第26話 そして10歳……

 僕も10歳になりました。タイムリミットまであと2年…… まあ、僕が勝手にそう考えているんだけど。一応は12歳になると簡単な手仕事程度にはつけるようになるから、恐らくはその時に父かもしくは長兄によってログセルガー公爵家から放り出される可能性を考えてるんだ。

 そうなった時に、もしも僕に付いてきてくれる人が居るのなら、その人たちの生活を守れるように、自分自身に力をつける必要があると今日まで頑張ってきたんだけど。

 第三王女様が何故か庶民用と言われるツージ調理専門学校に入学してきてから、僕の周りが慌ただしくなってきたんだよ……。


 王女殿下は8歳。何故この学校にやって来たのかと不思議に思っていたら、どうやらクレアちゃんが原因だったようだ。クレアちゃんは辺境伯家令嬢でもあるから、王都にいる間は偶に王宮に行って幼い王女殿下のお相手をしたりするらしいんだ。フェルちゃんは、侯爵家だから同じように要請が来てる筈だけど、どうもテルマイヤー侯爵家が断っているらしい。そんな教養も無いので、王女殿下のお相手として相応しく無いって言ってるそうだよ。(クレアちゃん情報)

 それでもフェルちゃんは、王族の人たちと関わり合いになるのは嫌ですわと言ってこれ幸いと思ってるそうだけどね。

 

 で、第三王女はクレアちゃんと話をする度に学校が楽しいと聞かされて、庶民用と貴族たちに認識されている僕たちの学校に行きたいと国王陛下と王妃様にお強請ねだりして、未子に甘いご両親は了承してしまったんだ…… 沢山の護衛付で……


 コレには王女殿下の同級生は勿論、他の学年もドン引きで、所謂お友達が出来ない状況に王女殿下が泣きに泣いて、そして僕たちに白羽の矢が立ってしまったんだよ。


 一応は公爵令息である僕と、その婚約者で侯爵令嬢であるフェルちゃん、そして辺境伯令嬢であるクレアちゃん、更には男爵令息のカルイくん、何故か庶民のライくんが、殿下が学校にいる間は護衛代わりになるという事に……

 僕たちの平和は無くなってしまった……

 

 何故僕たちにそんな役目をと思ったら、沢山居た護衛の中に僕の技能である見極眼みきわめと同じような魔法を開発した魔導師がいたようで、その人が僕たち5人を視て、大丈夫だと太鼓判を押したらしい…… 余計な事を……


 因みに10歳になった僕はこんな感じに成長したんだ。



名前:トーヤ・ログセルガー(公爵家五男)

年齢:十歳

種族:人種

位階レベル:21

性別:男

性格:ムッツリ・アレオッパイ星人

称号:転生者・フェルの婚約者

体力:168

気力:239

技力:192

魔力:687

魂力:955

技能:魔力操縦・全属性魔法(MAX)・身体強化(絶大)・気配察知(範囲絶大、超緻密)・刀技(15)・見極眼みきわめ(MAX)・隠密行動(12)・料理(15)・小太刀(17)

加護:アメノウズメの加護

   【道具箱】【知識箱】

   (ツクヨミの加護)

   (【月光】)


 どう、かなり成長したでしょ? 視た魔導師さんも驚いてたって王女殿下が言ってたから、それなりに強くはなってると思うんだ。僕としては、料理が15でクレマイン先生と並んだのが一番うれしい事だったけどね。

 

 で、護衛をしてる僕たちの勉強は? とみんなが思うかも知れないけど、僕たちが護衛をするのは課外授業の時と、先生が必要だと判断した時だけだから、常に殿下に引っ付いている必要はないんだ。今でも専属の護衛が常に2人は陰ながら付いてるしね。それでやっと王女殿下にも同級生の中にお友達ができて、楽しく学校生活を送っているんだけど、問題は初めての課外授業で、僕たちがやらかしてしまった事だったんだ。

 

 僕たち5人はもちろん、王女殿下の班に付いていく事になって、引率はクレマイン先生だった。そして、先生が上級生にお手本を見せて貰おうと言い出して、下級生にいい所を見せようと張り切った僕たち5人は見事な連携でシカを3頭狩って、解体、料理して振る舞ってしまったんだよ。


 王女殿下と同じ班だったのは、伯爵令嬢(4女)が1人と子爵令息(5男)が1人、ライくんの妹、パン屋の娘(長女)の4人で、沢山の護衛が居なくなってから王女殿下と仲良くなったらしい。そして、その5人が、


「まあまあ、トーヤ兄様はお強いだけじゃなくて、お料理までこんなに美味しいものをお作りになるのね!! わたくしもお料理をしてみたいですわ! 教えていただけますか?」と、王女殿下。


「トーヤ様、あの、フェル様がとても羨ましいです…… 私もいつかトーヤ様のような素敵な方に出会いたい……」とポッと顔を赤らめながら伯爵令嬢のセーラちゃん。


「トーヤ様、いやトーヤの兄貴あにき! 僕を弟子にしてください!」と、子爵令息のウォールくん。


「あの、フェル様、コチラのシカを解体された際のナイフをよかったら見せて貰えませんか?」と、ライくんの妹のメリーちゃん。


「カルイ様、ライ様、コチラのシカ肉のタレは? もしも良かったら教えていただけないでしょうか? 家のパンに挟んで食べると相性抜群なので」と、パン屋の長女のセレースちゃん。


 僕たちも下級生たちに褒められてちょっと良い気になっちゃって、その時は何も考えずにハイハイって返事をしてたんだ。僕は頷いてたりしてただけだよ、もちろん。

 それから、翌日は学校が休みなのに朝から使者さんが家に来て、王宮への呼び出しがあったんだ。

 ライくん兄妹にセレースちゃんを僕の馬車に一緒に乗せてあげてって使者さんに頼まれたから、迎えに行ってライくんのご両親に驚かれたんだよ。それに、何故かトウシローとリラも一緒に来て欲しいって言われたから、2人にもついてきて貰ったんだ。


 王宮に着くとクレアちゃん、カルイくん、セーラちゃん、ウォールくんも呼ばれたようで、馬車停留所で合流したんだ。そこに、トウシローの知合いらしい騎士がやって来て、トウシローにこう言ったんだよ。


「ご無沙汰しております、ガイム指南役。今日は国王陛下に王妃殿下、それに第二王子殿下と第三王女殿下がどうしてもご学友を王宮に招いてもてなしたいと言われまして、お休みのところ申し訳ありません」


「いや、久しぶりだ、ローム近衛騎士副団長。いや、今は団長だったな。そうか、それが呼び出しの理由か。だが、何故俺やリラまで?」


「お二人をお呼びしたのは第二王子殿下でしてな。私も理由はお聞きしておりません。そうそう、サカキ侯爵家のシン殿も先に来て待っておられますぞ」


 僕はその時にイヤな予感がしていたんだ。それはフェルちゃんも感じていたみたい。

 でも、この機会を何とか上手く利用出来ればとも思っていたんだけどね。 

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