第42話 ヨシアキVSトウシロー(幕間のお話)
これはガルン伯爵家一同がサカキ侯爵家に招かれていた時の話。
サカキ侯爵家の広大な敷地内には、道場と呼ばれる剣の修練場がある。そこに2人の男がいた。
「さて、トウシロー殿。俺のワガママを聞いてくれて有難う」
「フフフ、ヨシアキ殿。礼は要らぬ。俺も興味があったのだ。故郷を離れて果たして進化したのか、劣化したのか…… サカキ流戦刀術の今の真髄を見せていただこう!」
「フム、劣化はしておらぬと俺は見ているのだが…… だが、相手は
2人とも微妙に相手を貶める言葉を口にする。これは2人の故郷で武士と呼ばれる職業の者がよく使う戦術の1つだ。
「フフフ、相手にとって不足なし…… かな?」
「いかにも…… いざ!」
「オウ! いざ!!」
どちらからともなく腰の大刀を抜き放ち、かたや青眼に、かたや下段に構える。
「基本に忠実だな、サカキ流戦刀術……」
「それが
互いに互いの構えに一言をいい、そして、
「いえぇぇぇーいっ!!」
「くあぁーーっ!」
青眼から繰り出された1振りを下段からの大刀が斬った。
キイィーーーンッ!!
「フム、俺の腕で斬れぬとは…… その太刀は?」
「フフフ、
「ホウ、サカキ家の家宝と言われるあの……」
「それよりもそちらの太刀は?」
「
「死闘を繰り広げた真竜の牙から鍛造したと言われるあの……」
「どちらも豪刀のようだな……」
「そのようだ。太刀が互角ならば後は互いの腕のみ! 今一度、いざ!」
「参るがよい!」
そして、再び上がる奇声と澄んだ音…… ……
それより1時間後、2人はにこやかに道場から出てきた。
「いやー、流石はトウシロー殿だ。参った参った」
そう
「なんのっ、やはりヨシアキ殿よ! 我が剣は未だ頂点に非ず! だ」
とヨシアキをヨイショする。
勝敗は分からないが、2人の
そして、シンに向かってヨシアキは言う。
「シン、お前はトウシロー殿に剣を見てもらえ。トウシロー殿ならば、サカキ流の基礎を覚えたお前の動きを殺さずに、尚且つ神鬼活性流を教えていただけるであろう。さすればシンは俺をも超える剣客ななるだろうよ」
父の言葉にシンは打ち震えて
「トウシロー師匠、よろしくお願いしますっ!!」
と地面に土下座してトウシローにひれ伏した。そんなシンにトウシローは、
「ひれ伏す必要はない、シン殿。我が剣でよろしければお伝えいたそう。本当はトーヤ様に覚えていただきたかったが、あの方はどうも違う事を考えておられるようだ…… ならば、
そう答えて、シンを立たせた。そこにリラが、
「師匠、私も!! これからは真剣に学ぶから!」
とトウシローに言うと、トウシローは
「いや、リラには我が剣ではなく相応しい師匠を見つけてある。フェル様の侍女であるレミ殿よりその技術を学ぶのだ。恐らくはリラにとって一番の技術だぞ」
そう言ってからラメル夫人を見た。それに静かに頷くラメル夫人。横目でそれを見ていたリラは、
「分かった。レミさんを師匠と呼んでその持つ技術を継承する。そして、シンを守る!!」
と宣言した。しかし、シンが
「なっ! 僕がリラを守るんだっ!!」
と言い、それにリラが
「ううん、私がシンを守るのっ!」
と返して堂々巡りしそうな時に、侯爵夫人のマヤが2人に言った。
「ウフフフ、仲が良くて嬉しいわ。でもね、
そうして、剣客2人の勝負は終わりシンは生涯最高の師を得ることになった。
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