◉気まぐれにダンジョン見学《踏破》する異世界商人《アウトサイダー》。③〈⚠︎時間軸のズレ注意〉

「秋雨お兄ちゃん、有罪ギルティ


 私は、ピシッと秋雨お兄ちゃんを指差す。


「突然何を言うんですか。それに、人を指差しちゃいけません。お行儀が悪いですよ、春海」

「ハルミお姉さん、メッ、ですよ?」


 え?あ、ハイ。ごめんなさい。

 リザティア様に怒られちゃった...違うッ!


「指差してごめんなさい!

 ...でも秋雨お兄ちゃん、アウトサイダーってどういう事?なんか邪神討伐面倒事勇者達私達に丸投げするぜッ、て聞こえるんだけど?」


 あ、目が笑ってる。ヤバい、コレは秋雨お兄ちゃんの手の平の上なヤツだ!


「おやまぁ。何を言うかと思えばそんな事を考えていたのですか、春海?」

「春海ちゃん、秋雨さんは〈勇者〉じゃないって...」

「秋雨に何て事を言うの、春海ちゃん!」

「あ!...」


 くっ...私が悪いみたいな流れじゃない!優希は気付いたみたいだけど。

 千佳の様呼びが気になるけど突っ込んだらダメだ。


「いや、別にそう言う意味じゃなくて、その、ちょこっとくらい手伝ってくれたり、フォローしてくれたりすると嬉しいなぁ、なんて。いやさ、ゲームとか小説とかでもいるじゃない?お助けキャラみたいな謎の人。

 なんか秋雨お兄ちゃん、すごく余裕そうだから私達を育ててくれるとか?」


 出来れば邪神ラスボスもお願いしたいけど。多分、それは秋雨お兄ちゃんは絶対に断るはずだから、せめて私達のLvアップを手助けして欲しい。

 あと、私の使職業の解決の糸口が欲しい。


「お助けキャラ、ですか...」


 やっぱり秋雨お兄ちゃん的には乗り気じゃないのかな?そもそもお兄ちゃんが護屋母方の旧姓を名乗るようになったのも御堂院本家の馬鹿共の所為だし、お兄ちゃんは自身の力を嫌っている節もあるし。

 あ〜もう!やっぱり本家の奴等は害悪でしか無いよ!


「アキサメお父さんはハルミお姉さんを助けてあげないのですか?」


 リザティア様!ナイスですよ!義娘からの上目遣いは効果覿面なはず!?


「リズ。

 助ける、助けない、というのは正しくありませんよ。

 春海、彼女達は〈勇者〉という物語の〈主人公〉にによって選ばれたのです。

 そして、例えそれが一方的であったとしても、勇者達自ら邪神討伐ソレを受け入れたのです。

 勿論、満場一致では無かったかも知れない。

 でも、過半数の学生達が賛成した、若しくは異議を唱え無かった、そうではありませんか?春海」


 確かに、召喚されステータス鑑定を行ない〈勇者〉という称号を目にした時、私達はどこか浮かれていて、勘違いをして...。


「君達には拒否する事も出来たはずです。見たところ隷属されるようなモノで縛られているみたいでもありませんし。

 民主主義国家で育った君達が多数決で可決したことを反故するのは如何なものでしょうかね?

 それでも荒事が嫌だと、武器を手に取る事に躊躇するのであれば、離別の道を選択すれば良いのです。

 クラスメイトの事が心配、とか、私達が頑張らないと、とか。

 そういう綺麗事を妄想しながら魔物と対峙していては、遠くない将来ーーー



 



 分かっているのですか、春海?」


 ズシン、と胃の中に重い鉛がのしかかってきたかのような、得体の知れない不安と恐怖と、情け無い自分の思い違いがグルグルと頭の中を回って、吐きそう...。

 私は、何に酔っていたのだろう。

 勇者というに、悲劇のヒロインのようなに。

 私は、私は...。


「春海ちゃん...」

「春海...」

「春ちゃん...」


 あぁ、駄目だ。私は、どこか御堂院という特殊な一族の名前に取り憑かれていたんだ。

 私は、普通の高校生よりも、強い。

 そんな戯言に惑わされていたんだ...。


「私は...私は、強くなんか...ない。邪神討伐なんて、本当はやりたくなんかない...。

 私は、優希、美乃梨、千佳、他の友達と、楽しく高校生活を過ごしたかっただけなのに...なんで、なんで私は、異世界こんな所勇者こんな事してるの?嫌だ、嫌だ、嫌だ、私は、私達はーーー



ッ!!!



 私は、自分自身の為に、楽しい生活を取り戻す為にーーー



 私の前に立ちはだかる魔物を、



 ッ!!」



 


 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る