◉気まぐれにダンジョン見学《踏破》する異世界商人《アウトサイダー》。④〈⚠︎時間軸のズレ注意〉

「斬るッ!!」


ーーー職業【剣聖】が覚醒。


ーーースキル【剣術】を【聖剣術】に変換。


【ハルミ・ミドウイン 女 (17)

状態 興奮(強)

職業 剣聖

スキル 聖剣術、身体強化、アイテムボックス、言語理解

称号 勇者】





「私は...私は、〈勇者〉なんかじゃないッ!!

 ユルクの神お前等が勝手に私を、私の在り方を決めつけるなぁぁァァッ!!」


 私は、〈地球〉生まれ、〈地球〉育ちの女子高校生JKだ!


「無敵のJK舐めんなよッ!!阿呆ユルクゥゥッ!!」



ーーー職業【剣聖】を拒絶、拒絶、拒絶...。


ーーーエラー...エラー...職業【剣聖】を破棄。



「は、春海ちゃん!?」

「春ちゃん、阿呆って...」

「春海...ストレス溜まってたのね...」


 あーあー聞こえない聞こえない!私だって恥ずかしいの!


「アキサメお父さん、じぇいけい、って何ですか?ちきゅーの英雄様ですか?ハルミお姉さんがムテキって言ってました!」

「あ〜...そうですね、確かに無敵、と言うか怖いもの知らず、と言うか。そう考えたら確かに英雄かも知れませんねぇ」


 そこッ!?冷静に解説しないで!?リザティア様の純粋な視線が眩しい!やめて、そんなキラキラした目で私を見ないでぇ!


「秋雨お兄ちゃん!?」

「じゃあ私達も英雄かなぁ」

「みんな英雄?どっかのCMみたいだね」

「無敵のJK(笑)」


 みんなも止めて!?


「まぁ、無敵かどうかはさておいて。

 春海の言う通り、君達は〈勇者〉であると同時に、ただの高校生です。

 確かに、こんな世界に突然召喚拉致されて、目の前に勇者人参をぶら下げられてしまい、その誘惑に抗えず、邪神討伐無謀な願いを承諾してしまいました。

 それでも、君達はまだまだ子ども。

 ただの女子高校生なのです。


 オシャレについてわいわい騒いだり。

 色恋にキャッキャと盛り上がり。

 美味しいスイーツの店で映える写真をSNSに投稿したり。


 君達は、


 君達は、異世界こんな所で、邪神討伐くだらない事の所為で、大切な人生を無駄にしてはいけないのです。


 ゴブリンに出会ったら、その不細工な顔を笑い飛ばして。

 スライムに出会ったら、その不思議な生態にツッコんで。

 ドラゴンに出会ったら、友達になれるか聞いてみたり。


 君達は、限りなく、自由なんです。


 邪神討伐は、修学旅行2日目のテーマパークで観るパレード。

 ソレに辿り着くまでも、楽しい旅程の一部でしょう?


 確かに、危険も伴う物語ストーリー

 その為に君達は、〈勇者保険〉を持っている。

 心配しなくても、君達は〈主人公〉。


 必ず、邪神討伐目標を達成出来ますから。


 だから、心に、もう少しの余裕と、大き過ぎない程度の自信を持ちなさい。

 他の誰でもない、君達自身の為に。

 この異世界ユルクを、楽しみなさい。

 今、この瞬間を、生きなさい。


 異世界ユルクなんかに負けないで下さいよ、地球のお嬢さんJK達」


 そう言って、秋雨お兄ちゃんは朗らかに笑った。


 今を、楽しむ...か。


 確かに、私達は勇者である事を自分達で選んだのに、その辛さや理不尽さに文句ばかりで。

 怪我をしたクラスメイト達も、騎士団長の注意を守らず自分勝手にやった結果、怪我をしただけ。これ以上は危険だからと、安全地帯王城に帰っただけ。

 ルーク王国の人達は、クラスメイトを人質扱いなんかしていなかった。寧ろ引き篭もり戦力外の衣食住をちゃんとみてくれている。


 あ〜、恥ずかしい。

 私、被害妄想ハンパないイタイ子じゃん。


 勇者召喚集団拉致した第三王女張本人は許せんけど。

 

「そうだね、あの訓練も私達が死なないように調整されてたし」

「少ないけど、休みの日もあったよ。メイドさんとかは四六時中働いてるのに」

「ちゃんとユルクの事も座学で教えてもらってたし...王城の人達は私達に真摯に対応してた」

「ただ、私達が〈被害者〉だって色眼鏡でユルクの人達を見てたから、悪いところばかり見えて」


 やっぱり私達は、まだまだ子どもだったんだ。


「ヨシッ!!私、御堂院 春海は、この異世界ユルクを、邪神討伐修学旅行を楽しんでやるッ!」

「アハハハッ!こんな修学旅行を経験出来るのは地球中を探しても私達だけだね!」

「ちゃんとお土産も用意しなきゃね。地球に帰るまでが遠足って言うし」

「楽しまなきゃ損ですね。折角の機会だから、もっとユルクの人達と交流しましょう!」


 うん、みんな気持ちが上向きになった!

 流石秋雨お兄ちゃん、良い事言うね!



「それでは、話もまとまったようですし、稽古をつけて差し上げましょうか、春海」


 え!?ち、ちょっと待って、稽古?稽古ってもしかして...!?


「暫く見ない間に、だいぶ腕が落ちている様子。随分と鍛錬を怠っていたのでしょう、私は悲しいですよ」

「うッ...いや、あの秋雨お兄ちゃん、私は可憐な乙女で...刀よりもスマホを持つ方が似合ってるかなぁ、なんて...」

「何を言ってるんですか春海。先程、『超強い謎のお助けキャラ』に稽古して育てて欲しいって言ってたじゃないですか」


 そんな事ッ!?...言ったかも...。

 ヤバいヤバいヤバい!!

 御堂院本家の修練なんてこのダンジョン踏破するより無理ゲーでしょ!?


「いや、そ『稽古の後は〈Kei.Ⅹ〉のケーキでお茶でもしましょうか』...え?」

「えぇ!?秋雨さん、〈Kei.Ⅹ〉のケーキが食べれるんですか!?」

「ええ。私は地球の商品も取り扱っていますので」

「春海ちゃん、ガンバッ!」

「春ちゃん、らっしゃい!」

「頑張って!私達のケーキの為に!」


 クッ...裏切り者共め!...でも、私も食べたいッ!


「わぁ!ちきゅーの英雄様のたたかいが見れるのです!リズは楽しみです!むてきのじぇいけいです!」


 イヤァァァ!そのキラキラした目を私に向けないでぇ!


「見せてもらおうか、異世界チキュウ英雄ジェイケイとやらの力量を」


 カメリアお姉さん、何処の赤い人よッ!?いや確かに綺麗な紅髪だけどさ!?


御堂院一刀流同門と刃を交えるなんて久方ぶりで、楽しみで楽しみで。力加減を間違え無いように気をつけなくてはいけませんね」








「一刀一殺の皆殺し剣術に力加減もクソもあるかぁーーーーーッ!!」





 私は、まだ死にたくないッ!!!?

 


 

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