嘘つきポルクとルミィの涙。⑤〈わたしのわがまま〉(⚠︎ひらがな多め注意)

 静まり返る室内に、カチャリ、とソーサーにカップを置く音が響く。


 少し渇いた喉を潤し、エリスさんに視線を送ると、悲痛な表情と言えばよいのか、背後に立つカインさえも暗い顔を隠せずにいる。


 厳しい事を言った自覚はあります。


 ですが、私は救世の旅をする聖者ではありませんし、英雄願望も持ち合わせていません。

 そこに、私なりの理由がある場合に限り、介入する事はあります。

 リズ、ルーチェ、カメリア、レオンさんやサーシャさん。カインやアンナ、フェルミナの時だって、私には関わり持つ理由がちゃんとありました。

 もちろん、エリスさんの時も。


 では今回の件はどうか。


 エリスさんも含めて、私達は偶々この街に立ち寄っただけで、何かしらの縁があるわけも無いのです。


 故に私が手を出す理由も、無い。


「以前にも申し上げましたが、私は勇者主人公ではありません。

 気まぐれに異世界ユルクを渡り歩く、異世界商人アウトサイダー

 くれぐれもお間違えなきようご注意ください」


 沈黙が流れ、もう言葉も出てこないようなので、私はリズ達を連れて宿を出ようと思います。

 3人はMDスキルの異空間に居れば安全でしょう。


「では、失礼し...リズ?」


 ソファから立ち上がって部屋を出ようとすると、いつの間にか、さっきまで寝息を立てていたリズが起きていて、私を真っ直ぐ見つめているのに気付く。


「アキサメお父さん」


 穏やかに話し始めたリズに、少々驚いてしまいました。


「リズ、起こしてしまいましたね。

 今からこの街を出ますので、一緒に行きましょう」

「アキサメお父さん、はなしをきいてほしいです」

「...どうしましたか?」

「リズは、アキサメお父さんが大好きです。

 いろんなことを教えてくれるし、

 おいしいおかしをくれるし、

 たのしいパンづくりにもつれて行ってくれるし、

 まちがったことをしたリズのほんとうのお父様とお母様に、ダメだよって教えてくれたし、

 いろんなあたらしいお友だちをしょうかいしてくれるし、

 ドラゴンだってかんたんにやっつけてガルトを守ってくれたし、

 レオンお祖父様とお友だちになってくれたし、

 サーシャお祖母様のおからだもなおしてくれたし、


 リズはアキサメお父さんはすごいひとだってしってるです。

 ロイロちゃんやソラちゃんみたいなすごいお友だちもいるアキサメお父さんは、すごいんです。

 リズは、そんなアキサメお父さんが大好きなのです。

 これからもリズのお父さんでいてほしいです」


 そう言って、リズはモゾモゾと自分の鞄の中からあるモノを取り出して、再び私に言う。


「これからリズは、わがままを言うです。


 リズはしらない人でも、だれかがきずつくのを見たくないです。

 リズにはチカラがないけど、たすけてあげたいなって思うです。

 かなしいお顔も、泣いてるお顔も、見たくないです。


 それに、エリスの泣きそうなお顔も見たくないです。



 リズにはぜんぶできないけど、わたしの大好きなアキサメお父さんなら、ぜんぶできるです。


 お外にいるまものたちを、やっつけてください。


 まちのみんなを、たすけてください。


 エリスお母さんのえがおを、まもってください。


 だからリズは、わがまま言います。



 ・アキサメにおねがいもうしあげます。


 わたし、リザティア・ガルトラムのわがままをかなえてください。

 ぜんぶ、ぜーんぶ、かなえてください。


 よろしくおねがいしますッ!!」


 ぺこり、と頭を下げて。

 その小さな両手で大事に持ち上げた、御堂院の家紋入りの短刀。

 私が、困った時に助けてあげます、と約束したその言葉を信じて。


 リズは、自分の我儘だと言う。


 あぁ。リズに頭を下げられるのは2度目ですね。

 この子はいつも、自分以外の誰かの為に頭を下げて。



ーーー『ねぇ、秋雨君。私のワガママ、叶えてくれないかな?』



 私は、応える。


 リズの前で片膝を床につき、頭を下げ恭しく言の葉を綴ろう。


「貴女のその我儘、確りと叶えて差し上げましょう。

 御堂院の名の下に、魔物の大群有象無象の一切を斬り捨てると御約束致しましょう」


 と。


 立ち上がった私は、幼な子の頭に優しく手を置き、語りかける。


「リズはもう少し寝ていなさい。

 夜更かしは淑女のお肌には大敵ですよ。

 リズが穏やかな夢をみている間にきます。

 娘のかわいらしい我儘お願いを叶えるのは、お父さんの大事なお仕事ですからね」


 バッと顔を上げたリズは、満面の笑みを浮かべて元気良く返事をしました。



「行ってらっしゃい、アキサメお父さんッ!!」


「行ってきます、私の可愛いお姫様リザティア

 


 ニッコニコのリズ。

 ニコリ、と笑うルーチェ。

 ニヤニヤとジト目気味のカメリア。

 涙目のエリスさん。

 号泣しているカイン。


 ふぅ。


 腹の底から息を吐き出す。


 すぅ。


 肺の奥まで空気を送り込む。


 さぁ、始めましょうか。




 蹂躙の、時間です。




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御一読頂きありがとうございます。

これから試しに、作者からのコメント欄を勝手に書いてみることにしました。



タイトル詐欺気味なのは重々承知の上で、またもやポルク君を登場させてあげれなかった...。

ていうか、ルミィって誰よ?とか思われていそう。


【ポルク君】

転生者(ダンジョンがある地球っぽい惑星から)。錬金術で前世の便利グッズを再現しようと猛勉強していたが、に気付き、慌てて冒険者となった。周りからは〈嘘つきポルク〉と呼ばれ馬鹿にされている。

【ルミィちゃん】

ポルク君と同じ孤児院出身の所謂幼馴染的女の子。ポルク君よりも先に冒険者となった。


て感じですかね?

頑張ってストーリーを進行させていきますので、お付き合い宜しくお願いします。


では、また次話でお会いできたら幸いです。



 

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