花売りの少女。③

 青褪めた2人と緊張気味な少女を連れて商業ギルドへとやって来ました。

 建物に入ると、何事かと寄ってきた職員に責任者を呼ぶように伝えます。

 その時点で男の方は逃げ出そうとしたので、軽く威圧を当てたら震えて腰を抜かしてしまいました。


「何事だ!サリー、お前は今日は休みだろう?何だ、そこの優男は誰だ?」

「この女性に商売の邪魔をされた挙句、商人には向いていないと笑われたので、商売の損失分の責任を取って頂きたいのと、私の商業ギルドの脱退手続きをする為に伺いました」

「商売の邪魔?どういう事だサリー!」

「いや、その、そこにいるアンナの花が...」

「花?花くらい摘んできた物だろう?それが何故揉め事になるのだ」


 この人も同じ穴のむじななのでしょうね。


「私が、こちらのアンナさんから花を仕入れようとしたら、この2人が邪魔をした上にその商品である花を台無しにしたからですよ。

 私の商売を邪魔した責任を取って欲しいのですが?」

「花で私を呼び出すとは、偉そうに!さっきも言ったが花くらい摘んで来い!」


 はぁ。くだらない奴。ガルトのマルクさんはまだギルドマスターらしかったのですが。


「話をすり替えないで頂きたい。私の仕入れ商品を駄目にした損失の責任を取れと言っているのです。花を摘んで来るとか来ないとか、そんな話をしているのでは無いのですよ」

「ぺちゃくちゃとうるさいわ!お前なんか希望通り商業ギルドから除名してやる!」

「それは、構いませんよ。こちらから申請するつもりでしたから。ところで、貴方はギルドマスターなのですか?」


 疑いたくもなるような浅はかな男ですからね。


「私は副ギルドマスターだ!お前の処分くらい私の権限でどうとでもなるわ!」


 そうですか。こんな奴が副ギルドマスターなら、ギルドマスターもよっぽどでしょうね。


「分かりました。〈責任を取らない〉というおつもりなのですね。では脱退申請を今直ぐに受理して下さい。あ、後こちらのアンナさんの借金の証文も出してもらいましょうか」

「おい!コイツの脱退の処理をしろ!アンナの証文もだ!」


 私はカウンターで受付嬢にギルドカードを渡して書類にサインする。私のカードを見た受付嬢が驚いた顔をするが、私は書き終えた書類を見せながら、伝える。


「お静かに。個人情報の取り扱いにはご注意して下さい。私は商業ギルド員ではありません。一般人です」

「.......はい。この度は、誠に残念です」

「終わったか!?ではアンナの証文だ」


 渡された証文には、アンナのお父さんと思われる男性の名前でお金を借りたという事実と、返せない場合にはアンナが借金を返済する、という文章が書き足されたような跡が。

 馬鹿なんですかね?そもそも便利な魔法があるユルクでこんな如何にも擬装したような証文を商業ギルドが扱うなんて。

 アホらしいので払ってやりますか。


「金貨3枚、300万ルクですか」

「ふんッ!お前みたいな駆け出しにそんな大金が払えるのか?あぁん?」

「あはは。たかが300万ルクで何が大金ですか。

 払えるも何も、今すぐ支払いましょう。

 こんな嘘っぽい証文を使って契約を商業ギルドが行うとは、びっくりですよ」

「何だと貴様!!」

『何を騒いでいる!!』


 其処に現れたのは1人の女性。歳は私と同じくらいでしょう。ギルドマスターかな?威厳がありますし。


 そんな声を、私はアンナを連れて受付で金貨3枚を払い、証文に商業ギルドの印を押させる。

 さぁこれで、アンナは自由の身。

 改めて、私と商売の話をしましょう。

 取り敢えずこの気分の悪い場所から出て、何処かでお茶でもしながら。

 そういえばランチもまだですから、ご一緒しないか誘ってみましょう!

 久々の商売の話です。楽しみになってきましたよ。


「君は何故、何事も無かったかのように立ち去ろうとしているのだ?」


 当たり前です。既にからに決まっているでしょう?

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