」


志保ちゃんは、玄関で待っていた。白のTシャツに黒のハーフパンツ姿だ。

制服姿以外の志保ちゃんは今回が初めてだ。


「あたしの部屋に案内しますね。…こっちです」

志保ちゃんに付いていく俺。家の内部を観察したい気持ちは抑えた。


「ここです。…あまりキレイではないですけど」

そう言って、志保ちゃんは2階にある自分の部屋のドアを開けた。


テレビ・学習机・ベッド・折り畳みの机・本棚・タンスぐらいか。

意外にシンプルだな。部屋の配色も男の俺とほぼ変わらない。


「先輩? あたしの部屋、どうです?」

ジロジロ見たせいだろう。志保ちゃんが感想を訊いてきた。


「女子の部屋を見た事がないからわからないけど、ぬいぐるみとかはないんだね。部屋の色もピンク系が多いと、勝手に思ってた」


「そのイメージなら、まかちゃんの部屋ですね。可愛いぬいぐるみがたくさんあるし、ピンクとかベージュ・水色が多いでしょうか」


「そうなんだ」

機会があれば、由香ちゃんの部屋もお邪魔したいな。


志保ちゃんは、折り畳みの机付近の座布団に座るよう促してきた。

ありがたく座らせてもらおう。


「じゃあ、お菓子とジュースとか持ってきますね」


「ありがとう」


志保ちゃんは俺1人を残して部屋を出た。


俺は座りながら、部屋を再び観察した。入り口付近とは見え方が違うからな。


ん? あれは最新のゲーム機か。志保ちゃん、ゲームやるんだ。

どういうジャンルを好むのかな? 後で訊いてみるか。


本棚にあるのは…漫画かな? 座っている状態ではよく見えない。


ベッドの上に、何かが丸まったものがある。カバーと違う色だから目立つな。

何なんだろう? 俺は立ち上がって、それをつまんでみた。


広げてみたら、パンツだった。このパンツ、あの時見たパンツとは違うな。

黒を基調にしているのは同じだが、飾りの感じが違う。


「先輩、パンツを見つける力は一級品ですね」

いつの間にか、志保ちゃんが入り口付近にいて俺を観ていた。


「志保ちゃん。これは違うんだ」


「何が違うんですか?」

ジト目で観てくる志保ちゃん。同じジト目でも、由香ちゃんとは違うな。


「えーと…」

咄嗟に「違うんだ」と言ったが、何が違うのか俺にも理解不能だ。


「あはは。からかいすぎました。そのパンツ、わざとあたしが置いたんです」


「え?」


「ベッドの上のパンツを観てもらうように誘導させて、パンツを観た先輩がどういう反応をするか見るつもりでしたが…。もう見つけるとは予想外です」


お菓子とジュースを折り畳み机の上に置く志保ちゃん。

その後に彼女が座ったので、俺も座る。


「先輩に訊きたいことがあるんです」


真面目な顔で俺に問う志保ちゃん。何を訊く気なんだ?

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