◉貴女にも〈天使の祝福〉を。②

「ルーチェ、やっほーニャ!頑張ってるニャ?」

「ロイロちゃん、やっほー?順調ですよ。フェルミナさんが整理券を配布してくれたり頑張ってくれたので、お客様にはお待たせせずに喜んで頂いてます」

「そんな。ルーチェ様のハンドケアのお手並みが素晴らしいのですよ」


 少し照れながらもフェルミナさんが私を立ててくれます。様だなんて、そんな畏まらなくてもいいのに。


「ニャ。ルーチェは心配ごむよーみたいニャ。

 〈てんしのしゅくふく〉は愛美の作ったクリームニャからお客さんも大満足なはずニャ。

 やっぱりアキサメみたいニャやろーがやるより、ルーチェみたいニャ美少女がやるほーがウケるニャね」

「ロイロ姉、おや...アキサメ様に聞こえるから!」


 ふふふ。美少女だなんて。ロイロちゃんもウェネトさんも十分美少女ですよ?

 それに、私はアキサメさんにもう一度ハンドケアして欲しいな、なんて。


「ありがとうございます。でも、やっぱりこの〈天使の祝福〉は凄いです。肌荒れも一瞬で治るし、すべすべの綺麗なお肌になって、お客様も本当に大満足してくれるんです。こんなハンドクリームを作る〈マナミさん〉って方は凄いですね」


 本当に素晴らしい方だと思います。世の中の肌に悩む女性を笑顔に出来るのですから。

 私にはとても、


「ニャ〜に言ってるニャ。確かに愛美のハンドクリームは逸品ニャ。

 でも、それはあくまでただのハンドクリームであってそれ以上でもニャければそれ以下でもニャいニャ。

 確かに凄いニャよ?でも、お客さんを笑顔にしてるのは、ルーチェがお客さんのことを思ってハンドケアしてるからニャ。


 いつもお疲れ様、

 今日は楽しんでね、

 明日も頑張ろね、


 そんなルーチェの優しさが、その〈てんしのしゅくふく〉のチカラを2倍にも、3倍にもするのニャ。お客さんの笑顔を2倍にも、3倍にもするのニャよ。


 アキサメはちゃーんと分かってるニャ。


 和菓子が大好きなリズだから、美味しくて幸せニャ気持ちを伝えられるって。

 パンを愛するカメリアだから、誰よりもパン作りの大変さも楽しさも、美味しさもを伝えてくれるって。

 ルーチェだから、〈てんしのしゅくふく〉の良さや素晴らしさや感動を最大限、お客さんに伝えられるって。


 ニャから、自信をもってムネをはるニャ。

 ニャんとお客さんに言ってやるニャ。


 『貴女にも天使の祝福を』ってニャ」


 ホロリ、と涙が自然と出てきちゃう。

 ロイロちゃんの、アキサメさんの気持ちが心に沁みるようにすっと広がって。じわじわとあったかい気持ちが溢れてくるよ。


『頑張るルーチェに天使の祝福がありますように』


 アキサメさんが、私に贈ってくれた大切な言葉が頭と心に優しく語りかけてくる。私は、私は。


「本当に幸せ者です」と呟いたその時でした。



ーーー称号【翡翠玉ジェダイトの聖女】を獲得。


ーーー称号【世界樹の加護】を獲得。


ーーースキル【癒しの光】を獲得。


ーーー【ハーフエルフ】、【ドライアドの寵愛】、【原初の血族】、【翡翠玉の聖女】、【世界樹の加護】が揃い、種族進化可能となりました。これより個体名ルーチェ・ガルトラムは【ハーフエルフ】から【エンシェントエルフ】に進化します。




「ほぇ!?」

「わ、わたしはニャにもしてないニャッ!ムジツなのニャ!そ、そうニャ、ウェネトの仕業ニャ?ダメじゃニャいの、ウェネトったら〜...」

「おいッ!?そこでどうやったら私のせいになるんだよ!」

「バ、バカちんッ!大きな声を出すニャって!?アキサメにバレたらど『何がバレるのでしょうかね、容疑猫ロイロ君?』...」


 あ...。



「ニャニャニャニャニャーーーッ!!イ、イタイ、痛いニャー!どーぶつぎゃくた、イタタタッ!!ゆ、指が食い込んでるニャ!?ギ、ギブ!話せば分かり合えるはずニャーー!」

「ギャッ!?イタッ!?え、お、御館様!?私もですか?イヤ、言い訳と、イタタタッ!!ちょっ、駄猫コイツですッ!駄猫ロイロが全部悪いんですってばッ!?」



 私の種族進化とか称号とかスキルとかの驚きは、目の前でアキサメさんの手でそれぞれ頭を捕まえられて宙ぶらりんの2人の叫び声に掻き消されてしまいました。


 ふふふ。でも、なんかいいですよね、こういうの。賑やかで、楽しくて、あったかくて。

 幸せだなって、実感できちゃう。


「ルーチェッ!?笑ってニャいで助けてニャ〜!」

「御館様ッ!マジで痛いです!ご勘弁を〜」

「喋る元気があるうちはまだまだですよ、容疑猫ロイロ共犯兎ウェネト?」



 うわぁ...痛そう。アキサメさんの笑顔が黒いよ。頑張って、ロイロちゃん、ウェネトさん。



「ニャーーーーーッ!!!!」

「ピョーーーーンッ!!!!」




 

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