第3話 半年たったよ、生きてるよ
僕は今、至高の時を過ごしている……
僕こと、トーヤは年齢に意識が引っ張られたのか俺ではなく僕と称するようになった。勿論、自分の意識の中での話だけど。そして、僕の至高の時とは……
「アラアラ、トーヤ様は今日も一所懸命ですね。でも、沢山飲んで元気に大きくなって下さいね。リラも頑張って」
そうラメルさんが声をかけてくれる。
「ラメル、そろそろ行ってくるよ。おっ、トーヤ様、元気だな。沢山飲んで早く大きくなるんだぞ」
コレはガルンさんだ。ラメルさんの旦那で庭師をしているらしい。産まれて半年たち目も何とか見え始めた僕は、周りの事もだいぶ理解出来るようになった。そして、ラメルさんは牛獣人で
二人とも僕に優しくて、リラと変わらない愛情を注いでくれている。
「な、なあラメル、そろそろ二人目なんかどうだ?」
おっと、夫婦の会話だ。しかーし、この至高の時を減らされるのはダメだ。僕は小さい手で胸部装甲を強く押す。
「アナタ、まだ二人とも産まれて半年よ。二人目はまだ早いわ。それに、旦那様が……」
「そ、そうだな…… 済まないな、俺が不甲斐ないばかりに…… それじゃ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
どんな事情でガルンさんとラメルさんがここに居るのかはまだ分かってないけど、僕の父は獣人が嫌いなのに、離れとはいえ二人が住んでいる事実。まあ、おいおい分かるだろうと思う。
そして、先ずは僕が軽く背中をパンパンされてゲップをケプッと出すとベッドに寝かされ、続いてリラも同様にケプッと出した後に僕の横に寝かされる。リラは不思議な娘で僕の手を握るとニコーとした顔のまま眠りにつく。そんな様子を見ながらラメルさんが、
「アラアラ、リラはお姉ちゃんなのに甘えんぼさんね」
と言って僕とリラの頭を優しく撫でてくれるのだ。しかし、その誘惑に負けずに目をつむりながらも寝ない僕。それは体の中の不思議な感覚を操作する為だ。それが何かは分かっている。そう、この世界特有の魔力だ。
産まれて二ヶ月が過ぎた頃、ガルンさんがラメルさんに
「ラメル、やったぞ。レベルが上がってた! 見てくれ、ステータス開示」
と言ってたのを聞いて、僕も頭の中でステータスと思ったら、ちゃんと出たんだ。
名前:トーヤ・ログセルガー(公爵家五男)
年齢:零歳(二ヶ月)
種族:人種
性別:男
性格:ムッツリ
称号:転生者
体力:8
気力:21
技力:3
魔力:12
魂力:36
技能:無し
加護:アメノウズメの加護
【道具箱】【知識箱】
とまあこんな感じだった。そして、【道具箱】と【知識箱】って何だと思っていたら、【道具箱】は色々な道具が中に入っていて、大きくなったら使える様になりそうだ。更に、まだ余裕があるので中に何かを入れる事も出来る。【知識箱】は知りたい事を教えてくれる。そこで僕は魔力や体力などを増やす方法の知識を得たんだ。産まれて五ヶ月でやっと体内の魔力を認知出来て、それを体内に循環させる事に成功したのは二週間前だった。
けど、かなりいい感じになったよ。
名前:トーヤ・ログセルガー(公爵家五男)
年齢:零歳(半年)
種族:人種
性別:男
性格:ムッツリ
称号:転生者
体力:10
気力:35
技力:5
魔力:80
魂力:155
技能:魔力操作
加護:アメノウズメの加護
【道具箱】【知識箱】
ムフフ、レベルが一つ上がって魔力の数値がドーンと増えたんだ。何故か魂力もドーンって増えたけど…… まあ、そこは置いといて。
技能も無しから魔力操作が増えたよ。こうやって少しでも出来る事をやっていたらレベルも上がるし、技能も増えていく世界なんだと知ったから、今も僕は猛烈な眠気と戦いながら頑張ってるんだ。やがて体を自由に動かせるようになった時に、この優しい家族を守れるように今は出来る事を精一杯頑張ろうと思ってる。
ハッ、いつの間にか寝てしまってた。けれども心地好いからまだ寝ていたい…… この心地好さは何だと思ったら、リラが僕に抱きついているからのようだ。
この国にも季節があるようで、日が落ちると確かに少し寒くなってきている。その寒さに我慢できずにリラが僕に抱きついてきたようだ。赤ちゃんってプニプニでまた
ハッ、僕も赤ちゃんだったよ……
そうしてお互いの大人より少し高い体温の心地好さから僕はまた寝てしまったようだ。
起きたのはリラの泣き声だった。どうやらお腹が空いたようだね。僕はラメルさんが来るまでリラの手を握っていた。そう言えば僕もお腹が空いたな…… しかし、僕は泣かない。それによって、ラメルさんもガルンさんも僕が生まれつき喋れないと考えているようだけど、まだ何も分からない状態だから、僕は声を発しない。心から信用できると思った人とは喋るつもりだけど、その喋れる事を他の人に言わないで欲しいと頼む為に、成長する事が必須項目だ。
そこまで考えていたら眠そうなラメルさんが隣の部屋からやって来た。
「リラ、お腹が空いたのね。ゴメンね、来るのが遅くなって。アラ、トーヤ様も起きてるのね。それじゃ、二人とも飲み飲みしましょうねぇ」
そうして僕はまた至福の時を過ごしたのだった。
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