◉気まぐれにダンジョン見学《踏破》する異世界商人《アウトサイダー》。⑥〈⚠︎時間軸のズレ注意〉
「どうぞ」
カチャ、と目の前に出されたカフェ・オ・レ。
温かくて、懐かしい甘い香りが鼻腔を擽る。
秋雨お兄ちゃんの
ダンジョンの中に突然現れた喫茶店で。
「うわぁ...この紅茶美味しいぃ...」
「久しぶりのコーヒーだぁ...良い香り」
「え?凄い!鉄板ナポリタン食べれるの!?あ!このホットサンド美味しそ〜!」
喫茶店が現れた時も吃驚したけど、店内に案内されてからも驚きの連続だった。
内装はオシャレなカフェでは無くて、どちらかというとザ・喫茶店、って感じ。最近、一昔前の喫茶店が流行ってるって聞いた事あるし、私達の親とかその少し上の世代からしてみれば懐かしい感じじゃないだろうか。
そう言えば、秋雨お兄ちゃんもいい歳じゃん。童顔もアラフォーだと最早犯罪じゃないかな?
あ!もしかして、秋雨お兄ちゃんにはエルフの遺伝子が...!?
「さて、お嬢さん達は何が食べたい?
あぁ、そのメニューの料理も出来なくはないけど、まだ開店準備中だからまた今度ね。
直ぐに用意出来るのは、〈Kei.Ⅹ〉のケーキ、〈富士見堂〉の和菓子...〈良い子のパン屋〉のパンと、あぁそうだ、ドラゴンバーガーも作り置きがあるかな」
え〜っと。
秋雨お兄ちゃんの職業は〈
そのスキルを使って、辺境都市ガルトで〈気まぐれ猫〉という屋台を営んでいる、と。
そこでルーチェ様やリザティア様と出会い、ご縁を広げているうちに、なんだかんだでリザティア様の
いやいやいや、おかしくない?
どんだけラノベ主人公属性てんこ盛りの
ていうか、リアル
元々、秋雨お兄ちゃん1人いれば邪神なんて余裕なんだからね!?
ユルクの神様、絶対やらかしてるってば!
「あのぉ、秋雨さん。チョコレートケーキってありますか?私、一度で良いから食べてみたかったんです、〈Kei.Ⅹ〉のチョコレートケーキ!!」
分かる!私も食べたいと思ってたの!日本にいた時でさえ、人気過ぎて中々食べる機会無かったんだよね。まさか異世界で食べれるなんて思ってもいなかったし!
「〈富士見堂〉の栗きんとんを頂きたいです!私、和菓子大好きなんです!」
と、千佳が秋雨お兄ちゃんにお願いしてる。
好きなのは栗きんとんだけじゃないでしょ?
まぁ、確かに秋雨お兄ちゃんって童顔イケメンで身長もそれなりに高いし、高収入(日本にいる時)、性格も...御堂院が絡まなければ温厚で優しい、か。
それに、強い。それもぶっちぎりで。
あれぇ?秋雨お兄ちゃんって、超・優良物件じゃん?
歳こそそれなりだけど、それ以外が高水準過ぎるし。
...ユルクでも既にモテモテだったりして。
「私は両方食べたいな。ていうか、パンも食べたいから全部食べたい」
さすが優希。私も同じ気持ちだよ!
ここは親族の私が代表して、
「秋雨お兄ちゃん、全部少しずつ食べたい。たぶん、みんなもそう思ってるはずだよ。
ダメかな?」
必殺・可愛い妹分からの上目遣いビーム!!
「春海は何故メンチ切ってるのですか?リズの教育に悪い事は控えて下さいよ?」
効かないだとぉ!?
「メンチなんか切ってないし!ていうか乙女に対して失礼だし!」
失礼しちゃうッ!...何よ、その憐れみを含んだ目は。はっきり言いなさいよ、優希!
「アキサメさん、私も色んな種類を食べたくなってしまいました!良かったら、皆さんと一緒にシェアして食べたいのですが」
ルーチェ様優しい...。
「もちろん良いですよ。では、適当に出しますから皆で分けて食べましょう。
ルーチェ、リズ、カメリア。皆に取り分け用のお皿とカトラリーを用意して下さいな。
春海、優希さん、千佳さん、美乃梨さん。テーブルを移動して繋げましょう」
「はい!リズはお手伝い頑張ります!」
「分かりました、アキサメさん」
「了解。奥のパントリーにあるんだったよね」
リザティア様可愛い。
「はい、秋雨お兄さん」
「分かりました」
「はいッ!」
「り〜」
それから、秋雨お兄ちゃんが取り出した様々な極上スイーツに舌鼓を打ちながら、リザティア様達とお喋りを楽しんだ。
皆、良い子。カメリアさんはパンを食べる時に凄く感情的になって、意外な一面がまた素敵だった。
ステラちゃんはなんだろう。もう可愛いすぎて私を始めみんなメロメロ状態。特に美乃梨は涎がヤバかった...。
お茶の後、秋雨お兄ちゃんの厚意で、幾つかの地球産の品を頂いた。
中には〈KumA〉のハンドクリームもあったから超嬉しい♪
時間もだいぶ過ぎたので、そろそろお開きという事で喫茶店を出た。
リポップしていま魔物をカメリアさんとルーチェ様(ルーチェ様はかなりの魔法の使い手でした)があっという間に殲滅すると、秋雨お兄ちゃんが私達に話しかけてきた。
「春海、優希さん、千佳さん、美乃梨さん。
先程も言いましたが、楽しみなさい。
大変な事が無いとは言いませんが、それ以上に楽しい事も沢山あるはず。
一期一会、です。
このユルクでの出会いや別れを大切にしなさい。
何か困った事があれば、咲耶姫を通して私に言いなさい。その時は、微力ながら少しくらいはお手伝いさせて頂きますよ」
秋雨お兄ちゃんの微力は
「ありがとう、秋雨お兄ちゃん。私達、頑張って楽しむよ!」
折角の異世界だしね!...だいぶ秋雨お兄ちゃんに染められた気がするけど。
「それで良いんです。その他の面倒事はユルクの人達のやる事ですから、邪神とやらの事だけしっかりやりなさい。
あぁ、そうだ。咲耶姫に地球の物を渡せるようにしておきましょうか...ロイロ!」
秋雨お兄ちゃんが、〈ロイロ〉と呼ぶと突然空間が歪み、そこから神々しいナニかが現れ...て...。
《平伏せよ》
な、なんで...なんで座学の資料に描かれていた、アイツが!!?
《平伏せ〈ゴチンッ!〉ニャ!?アキサメ痛いニャ!ボーリョク反対ニャ!》
「まったく...偶には普通に登場できないのですか、貴女は」
《これは大事ニャ〈ヨーシキビ〉ってやつニャ!》
なんで、邪神が秋雨お兄ちゃんと一緒にいるのよッ!!?
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