第15話 とある令嬢の気持ち(幕間のお話)

 私はテルマイヤー侯爵家の四女でフェルと申します。この度、辛い日々を送っていた実家から私と私の唯一の味方であるレミをお救い下さいました騎士様ナイトが現れました。

 その騎士様ナイトの名はトーヤ様。この国では忌み子と言われている黒髪、黒目の方でございます。


 でも私はそんなトーヤ様に惹かれております。どうやら産まれつき喋る事が出来ないようで、お言葉をお聞きする事は叶いませんが、その端整なお顔にある魅力的な切れ長の目が、とても雄弁に私にお返事をして下さいます。


 そんなトーヤ様と婚約まで出来るなんて! 私は私を実家より救い出したら、てっきり婚約は解消されるものと考えておりましたがそんな事もなく、セバスさんに確認をしましたら、私から申し出がない限り婚約解消はあり得ないとの事でした。何というコトでしょう!? 私はレミとお話します。


「ねぇ、レミ?」


「何でございましょう、フェル様」


「私なんかがトーヤ様の婚約者だなんていいのかしら?」


「フェル様、大丈夫ですよ。トーヤ様もフェル様をお好きです。レミには分かります。あのフェル様を見る優しい眼差しは、間違いないです。それに、レミとしましても、このお屋敷に来られて本当に嬉しいのです。もう会う事も叶わないと思っておりました、前獣人王のご息女であるラメル様と、ラメル様を誑かしてその夫となっているクソ兄貴に出会えたのですから! ラメル様のお子様であるリラ様もフェル様に負けず劣らずの天使のような方ですし」


「ええ、そうね! リラちゃんはいつも私を応援してくれるの! 本当に同い年とは思えないほど賢いし!」


「そうですね。でもフェル様も負けておりません。レミはそう思っておりますよ。ですから、これからもトーヤ様に相応しい淑女レディとなる為に出来る事を頑張りましょうね、フェル様」


 ああ、そうですわ。私は兄や姉達からこのブサイクめっ! ブスは何をしてもブスなんだから、美容専用の侍女は必要ないでしょっ! なんて言われてました。だから私は人様よりも顔の造りは悪いのだと思います…… でも、そんな私を婚約者として下さったトーヤ様が、恥をかかないように私は研鑽しなければっ!!

 いつかトーヤ様の横に並び立って、誰がご覧になっても立派な淑女レディだと思われるように、私は頑張りますわっ!!



(トーヤの気持ち)

 最近のフェルちゃんは気合が入ってるなぁ。あんなにも可愛い顔を苦しそうに歪めてまで頑張らなくてもいいのに…… でもその苦しそうな顔までも可愛いんだから、僕には眼福なんだけど。

 でも、本当に僕が婚約者でいいのかなぁ? フェルちゃんがいつか、婚約を解消させて下さいって言ってきそうでビクビクしてるけど、そう言われないように僕も頑張らないと!

 よーし、フェルちゃんの横に並び立てるいい男になる為に、今日もトウシローに鍛えて貰おう!!

 やるぞーっ!!


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