◉気まぐれにダンジョン見学《踏破》する異世界商人《アウトサイダー》。②〈⚠︎時間軸のズレ注意〉

「何はともあれ元気そうで何より。少し、身長が伸びたかな?」


 久しぶりに、で再会した親戚のJKに、『少し、身長が伸びたかな?』だと?他に言う事ない?気の利いた台詞の一つもないの?


「...久しぶり、秋雨お兄ちゃん。色々言いたい事もあるけど、私は元気だよ」

「それは良かった。それにしても...こんな場所で何してるんです?早く攻略しないといけないんじゃないの?」


 それはアナタ基準でしょーがッ!!勇者は此処まで進めたら上出来なの!


 〈普通の勇者〉って、なんか変な例えだけど。


「これでも勇者の中では最前線にいるんだけどね」

「おや、そうなのかい?じゃあ今から先に進むところだったのかな?今日は何階層まで行くんだい?それとも、帰るのかな?」


 進むか、帰るか。

 さっきの大鬼オーガ戦は危うかった...。

 もう少し強くなってから進むべきだと思うんだけど、だけど...秋雨お兄ちゃん達はどうするつもりなんだろう?


「さっきの戦闘を省みて、まだ先には進むべきじゃない、と思う。これは私の意見だからみんなにも聞いてみないといけないけど」

「私も春海に賛成。まだ先に進むのはキツイと思う」

「私もです。せめて大鬼オーガに完封できるくらいにならないと...ステラちゃんみたいに」

「私もみんなの意見に賛成だよ」


 みんな、ありがとう。私達はもっと強くならなきゃいけない!


「成程。皆さんちゃんと勇敢と蛮勇の違いを理解して取り組んでいるようで安心しました。

 春海も成長しましたね。この間までまだオムツを替えてあげていたと思ったらこんな立派になって...私は嬉しいですよ」

「にゃッ!!?」


 恥ずかしくて顔がカァっとなるのが分かる。

 乙女に何て事言うのよ!?


「あ、秋雨お兄ちゃん!!恥ずかしい事言わないでよっ!?」

「そうですか?私からしたら春海は歳の離れた妹、もしくは娘みたいなものですがね?」


 それでもよ!


「春海?盛り上がってるところ悪いんだけど、自己紹介くらいさせてくれない?」

「あ!ごめん、秋雨お兄ちゃん、お友達を紹介するね」


 優希、美乃梨、千佳と順番に自己紹介する。

 少し、千佳の秋雨お兄ちゃんを見る目が熱っぽく感じるのは、気のせいだと思いたい...。


「ご丁寧にありがとうございます、お嬢さん方。

 では、私達も自己紹介させて頂きましょうか」


 秋雨お兄ちゃんがそう言うと、リズちゃんからご挨拶を始めた。

 みんな、此処がダンジョン内だって絶対忘れてるよ。


「はじめまして!リザティア・ガルトラムです!大きくなったらへんきょうはくになります!ただいまべんきょー中です!」


 リズちゃん...リザティア様が可愛らしくカーテシーでご挨拶してくれる。

 大きくなったら辺境伯になる?大きくなったらなれるものなのかな、辺境伯って。大貴族じゃなかったっけ?


「リズはまだ幼いですが、歴としたガルトラム女辺境伯ですよ。成人するまではレオン・ガルトラム前辺境伯が代理領主となっています。

 因みに私が保護責任者として教育中です」


 なるほど、でいいのか?秋雨お兄ちゃんはどういう経緯でそんなポジションにいるのだろう?


「あらためまして皆様。私はレオン・ガルトラム前辺境伯とサーシャ・ガルトラムの娘の、ルーチェ・ガルトラムと申します」


 こちらも凄い美少女で、カーテシーをする仕草が一つの絵画のよう。ハーフエルフで前辺境伯様の娘さん...?リザティア様とは血が繋がってないのかな?


「ルーチェはレオンさんとサーシャさんの養女です。リズとは血縁関係はありませんが、姉妹のように仲が良いのですよ。

 あと、レオンさんと正妻の孫娘がリズです。

 それと、サーシャさんは第二夫人でエルフです」


 へぇ...両親の話が出なかったという事は、そういう事かな?その件には触れない方がいいんだと思う。


「さっきも言ったけど、私はカメリア。リズの護衛兼お姉さん。元冒険者さ」


 だからあんなに強かったのか。現役の時には二つ名とかあったのかな?

 それにしても美人さんだなぁ。


「カメリアは冒険者だったのですが、訳あって引退したところをリズの護衛としてスカウトしました。とても強くて頼り甲斐のある女性ですよ」

「そんなに褒められると照れるねぇ」


 ポリポリと頬を指で掻く仕草が、少し照れているのもあって可愛らしさと美人が相まって、最早反則じゃないかな?なんかズルい。


「すてら、にゃ」


 ステラちゃんはリザティア様の肩の上でお座りしたまま前足を挙げて挨拶した。

 小ちゃな肉球がメッチャ可愛い!抱っこしたい!あ、猫好きの美乃梨が顔面崩壊してる...ちょ、ちょっと!コラッ!涎!


「ステラはリズの御護り...友達ですね。荒事もは大丈夫みたいです。どちらかと言えば癒しキャラ枠ですね」


 いや確かに癒しキャラだけど、大鬼オーガをワンパンはちょっとじゃないと思う。


「メェ〜メェメェ〜《つきはつきなり〜》」

「このウルトラピンクの生き物はつき君です」


 ある意味1番インパクトがある見た目だよね。

 あれ?羊じゃなくて、生き物?どういう意味かな?


「補足すると、つき君はオリジンスライムという種類のスライムです。この姿は...本人なりに1番目立たない擬態、らしいです」


 ス、スライムだったんだ...。

 ていうか、オリジンって〈原初〉って事?なんか凄い強そう。


「まだ此処には居ない仲間もいますが、最後に私が。

 初めまして、お嬢さん方。アキサメ・モリヤ、と申します。訳あって護屋と名乗っていますが、春海同様、御堂院家の者です。

 皆様と同じように、この世界ユルクに転移して来ました。

 ここにいるリザティア・ガルトラムの保護責任者であり、〈気まぐれ猫〉という屋台の店主でもあります。

 皆様のような〈勇者主人公〉ではありません。

 私は、



 〈異世界商人アウトサイダー〉で御座います。



 以後、お見知りおきを」




 アウトサイダー?

 ...それって、ただ単に面倒くさい事は勇者私達に丸投げして、自分勝手に異世界生活スローライフを満喫してやるぜッ!って事をそれらしい言葉で誤魔化してるだけじゃないの?






「秋雨お兄ちゃん、有罪ギルティ

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