そんな些事はさておき、商売のお話をしましょう♪
精霊さんは焼き菓子を満足するまで食べたら、
《眠たくなっちゃった♪バイバイ〈愛し子〉、
と言い残して消えました。私にも見えないので、お家に帰ったのでしょう。
精霊さんはやはり、テンプレ通り自由奔放な性格みたいですね。
「うわぁ〜...私、精霊様に会っちゃった...」
「夢みたいです...」
惚けている2人を見ながら思います。
アンナはさておき、エリスさん。
貴女が偶にお茶してるロイロは、あれでも神様ですからね?ソラだって伝説の天狐ですよ?
「まあ、そんな些事はさておき、商売のお話をしましょう♪」
「些事って...あぁそっか。アキサメからすれば確かに些事かも」
分かります?私の側に居候してますよ?
それに、神様とか精霊とか。私的には昔からあまり珍しい存在では無いので。
「え!?アキサメさんって...やっぱり凄い方!?」
「いいえ。ただの商人です。それも屋台の店主」
「そろそろその設定も無理があるわよ、アキサメ」
設定なんて言わないで下さいよ、事実なんですから。
「商売のお話に移っても良いですか?」
「はいはい。私は大丈夫よ」
「あ、私も大丈夫です」
「ありがとうございます。
アンナ、私は先程商業ギルドでも話しましたが、アンナが摘んだ花を仕入れたいのです」
「私が摘んだ花、ですか?」
「ええ。大事な事は、アンナが摘む、という事です。
アンナは、今日売っていた花...月見花というのでしたか?その花を今まで売った事はありますか?それと今日はどのくらい売れましたか?」
「え?あ、月見花は今日初めて摘みました。いつもは咲いて無いのですが、今日に限って咲いていたのと...何だか今日は月見花を売った方が良いって感じて。
今日は一輪も売れていません。売れる前にあの人達に会ってしまったので...」
おお。セーフ、と言っては失礼でしょうが、兎に角良かった。
「それは...いえ、正直に言いましょう。
売れなくて良かった。
私は物品鑑定のスキルを商売柄持っているのですが、アンナの摘んだ月見花は、月見花ではなくなってしまっているのです」
「え?月見花じゃないって...」
「アキサメ、どういう事?」
「〈愛し子〉であるアンナが摘む、いや、おそらく精霊に無意識に導かれながら、特殊な手順を正しくなぞって摘んだ月見花は、〈
因みに。
月光精霊花は、霊薬〈エリクサー〉の原材料の1つらしいですよ」
「...エリクサーの原材料?エリクサーって作れるの?...えぇーーーっ!!?」
「月光精霊花...?私が摘んだ花が?」
エリスさん、事の重大さに気付き絶叫。
アンナ、情報の処理が追いつかない模様。
私、
「エリクサー云々は些事ですよ。どうせ作り方も他の原材料も分からないのですから。
それよりも、私はアンナが花を摘むと、摘まれた花達の状態が素晴らしく良い、という事です。
鮮度や保存状態が品質を大きく左右する切り花の採取の才能。
精霊王の寵愛とか、〈愛し子〉とかは、私にとっては関係ありません。
大事なのは、最上級の切り花を、最高の状態で用意出来る、プロの生産者としてのアンナから仕入れさせて頂きたいのです」
私は
「うわぁ...アキサメらしい。精霊王がどうでもいいとか」
「.......」
アンナは何か考えているのでしょうか。
黙ったままです。
「そっか。だからアキサメさんは私を誘ってくれたのですね」
「え?アキサメはそんな利己的な人じゃ」
「はい。その通りです、エリス様。
アキサメさんは私の事を守る為に、そう言ってくださるのですよね?
私は無意識のうちに、エリクサーの原材料を採取してしまうような事が、トラブルの原因になるような事が今後も起きてしまうかも知れない。
それを回避する為に、職場を用意してくれて、私がお花を摘んだりするのが好きなのを知っていて、それを制限する事が無いように、採取したお花達は全て買い取って、誰にも私の能力がバレないようにしてくれる。
そうやって私の事を守ってくださるのですね、アキサメさん」
...賢いのですね。1年も花を売るなんて、好きじゃないと出来ないでしょうから。
でも、仕入れが楽しみなのも本音ですよ?
「さて?アンナがそう思うのは自由ですが、私はアンナの採取した切り花で、お客様を幸せにしたいと思っているのも、事実です。
私は商人なのですから」
「やだ。アキサメったらカッコイイじゃない//」
「それでも、私は嬉しいです。
ですから、私からもお願いします。
リザティア様の専属メイドの件と、お花の採取の件、喜んでお引き受けさせて頂きます。
いえ、是非ともやらせて下さい!!」
こちらこそ、新しいご縁をありがとうございます、ですよ。
「こちらこそ、よろしく。アンナ」
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