第27話 王族の皆様

 僕とフェルちゃんのイヤな予感は御前に行き、陛下のお言葉で確信になってしまったんだ。


「やあ、よく来てくれたね。ここは、僕達家族の私的な部屋だから言葉遣いについては気にしなくていいからね。それで、君があのバ、ゴホンッ、ログセルガー公爵の5男のトーヤくんだね。はじめましてだね。その横にいるのがテルマイヤー侯爵家の4女のフェルちゃんかな? で、サカキ侯爵家のシンくんに、ロックフィルド辺境伯家のクレアちゃん、ナタリウム男爵家のカルイくん、そして、シンくんの婚約者である学園最強と言われるリラちゃん、それにご両親が解体をなりわいとされているライくんにその妹のメリーちゃんだね。本当に良く来てくれたね。私はこの国の一応は代表者でもある国王なんかやってる者で、ケレスという名だ。家の家族を紹介しよう。私の横にいるのが妻で王妃でもある、サラディーナだ。妻の横にいるのが第二王子で次男のヨロスで、私の横に居るのは皆も知ってると思うが、第三王女で末っ子のヨーナだよ」


 うん、良くおしゃべりになられるお口だとは分かりましたし、僕の血縁者である父を【バカ】と認識されている事も理解しました。それにしても僕たちを一人も間違えずに覚えられてるとは思わなかったよ。一人抜けてるけど…… 僕たちは陛下の言葉に頭を下げてロイヤルファミリーに礼を示した。


 一人抜けてると思ったけど、わざとだったみたいだ。


「それに、騎士ガイム、久しぶりだねぇ。トーヤくんに仕えるって手紙だけ届けて音沙汰なしになるから、ヨロスが怒ってねぇ……」


「陛下、ヨロス殿下、ご無沙汰しております。今の私はトーヤ様にお仕えする【侍大将】です。しかし、何故殿下がお怒りに?」


「イヤイヤ、だってガイムそれまでヨロスの指南役をやっててくれたでしょ? それを途中で放り出して居なくなってしまったからだよ」


 陛下の返事にトウシローは困った顔になった。


「陛下、お言葉ですが私はこの城に私がいる間だけとお約束しておりましたぞ。そして、その時に私の意思で好きな時に出て行く約束もしておりましたが?」


「父上っ!?」


 トウシローの言葉に多分その約束を知らなかったヨロス殿下が声をあげる。


「えっと…… 約束してたっけ……?」


「はい、なんなら今から契約書をお見せしましょうか? あの時に口約束では後に何か遺恨が産まれるかも知れないと言って、宰相殿を交えて作成した契約書がありますが?」


 その言葉に陛下はヨロス殿下を見て謝った。


「ゴメーン! ヨロス、父の勘違いだったみたいだー!!」


 で、物凄ーく呆れた目で自分の父を見る殿下。ついでに残念な夫を見る王妃殿下の目も呆れているように見える…… ヨーナ王女殿下の目は、さっきから僕たちの方を見て、家族をガン無視だ。

 呼ばれた僕たちはこの状態でどうすればいいんだろうね? 

 その時に大きなため息をつきながら、ヨロス殿下が喋りだした。


「ハアー、父の勘違いでしたか…… 申し訳ありません、ガイム師匠。師匠に言われた自分自身で良く確認をしてから行動を起こすようにとのお言葉を、実践する事を怠りました。けれども、勘違いだったとはいえ、そちらのトーヤ殿とリラ殿に興味があるのも事実です。ヨーナの用事が終わりましたら、私と手合わせをお願いしたいのだが、二人とも受けて貰えるだろうか?」


 ハイ、来たー。脳筋さんアルアルで強いと噂されてるリラと手合わせしたいんだって。僕はリラの方を見て目線で問いかけた。すると、リラは不思議そうな顔で僕に言った。


「トーヤ、王子様の言ってた言葉をちゃんと聞いてた? 私だけじゃなくてトーヤとも手合わせしたいって言ってたよ?」


 アレ? 僕にはその言葉は聞こえなかったなぁ…… 現実逃避をしてる僕に脳筋王子が重ねて言う。


「そうだぞ、トーヤ殿。むしろ君との手合わせを一番に望んでいるのだが?」


 クッ、僕の【何を仰っておられるか分かりません】防御を破ってくるとは…… 仕方なく僕はトウシローを見ると、苦笑いしながら頷かれたので、諦めて僕は了承の意を込めて脳筋王子に頷いた。


「おお、ではよろしく頼む!! では、ヨーナよ、早く用事を済ませるのだ!」


 嬉しそうにそう言う脳筋王子にヨーナ殿下が言った言葉にみんなが固まった。


「え? お兄様、トーヤお兄様や他の先輩たちにご用事があるのはわたくしではないわ。お父様でしょ?」


 誰も、もちろん僕たちも知らなかったから陛下に皆の視線が集中する。


「あー、その何だ、トーヤくん。君には既にフェルちゃんという婚約者が居るのは重々承知してるのだが、どうだろう? もう一人婚約者なんて? いや、相手はそれなりの地位がある者でな、ヨーナの姉である、第二王女でハーナと言う者なんだが? どうかな?」


 さ、寒い…… 何故か僕の横から途轍もない冷気が僕とロイヤルファミリーに向かって漂いはじめている。発生源はフェルちゃんのようだ。

 本当に何を言い出すのかな、このポンコツ陛下は! 僕を凍死させる気ですか! ココで回答を間違えると2つの死が僕を待っているだろう。一つは受け入れた時の凍死。もう一つは断った時の不敬罪。アレ? 詰んだ…… どっちにしても死ぬね、僕…… 言葉を失った(違った、喋れないと認識されているんだったや。)僕は、必死に考える…… それに助けを出してくれたのは何とヨーナ殿下だった。


「エッ!? イヤよ、お父様。トーヤお兄様は血の繋がらないわたくしのお兄様認定なのですから、ハーナお姉様の旦那様になったら、血縁関係になってしまうわ! わたくしはそれはイヤですっ! それに、ハーナお姉様が婚約者を欲しがるとお思いなの? 執筆時間と読書時間に生活の8割を割いているあのお姉様に?」


 ウオーッ、何て出来た子だ! うん、僕もヨーナ殿下を今から妹認定しますっ!! それに勢いを得た僕は、紙とペンを取り出してサラサラとお断りの言葉を書いて陛下に見せた。


【大変に光栄なお申し出ではありますが、私はフェルを心から大切に思っております。将来、フェル以外の妻を娶る事もないと断言できますので、出来ればお話は無かった事にして頂ければ幸いです】


 それを見た陛下は、ハアー、ダメかと仰って、素直に引き下がってくれた。よし、コレで万事解決だ! と思ったけど横からの冷気がまだ止まらない。僕は恐怖を抑えてフェルちゃんを見ると、


「トーヤ様、何で直ぐにお断りされなかったのか、後で教えて下さいませね」


 と氷の微笑で言われてしまった……


 僕のイヤな予感は最悪な形で実現してしまったようだ。だから、ロイヤルファミリーなんかと関わり合いになりたくなんて無かったんだーっ!!

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