第34話 白いポピーに包まれて3

 私の言った言葉、“同罪”について、凛太朗はどう思うのだろうか。




 「天音さんはさ、どうしたいの?僕は、どうすればいい?……天音さんをもう悲しませたくない。でも、僕は……。」




 「私は、凜ちゃんと話をしたい。今までのことも、これからのことも。覚えてる?辛いことはいつまでも続かない。嫌なことがあってもいつか忘れるって凜ちゃんが言ったこと。でも、私は、ずっと辛いままだよ。日本に来たのは、2人に会いたかったから。一目でも見たらきっと諦められるかと思った。でもね、探す勇気がなかった。出て行った私がそんなことをしていいのかな、って。でも、あの日、昴が話しかけてくれた時、ああ、私にはちゃんと神様が付いていたんだって思えた。びっくりしたけど、すごく嬉しかった。これからまたさよならするなんて、私はできない。凜ちゃんのすべてを、私は受け止めるよ。」




 そうだ、私は、ずっと空っぽだった。スイスで家族の元に戻り、幸せだったはずなのに、どこかでずっとあの日々を探していた。スイスでは、危険な目には合わなかったし、守られる必要もなかった。嫌なことがあっても大したことがないと流すこともできた。嫌なことなんて、今の私自身なのだからそれ以外の問題は取るに足りない小さなものに感じたのだ。両親には強くなったね、なんて言われたが、実際はそんなことはなかった。私はずっと未練がましくて、弱い人間なのだから。




 「天音さん、ごめん。あの時も僕は、天音さんのことが好きだったのに。でも、手を掴むことはできなかった。行くなって言えなかった。だって―――」




 「やめろ。」




 昴が、凛太朗の言葉を止め、さらに続ける。




 「言うな。あれは、時間の問題だったんだ。俺かお前か、もしくは他の奴か。」




 「ねぇ、何を言っているの?」 




 「お前は知らなくていいんだ。」




 「……昴は、そうやって私を遠ざける。向き合いたいって言ったじゃん。私は、あの頃みたいに弱くない。」




 自然と声が大きくなってしまう。感情をむき出しにしてしまうなんて、やっぱり、弱い証ではないか。




 「昴、僕は向き合うよ。天音さんと。昨日、ウイに言われたんだ。」




 そう言って、凛太朗は、昨夜の話を始めた。

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