『まかせろニャ!』という不思議と不安を掻き立てる言葉。~『ピョン』とか『ニャ』にはご用心~

「ニャ〜ニャニャ〜♫ニャ〜♪」


 ご機嫌なハミングをBGMに、まだ呼んでもいない駄猫神ロイロが軽い足取りで出店スペース内を回っています。


「ロイロ様ッ!本日は宜しくお願いします!」


 ロイロと目が合ったアンナは頭を下げ、ロイロも機嫌良く返事する。


「よろしくニャ!...ニャ?今日は精霊チビはいないニャ?」

「精霊様は今日はお家の方に居ないといけないらしくて、お留守番だそうです」


 自由奔放な精霊さんが素直にお留守番だなんて。

 明日は雨でも降るんじゃないだろうか、と心配になりますね。


「そう言えばロイロ、ソラはどうしたんです?」

「ニャ?ソラちんは〈気まぐれ猫〉の屋台でちゃんと待機してるんじゃニャい?」

「ああ、そういうことですか。興奮した猫が勢い余って飛び出してしまった、と」

「アキサメ様!大正解です~!この駄猫ったら呼ばれてもいないのに先走りやがって...お蔭で出るタイミング失くしちゃったじゃないのよ!」

「そんなこと知らんニャ」


 頭にぴょこんと生えた猫耳をピクピクさせながら、清々しいまでにきっぱりと、悪びれも無く言い切るロイロは流石だと変に感心してしまう。

 本当に猫らしい駄猫である。


 まあ、そんなことばかり気にしていては、時間が勿体ないですね。

 今日の〈気まぐれ猫〉は忙しいので、ちゃっちゃと準備を進めていきましょう。


「今日は扱う商品が多いので役割分担しますよ。

 先ず、ハンドクリームの担当は、ルーチェ」


 名前を呼ばれたルーチェがしっかりと返事をする。


「はい、店長!では、ハンドケア体験の担当ってことですね?」

「正解。前回よりマッサージの時間は短めにしましょうか。

 女性のみ、人数も午前と午後の2部で先着順に限定にしますから、慌てずに対応して下さい。

 そうですね、午前はフェルミナと一緒にお願いします」

「分かりました、店長!フェルミナさんも宜しくお願いします」


 丁寧に頭を下げるルーチェに驚きながらも返事をするフェルミナ。


「ル、ルーチェ様!頭をお上げ下さい!ことらこそどうぞ宜しくお願い致します」


 ルーチェのことを、レオン・ガルトラムの義娘と認識しているフェルミナにはまだ、姉妹のように接する、とはいかないみたいですね。


「さて。和菓子の担と『ハイッ!!わがしはリズがたんとーしたいです!』...はい、では担当はリズと...アンナ。お願いします」

「かしこまりました、アキサメさん。リザティアお嬢様、宜しくお願い致します」

「いっしょにがんばるです、アンナちゃん!」


 ペコリ、とお辞儀するアンナとそのアンナの手を取りキャッキャと燥ぐリズ。

 本当にリズは和菓子が大好きなんですね。

 つまみ食いはダメですよ?


「さてと。ケーキは私が新商品と提供するので、では良子さんのパンは、カメリアにお願いしようかな」

「任せておくれよ!良子師匠のパンは私が責任もって売り切るよッ!」


 あははは、気合十分だね。頑張っていただきましょうか。

 音慈さんのオルゴールは屋台のBGMとして流しておくのが1番良いでしょうし...あれ?神様ズが余った?


「ロイロとソラは...何がしたいですか?希望があれば聞きますが」

「私は...アキサメ様と〈新商品〉を販売したいです」


 と、ソラ。

 ロイロは、ニャア~...、と考えたをしています。

 ロイロとの付き合いもそれなりになってきて、だいぶ考えていることが分かるようになってきました。

 猫耳がピクピク、尻尾が大きくゆら~りと左右に振れている時は、何かを期待している時の癖。

 この間、音楽神様からお願いされて〈ちゅ~る〉をご褒美としてあげた時と一緒。

 そして、ロイロの望む今回の〈気まぐれ猫〉出張営業での役割。


 それはズバリ、


「ロイロ、貴女は今回の出張営業でのリーダー役をお願いします。

 お店で言うならば...アルバイトリーダー、みたいな感じでしょうか?」


 アルバイトリーダー...さて、ロイロは他の娘達の見本となれるのか?

 ていうか、ロイロが接客方法やマナーを他人に教育するとか。

 ...難しかったかな?


「ニャハハハハハハハハハハッ!!

 私のスウコーな考えをミゴトに言い当てるニャんて、流石はアキサメニャ!」


 あ、しまった。

 変なスイッチ押してしまいました。


「ニャハハハハハッ!ニャーハッハッハ!

 ぜんぶ私に、まかせろニャッ!」


 うわぁ...いまさら、やっぱりナシで、とは言い辛いじゃないですか。

 どうしましょう?

 こういう時のロイロはやらかします。


 御目付役を側に置いておきたい。

 そうだ、今日の百神から来る予定の者は...。


「ソラ、百神からは今日は誰が来ますか?」

「はい、確か今日来るのは...」




『呼ばれて飛び出てピョンピョピョ~ンッ!』




「...兎の女神ウェネト様です。

 バステトロイロちゃんの、同郷の女神です」

「嗚呼、何故今日に限ってお前なんだよ、ネト...」



 基本、語尾に『ニャ』とか『ピョン』とか当たり前のように付けるヤツは、大抵が〈やらかし系〉だから、皆さん注意しましょう。


「前途多難とか...この間の大行進パレードより大変な気がしますね」



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御一読頂きありがとうございます。


さあ、役者は揃いました!

次回はアルバイトリーダー視点も交えながらの商売です。


では、また次話でお会いできたら幸いです。




 

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