第13話 男にモテたって……

 うるさいザラスが衛兵に連れだされたのを見ていたザラスについてきていた馬車3台は、何も言わずに公爵家へと帰っていった。

 でも、ガイムは屋敷に残っている。どうやら僕に何か用事があるらしいんだ。


 屋敷の中にガイムを招き入れて応接間まで進むとセバスがハレにお茶の用意を告げた。


 うーん? 僕は何も思い当たる事がないけど、セバスは何か知っているのかな? そう思いながら僕はソファに向かい、身振りでガイムにも座るように伝えた。けれどもガイムはソファには座らずに、僕の前にある小さな机を退けて、僕の前で片膝をついて剣を鞘ごと両手に持って捧げる。そして、


「客分騎士ガイム、これより王命から外れトーヤ様に一生の忠誠をここに誓います! ご了承頂けますでしょうか!?」


 唐突に僕にそう言って来たんだ。


 エエエーッ!! な、何を言ってるのかな? この騎士様は? それに客分騎士って何? なんの事なんだろう? 僕は頭の疑問を晴らすべく、見極眼を使用してガイムを見た。



名前:トウシロー・ガイム(侍)

年齢:二十八歳

種族:人種

位階レベル:35

性別:男

性格:主君命

称号:客分騎士・一騎当千

体力:565

気力:781

技力:610

魔力:100

魂力:1,925

技能:神鬼活生流(創始者)・竜刹刀(創始者)・羅刹攻(創始者)・騎士魔法(1)

加護:タケミナカタ・タケミカヅチの加護

   【軍神】【刀神】



 イヤッ! 無理無理無理無理っ!! 何なのこの人!! こんな凄い人が僕に一生忠誠を誓うって、どうなってるの?

 僕の驚愕と無理って顔を見たセバスが、僕に言った。


「ガイム様は恐らく今世で最強と言われる騎士様です。トーヤ様ならばお仕えするに値するとガイム様は思われたのでしょう。私としても、ガイム様がトーヤ様を鍛え、そして護って頂けるのなら何の憂いも無くなります…… トーヤ様、ご決断をっ!!」


 いや、口では真面目にそう言ってるけど、絶対に面白がってるよね、セバス。だって目が笑ってるんだもん。いや、これは前世でもそうだったけど、何でこんな優秀な人が僕に仕えたがるのかな?


「私は普段はガイムと名乗っておりますが、名はトウシローと申します。この国の王にも明かしてないこの名にかけて、トーヤ様を鍛え、トーヤ様を含めて大切な方々をお護りすると誓いますので、どうか私を護衛騎士にっ!!」


 それは非常に嬉しいし、頼もしいんだけど、僕の何がそんなに良いのか教えて欲しいなぁ……

 僕は取り敢えずこのままでは話が進まないと思い、捧げられた剣を受取り、刃部分を持って柄をガイムに差し出した。剣を捧げたまま頭を下げられていたら話も出来ないからね。けれど、それがダメだったと気付いたのはガイムの言葉によってだった。


「おおっ!! 自らを護り、護衛騎士としての勤めを果たせとお許し下さるのですねっ!! 有難うございます! トーヤ様! 一生お仕え致します!!」


 エッ! いや違うよ。僕は話を聞きたいから剣を返しただけなんだよ…… オロオロしている僕を見て、セバスが目だけで笑いながら、肩を震わせている。ひょっとして、ああいう風に剣を受け取って返したら、了承した事になるって事? こ、困った、そんなつもりじゃ無かったのに……

 そんな僕の様子を見ながらセバスが満面の笑みでガイムに言った。


「さあさあ、ガイム様。机を元に戻して取り敢えずお座り頂けますか? コレからは同僚としてよろしくお願い致しますね。それよりも宜しければトーヤ様がお仕えするに値すると思われた要因を教えて頂けますか?」


 セバスの言葉にガイムも慌てて立ち上がり、律儀に机を戻してから喋りだした。


「セバス殿、これから同僚だと言うのならば、私の事はトウシローと呼んで頂きたい。この屋敷に居られるトーヤ様にお仕えする皆にそう伝えて欲しい。そして、私がトーヤ様をお仕えするべきご主君だと思ったのは、その優しさ。そして、5歳という年齢にも関わらず、又、お言葉を口に出来ないというハンデをお持ちなのに、自らを律し体も心も鍛えられた精神の強さに惚れたからだ。この国の王にも見られなかったこのつよさに、私の侍としての心が震えたのだよっ!!」


 うん、恥ずかしいです…… そんな屋敷中に聞こえる大声で言わないで下さい…… その大声によって屋敷の中の皆がココに集まってきてるから、恥ずかしさは倍増どころか、5倍増になってます……

 僕の真っ赤になった顔を見て、親衛隊メイドが「ハア〜、尊い…」とか言ってるのも聞こえてきます。


 僕は筆談でガイム改めトウシローに言った。


【国王陛下のお許しなく決めても大丈夫なの?】


「はい、私はこの国では客分扱いとなっております。ログセルガー公爵の護衛騎士をしていたのも、王命ではありますが、暇なら護衛でもしてみる? と国王に言われたからです。仕えるべきご主君に出会えた時には自由にして構わないともその時に契約しておりますので、何の問題もございません」


【そうなんだ。それなら良いけど…… トウシローは今、剣を腰に下げてるけど本当は刀が本来の武器だよね?】


「何とっ!! 何故それを…… ハッ、私が言ったさむらいの一言でそれを見抜かれましたか!? 何とご聡明な事か!? ハイ、トーヤ様の仰る通り、私は刀が有れば本来の力を発揮できます。が、この国での入手は困難なようですので諦めております……」


 ゴメンナサイ、見極眼で見たからなんです。僕はそう心で謝りながらも、残念そうに言うトウシローに【道具箱】の中から大小だいしょう二本の刀を取り出して手渡した。驚愕しながらも反射的に受け取るトウシロー。


「なっ!? 一体どこから…… いや、何も問いますまい。トーヤ様にお仕えするのですから、主君が明かさない事を詮索しないのも家来の勤め…… それで、この大小を下賜して頂けるのですね…… な、何という名君であらせられるのか…… グッ、このトウシロー、益々トーヤ様に惚れましたぞっ!!」


 うん、やっぱりイケメンでも男にモテても嬉しくないなぁ。僕はどうやら健全な男の子のようだよ。


 こうして僕に心強い味方が一人増えたんだ。

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