第25話 伝説級の料理
レッドバード、別名火鳥。体長は1メートル〜1.5メートルだ。僕の目の前で羽休めをしているのは1.5メートルある大型だから、先生に料理してもらえばお腹一杯食べる事ができそうだね。
レッドバードは敵を見つけたら先ずは火を吐いてくるから、僕は不意打ちを狙ってるんだ。
僕は技能、【隠密行動(5)】を発動してから、もう一つの技能【身体強化(強大)】も発動する。
そして、慎重にレッドバードに近づいていく。刀は既に抜き身で手に持っている。
あと2メートル…… ッ! 気づかれた! でも刀の間合いにはあと2歩…… 火が来た!
って、初めて見たけどかなり遅いや。僕は飛んできた火を右斜め前に飛びながら躱して、そのままレッドバードの首に刀を振る。
一刀で斬り落とす事に成功した僕の真後ろから先生の声が聞こえた時はビクッとしてしまった。
「お見事!!」
えっと、気配0でしたけど…… 先生って何者ですか? 僕が振り返って先生を見ると先生は僕を急かした。
「ホレホレ、ボウッとしとらんではよう血抜きをせんか! 血抜きをせねば臭い肉を食う事になるぞ」
僕はハッとして直ぐに動き始めた。目線でフェルちゃんに茶【土魔法】をお願いする。心得たフェルちゃんが自分たちが隠れていた場所からもう少し離れた場所に血抜き穴を作ってくれた。
僕とライくん、それにカルイくんの3人でレッドバードの体を運ぶ。斬り落とした首はクレアちゃんが運んでくれた。
ちょうど穴の上に張り出した枝にライくんが登ってロープをおろしてくれたから、レッドバードの足を縛り、降りてきたライくんと力を合わせて引き上げたんだ。
それから、周りに血の匂いが流れないように僕が結界を張った。
「ほう、結界まで使えるとは…… トーヤはかなりの魔法を使えるようじゃな」
先生に感心したように言われたけど、僕は曖昧に笑っておいた。僕が全属性魔法を使えるのを知る人は居ないからね。リラにもフェルちゃんにも教えてないし。まだ、8歳の子には重すぎる秘密になると思って教えてないんだ。
探るように僕を見る先生だけど、血抜きをしながら羽を毟り始めた僕を見て、
「羽は羽で売れるからの。ちゃんと取っておくんじゃぞ」
とアドバイスをくれた。
へぇー、レッドバードの羽って売れるんだ。知らなかったや。と思ったら、ライくんが追加情報を教えてくれた。
「大きい羽は細工物や、ペンになるし柔らかい羽は布でくるんで掛け布団にすれば、薄くても暖かい布団が出来るんだよ。まあ、布団を作るには1羽分じゃ足りないけどね」
おお!! 羽毛布団だ! どうやら火系統の魔力が羽にも僅かに残っていて、それが暖かくなる要因らしいよ。
そんな話をしながら僕たちはテキパキと手分けして解体作業を進めていったんだ。ふと、クレアちゃんが羽休め場所の方を見る。
「トーヤ様、2羽目が飛んできたみたい。私とフェルで狩ってみてもいい?」
何故か僕に聞いてくるクレアちゃん。僕はフェルちゃんの方を確認するように見た。
「トーヤ様、私もクレアと一緒にやってみたいですわ」
僕にそう言うフェルちゃんに承諾するしかなかったけど、チラッとライくんに目線を送ると、僕の気持ちを汲んでくれたのか、弓矢を手にして何時でも二人の援護が出来る位置に入ってくれた。
うん、ライくん凄いね。僕は二人が気になりながらも、カルイくんと二人で解体作業を進める。
今はもう肉の切り出し作業に移っていて、僕が切り出した肉をカルイくんが仕分けて、大きな葉で包んでいるんだ。この葉は抗菌作用があって、虫を寄せ付けないから、非常に重宝しているよ。
先生は二人の方を見てくれているけど、暫くしたらコッチに戻ってきて、
「2羽目が来るぞ。準備は…… 出来ておるの。さすがじゃ」
と僕とカルイくんの段取りを褒めてくれたよ。
フェルちゃんとクレアちゃん、ライくんの3人で運ばれてきた2羽目も解体して、僕たちは移動する。
小川の側に移動した僕たちは魔法を駆使してカマドを作って、解体したレッドバードの肉を先生に渡した。
そして、僕も同じ食材を使用して料理をするんだ。
「ほう? トーヤは料理も出来るのか? ならば、ワシも楽しみが出来たわい」
僕が料理をするつもりがあると見た先生は本当に楽しみにしているかのように微笑んで、手を動かし始めた…… すっごい速いや!?
僕たちの驚愕の視線を気にする事なく、先生の手は動く。ハッとして僕も手を動かす。僕が作るのは照り焼きだよ。
先生はレストランで作っていた伝説級の料理を作ってくれてる。その技法は蒸し焼きだったんだ。僕は横目でチラチラ先生の進める料理を盗み見た。少しでも手順を覚えたくて。
僕の料理よりも先生の料理の方が先に出来たけど、僕の料理も1分あとには出来上がったから、みんなに食べて貰う。僕も食べるけどね。勿論だけど、匂いが魔獣を寄せ付けないように結界を張ってあるよ。
先ずは先生の料理をパクリッ!
く〜〜、美味しいっ!! 蒸し焼きされた鳥の柔らかさは勿論だけど、先生が肉に摺り込んでいたハーブ塩が絶品過ぎる…… コレは僕の照り焼きなんかはダメダメだよと思っていたら、他ならぬ先生が僕の照り焼きを食べて叫んだ。
「トッ、トッ、トレヴィア〜〜〜ンッ!! ムホーッ、このソースが特に旨いのう! トーヤ、レシピじゃ! レシピを教えてくれっ! この料理法はワシも思いつかんかった!」
いや、絶賛されてますけど先生の料理の方が何倍も美味しいですよ。僕がそんな顔をしていたら、他の皆も、
「トーヤ様、初めて食べますわ!」とフェルちゃん。
「トーヤ様、家のシェフにもレシピを教えたいです。よろしいですか?」とクレアちゃん。
「トーヤくん、この料理って違う鳥でもいけそうだね!」とライくん。
「ハグッ、ハグッ、旨っ、旨っ」とカルイくん。
と大絶賛された。まあ、カルイくんの場合は食べる事によってだけど……
そう言えば照り焼きってこの世界で見た事ないかな? でも、串焼き鳥はあったよね。アレの変化系いや、逆かな? 照り焼きが先で串焼き鳥が変化系なのかな? どっちにしても串焼き鳥(タレ)があるから、照り焼きも有りそうだと思ってたけど、無かったのか……
「トーヤ、これはレシピを調理師協会に提出してくれるかの? ソレによってトーヤにも特許料が入るし、お金を払えばワシらもこの料理を作ることが出来る。じゃから、帰って早速ワシと手続きに行こう! 今日の課外授業はこの班は満点じゃ!!」
と、クレマイン先生に促され、僕たちは急いで学校に戻って、校長先生にクレマイン先生が話をして全員で調理師協会に出向いて、先生の顔で特許手続きを速やかに行った。照り焼きは、ひと月の僕の収入が期間は2年間で、銀貨2枚(200,000円)になったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます