◉気まぐれにダンジョン見学《踏破》する異世界商人《アウトサイダー》。①〈⚠︎時間軸のズレ注意〉

「大丈夫かい?お嬢さん達」


 赤髪のお姉様...高明な冒険者だろうか、そのモデル顔負けのスタイルと顔には自然と人を惹きつける何かがある。

 それに、その無骨な両刃斧が更に異彩を放っていた。


「あ、ありがとう、ございます...あ!千佳!?千佳、大丈夫!?」

「春海ちゃん、私は大丈夫だよ」


 命の恩人である女性の背後からひょこっと顔を出す千佳の無事な顔を見て、安堵の溜息が出た。


「良かったぁ〜...!?じゃない!大鬼オーガッ!?」


 ガバッと振り向いた先は、とても不思議で信じられない光景だった...本気マジ


「にゃ!」


ーーードゴォォンッ!!


「にゃ〜!」

「ステラちゃんナイスぱんちですっ!」

「ステラちゃんカッコ可愛い!」

「メェ〜《すてらつよ》」


 えぇっと...手乗りサイズの子猫ちゃんが大鬼オーガにクリティカル猫パンチ(?)してぶっ飛んで...あ、倒した。

 おかしいのかな?疲れてる?子猫ちゃんが大鬼オーガをワンパンとか、貴族風の幼女と少女が普段着(それでも高そうなワンピース)でダンジョンに?此処、28階層だよ?それに何アレ...目が痛いくらいの真っピンクな羊?あぁ!?後ろ脚だけで立った!?着ぐるみなの?人が中に入ってるの!?

 あ...優希と美乃梨もすんごい顔してる。ソレ乙女がしていい顔じゃないって。

 ...気持ちは痛いほど分かるけど。


「ヤバ...あの子猫ちゃん最強じゃん」

「だよね...漫画の世界だよ...あ、勇者私達も漫画では主人公だったっけ」


 子猫より弱い勇者主人公とか存在していいのかな?...お家帰りたくなってきた...。


「コラ、ステラ!リズのなんだから倒しちゃ駄目だろ〜」

「にゃ!?だめだった?」

「喋った!?しかもあざとい上目遣い!可愛いッ!」

「キャー!子猫ちゃん可愛い!」

「く、訓練?大鬼オーガが?〈リズ〉さんって...」

「はいっ!リズはわたしですっ!リザティア・ガルトラムです!」

「...貴族様...1番若い、というか幼女じゃない...」

「あ!初めまして、勇者様方。私はルーチェ・ガルトラムと申します。ハーフエルフです」

「うわぁ...めっちゃ可愛い子がもう1人...しかもハーフエルフ、エルフさんだ」

「メェ〜メェメェ〜《つきはつきなり〜》」

「すてらにゃ!」

「羊さんは...何て言ってるのかな?ステラちゃんは人間の言葉話せるのね」

「すこし、だけ。このひつじは、つき、だよ」

「あ、そうなんだ。つきさん、だね」


 いつの間にか自己紹介に突入してるや。

 何だろう、すっごいマイペースな人達の集まりだよ。

 じゃあ、この女戦士さんが引率者かな?


「私はカメリアだよ。リズ...リザティアお嬢様の護衛兼お姉さん役だよ」

「護衛...お姉さん役、ですか?」

「あぁ、勿論本当の姉じゃないよ。私達、というかリズには保護責任者という名のお父さんがいてね、その人からすればみんな娘なのさ。だから、1番歳上の私は、お姉さん、てこと」

「そういう事なんですね。皆さん仲の良い家族なんですね。羨ましいです」


 種族も違えば、年齢もバラバラ。でも、本当に仲の良さそうな、家族らしい家族。

 その〈お父さん〉の男性は素晴らしい男性なんだろうなぁ......ダンジョンの28階層で幼女の訓練を行うのは信じられないけれど。


「優希ちゃん、カメリアさん達って凄いね。ユルクに来てこんなに仲の良いご家族を見たの初めてかも」

「美乃梨も思った?私も。

 なんか羨ましいな、最近ずっと殺伐とした環境にいたから余計に温かみを感じちゃう」

「良いですね、家族って...」


 私達は、家族にもう一度会う事が出来るのだろうか...その為に頑張っているって、頭の中では理解してるけど...。



「おや、春海じゃないですか。大きくなりましたね」


 えッ!!?この声って!


「秋雨お兄ちゃん!!?」


 振り返った先には、小さい頃から何かと気にかけてくれていた本家親戚のお兄ちゃん、御堂院 秋雨が相変わらずの年齢不詳な、優しい笑顔を携えて立っていた...スーツ姿で。


「アキサメお父さん!ステラちゃんはさいきょーにつよい子でした!」


 え!?秋雨

 秋雨お兄ちゃんがリザティアちゃんやカメリアさん達のお父さん!?


「その顔でお父さん!?」

「...久しぶりの再会の場で中々に辛辣ですね、春海?」

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