《犯人は、私なのだ♪》
「私は何もやっていません。無実です」
「正直に言ってしまいなさい。楽になるわよ?」
何かあれば、アキサメが原因だと言わんばかりですね?
確かに、騒動に巻き込まれやすい体質かもしれませんが、今回の事は偶々です。偶然にも、話し掛けた相手が精霊王の〈愛し子〉だっただけです。
「楽になるも何も、私は苦しんでなんかいませんよ?アンナの件は先程知ったばかりですから」
「本当に?私達が偶々早く着いた宿場町で偶々アキサメだけが1人で散歩していて、偶々立ち寄った広場で見かけた花売りの少女に声を掛けたら、あれやこれやという内にメイドとして雇う事になって、その少女が偶然にも精霊王の〈愛し子〉だった、なんて。
疑いたくもなるわよ?」
あ〜...確かに。
と言われても...ねえ?
そもそも偶然としか...?あれ?そう言えば、私はなんでバナーヌを買ったのでしょう?
バナナなら日本でもっと美味しいのをいつでも仕入れる事が出来るのに、見た目もバナナそのもののバナーヌを?
そう言えば、【
あの果物屋の店主は、1番大きくて甘い物を選んでくれるって。
現代の地球のような物流網も無いユルクで、別大陸から態々食べ頃がある果物を仕入れて売るなんて博打みたいな商売をしますかね?
広場に向かったのは...そちらの方向にゆっくり食べる場所があると思った...?
そこで花売りの
ふと、アンナに目を向けると、彼女の肩に座る存在と目が合いました。
君は確か、ルーチェが植物魔法の勉強してる時に居た女の子?
《ごめんね、
テヘペロッ、と小さく舌を出して謝る女の子は〈精霊〉さんみたいですね。すると
はぁ〜〜。害意を感じなかったので気付きませんでしたよ、全く。
結果オーライなので今回は不問としますが、次からはちゃんと事前に言って下さいよ?
《はーい♪》
「はぁ。全て、事情は把握しましたよ、エリスさん」
「え?アンナちゃんを見つめてたと思ったら、何を把握したのよ?」
「あ、すいません。不躾でしたね」
「え?...見つめられて...嫌ではありませんから//」
「アキサメ...
「何を言ってるんですか、エリスさん。
私がこの件に絡んだ原因は、精霊さんに導かれた、というか誘導されたというか。
兎も角、精霊さんは〈愛し子〉であるアンナを私に助けて欲しかったみたいですよ」
「は?何でそんな事分かるのよ?」
あ!見えないのか。
「...アンナの肩に座ってる精霊さんから直接聞いたから、ですが?」
「え!?精霊様が居るの!?どこ?アンナちゃんの肩?見えないんだけど!」
「えぇ!!?せ、精霊様が私の肩に!?」
アンナは首を横に振りながら肩を確認し、エリスさんはそんなアンナの姿を凝視しています。
いやぁ、確かに実際に見えてないと信じ難いかも。精霊さん、一瞬でも良いので姿を見せてくれませんかね?
私、話を進めたいんですよ。
《い〜よ〜♪》
そう言った瞬間、ピカッと光った後に、テーブルの上の焼き菓子の盛り付けられた皿に腰掛けている精霊さんが現れます。
案の定、エリスさんもアンナもフリーズ状態になりました。
《この焼き菓子食べた〜い♫》
「どうぞ。ゆっくり食べて下さいな」
小さな口を大きく開けて、直接焼き菓子に齧り付く精霊さん。
そんな姿を見ていると、2人が復帰しました。
「アキサメ...夢みたい。御伽噺の存在が目の前でお菓子を頬張ってるわ...めっちゃ可愛い」
「せ、精霊様が...本当に居た...」
「だから言ったでしょう?精霊さんがやりましたって」
焼き菓子から顔を離して、精霊さんは楽しそうに宣言しました。
《犯人は、私なのだ♪》
エッヘンッ!と聞こえてきそうなくらいに堂々と、悪びれもなく。
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