嘘つきポルクとルミィの涙。⑥〈⚠︎残酷描写注意〉

弥栄よいやさ〜、弥栄よいやさ〜』


 少し先では、釣竿を持った事代主神コトシロヌシが、その優しげな掛け声からは想像出来ないほど残虐に魔物共の生を散らす。


 随分と視界がすっきりしてきたな、と思うほどに〈鬱憤晴らし〉と銘打って暴れる百神達。

 神には神なりのストレスがあるのだなぁ、なんて。


 そういやさっき、九尾とエリスさんが話をしていたっぽいな...。

 あの2人、似たような性分だからか、お互いに中々受け入れ難いだろう。

 俗に言う同属嫌悪というヤツか。


 まぁ、エリスさんの事はこの件が済んでから考えるとするか。

 これから先が有るにせよ、無いにせよ、一度しっかりと話をしておかなくてはいけないだろうから。



ーーードゴンッ!!...


 辺りに響く破壊音を立てた張本人が、フワリ、とこちらに飛んできた。


『御館様ァーッ!今の見ててくれました!?私ィ、頑張りましたァ〜〜!』

「御苦労」


 キャイキャイと目を輝かせて私の周りを飛ぶ菊理媛神ククリヒメ

 縁結びや商売繁盛、ヒトやコトの間に入り交渉するスペシャリスト...そうは見えんがな。


 さて。

 そろそろこの魔物大行進モンスターパレードの落とし前をつけてもらうとするか。


 主催者黒幕を引き摺り出して。

 阿呆な観察者悪役を這い蹲らせるか。


 憐憫あわれな、の英雄の御霊安かれ。

 願わくば来世は幸多き人生ものであるように。


 そんな事を思いながら、数時間ほど前に酒場で見た、まだあどけなさの残る少年の亡骸に触れる。


 下半身は魔物に噛み砕かれたのか存在せず、左腕は肘から先がで切り落とされていた。

 短剣の残骸を握り締めたままの右手は、血で赤黒く染まっていた。


 最期に見たモノは何だったのだろうな。

 こんなクソったれな世界に攫われて、要らぬ使命を無理矢理待たされてしまった少年の魂は。

 クズの気まぐれに振り回された、〈嘘つき〉ポルク。

 前世でも魔物大行進モンスターパレードを経験したのだろうか。

 もしかしたらソレで命を落としたから、この世界の神とやらに目をつけられたのやも知れんな。


思兼神オモイカネ

『此処に』


 名を呼べば、すぅっと側に現れ恭しく頭を下げる知恵の神。


「この茶番、終わらせようぞ。

 何処ぞで高みの見物を決め込んでいる愚図と、阿呆な悲観主義者を引き摺り出せ」

『御意に』



 

 全ての魔物を葬り、大行進パレードを完全に終息させた我等は、再び練り歩く。


 弥栄よいやさ


 ヨ、ヤッシャー。


 助けて下さるヤッシャー



「救いとは何ぞ?」


 弥栄、弥栄。


「汝等にとって、救いとは何ぞ」


 静まり返る漆黒に、街が燃える焔がゆらりと煌めいた。


 この街の、国の〈嘘〉が一つ燃ゆる。


 ぐらり、と大きく傾いた大輪の花は、一度だけ辺りを一層照らした後、天に向かって咆哮を上げ崩れていく。

 舞い上がる火の粉が蛍火のように、綺羅綺羅とその虚像を散らしていった。


 私は、命ずる。


「囲め。何人たりとも逃す事は許さぬ」


 と。



 嘘つき英雄ポルクの汚名くらいは返上してやろう。


 本当の〈嘘つき〉を皆に教えて進ぜよう。


 そして、


 こんなくだらない事に私を報いを受けて貰おうか。

 







 なぁ、ルミィとやら?



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御一読頂きありがとうございます。


ポルク君の最期は笑っていたのでしょうか?


明らかに狙ったタイミングで起きた今回の件に、秋雨はどう決着をつけるのか。

黒幕は、観測者は。

ルミィは何をしたのか。


次回は、ポルク君のお話の最終話となります。

もしかしたら、サイドストーリー(◉)でポルク君のお話を書くかも?


『ヨイヤサ』とはヘブライ語で〈神は救って下さる〉という意味があるとか。諸説あるようですが。


では、また次話でお会いできたら幸いです。

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