畏懼するという本能を知れば。〈後〉〜己の在り方〜
『ガァァぁぁあああーーーーーーーっ!!!』
......パチッ...パチッパチッ.....
............パチパチッ....
...パチ...
...
《...私...は.......》
其処は、何も無い。
否。何も無いという事象の有る其処は、
果ての先どころか、一寸先の世界すらも掴む事も叶わない。
虚無とは、と問われて答える、万物の根本としての無、であるならば。
《...あ、あぁ......》
《私は...◯◯◯◯殿に...》
『勝負ありっ!勝者カイ◯・ザン◯◯ク!』
『『『ウワァァーーッ!!』』』
《.....そうじゃない...それでは...》
『うむ。強くなったな、◯インよ』
《強く...私は...》
《私の...求めるモノは!》
『君は、どちらですか?』
ーーードクンッ!!
《私は》
何も無い其処が崩れていくかのように、
世界が構築されていく。
それは、一筋の煌めく流れとなり、脈々と流れだしていく。
大空が、大海が、大地が。
植物が、獣が、虫が、魚が、ヒトが。
夫々に栄枯盛衰を繰り返す様が、
激しい濁流となって矢の如く過ぎ去る。
私みたいな
『畏懼、なさい』
どれほどの時が流れたのか、見当もつかない。
軈て、落ち着き始めた清流に浮かぶ〈それ〉を見つけた俺は、手を差し出した。
浮かんでいた〈それ〉は、
《
《
俺は〈それ〉と手を繋ぎ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
《
喜びに満ち溢れた世界の光も、
怒りに狂う世界の闇も、
哀しみの果てに流す世界の涙も、
世界が夢見る楽園も、
全てをこの身に受け入れると、
その全てを護ると誓おう》
ーーー称号【
ーーー称号【守護者】を獲得。
ーーースキル【
......バチッ!......パチッ...パチ...
「がはっ!!?」
....パチッパチッ......パチッ.....
「気が付きましたか」
「俺は...ッ!!アキサメ殿、あれは!」
「怖かったですか?」
「.........怖くは、無かったです」
「よろしい。
では、君は、見つけたのですね」
「はい。俺は知り、畏れました。
万物の理の奔流を畏れ、抗う事を憚りました。
そして、それら全てを受け入れ、護ると誓いました」
「なるほど。
ではそれが、君の〈在り方〉なのでしょう。
再度、問いましょう。
今すぐ強くなりたいですか?
それとも、強く在りたいですか?
君は、どちらですか?」
「俺は、どちらでも無く。
俺は、如何なる時も、俺で在り続けます」
......パチッパチッ.......パチッ....
「御見事」
「有難う御座いました!!」
座ったままカインが頭を下げているのを、私は笑顔で受け入れる。
彼は、ちゃんと己の在り方を見つけました。
いつまでも
それから少し話をした後、カインは自身のテントへと戻っていきました。
それにしても、
...........称号2つにスキル1つ?
確かに、人によっては途方も無い試練とも言えますし、元々備わっている人には然程難しくも無い事かと思いますが...。
やっぱりアレですかね。
ユルク人特有のスキル制の賜物?若しくは、弊害?
どちらにせよ、彼の成長に繋がったのならば。
終わり良ければ全て良し、ですね。
「一応、エリスさんには明日の朝、私からも報告しておきましょうか」
そういう事にした後、マカロンに戻ってシュラフに潜り込む。
教導などと、慣れない事をした私は、直ぐに意識を手放しました。
『アキサメーーっ!!出て来なさい!』
そんなモーニングコールで目覚めた私は、その後に驚愕(?)の事実をエリスさんから聞かされました。
称号【守護者】は過去に英雄と呼ばれた偉人の1人しか持っていなかったという事実。
スキル【
因みにその英雄達が成し得た偉業は、御伽噺にもなった伝説の魔王討伐。守護者は魔王の全ての攻撃を、そのスキルで防いだらしい。
取り敢えずカインは魔王には負けない事が確定しました。
「備えあれば憂いなし、ですね〜」
「アホかぁーー!!魔王に負けない〈備え〉なんて〈憂い〉しかないわよっ!!」
「えぇ〜?」
「子爵家の次男坊が焚き火を囲んで語らってたら英雄になったなんて、誰得よ!」
「...カイン?あっ!カインを雇ってるエリスさんの一人勝ちですねっ!」
「《ですねっ!ニコッ!》じゃないわよ!
ポイポイ英雄を育成しないのっ!!」
「はーい」
「はい、でしょ!伸ばさない!
兎も角、アキサメは私の許可無く〈課外授業〉禁止!!カインの事も口外禁止!分かった?」
「はいはい。分かりましたよ、エリスさん。
それに、私の〈気まぐれ〉はちゃんと相手を選びますよ。御心配無く」
「その〈気まぐれ〉がすっごく心配なのよっ!」
まぁ、良かったでしょ。
結果的に強力な護衛騎士がこれからもエリスさんの側に居るのですから。
どんなに強い魔物だろうが、
どんなに強い猛者だろうが、
はたまた血迷った
カインが、エリスさんを必ず護るでしょう。
「〈備えあれば憂いなし〉ですよ、エリスさん」
カインが護って時間を稼いでくれれば。
後は、私が行って斬り刻むだけですからね。
《あきさめ〜かおがあくにんだぞ〜》
おっと、失礼。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます