ランラン♪ランチタイム。③〈Let's cooking!〉

「やる気は有難く受け取りますが、ロイロとソラは料理出来ないでしょう?」

「ニャ!?しつれーニャ、アキサメ!」

「はい!はいはい!私、卵を割れます!」


 プリプリ怒るロイロと、ビックリ発言をするソラ。卵を割るって...いや、丁度良いかも。今度、アレを作る時に腕を奮ってもらいましょう。

 ふむ。これを機にロイロにも自炊を覚えてもらいましょうか。そもそも食事を必要としない神様存在のクセして、和菓子だのケーキだの食べまくるのもどうかと思うのですよね。

 ただ、食べる姿があまりにも幸せそうなのでついつい甘やかしてしまっているのですが...自分の食事くらいは作れるようにしてもらいましょう。


「分かりました、2人にもお手伝いして頂きます。

 ではみんな、手を洗ってエプロンをつけましょう。あ、そうだ。ロイロ、カメリアに許可スタンプを押しますから貸して下さい」

「りょーかいニャ」


 ゴソゴソと割烹着のポッケから黒猫スタンプを取り出して渡してくる。相変わらず適当に管理しているのですね。

 カメリアを呼んで手の甲にペタンと押すと、前回と同じくマークが光って黒猫がカメリアに話しかける。


『お友達認定ニャ〜』

「うわぁ!?え?何?」


 ...派手な演出があるのを説明し忘れてました。

 驚いたカメリアに大まかに事情を説明すると、一言。


「まぁ、アキサメ父さんのやる事だからな。早く慣れるように努力するよ」


 こら、私じゃありません。ロイロです、ロイロ。


 これで全員がキッチンに入る事が出来る事になったので私を先頭に中へ入ると、明らかにサイズ感がおかしい広さの現代的なキッチンが。

 入口の手洗い場できちんと手洗いと消毒を行い、エプロンを着ける。エプロンの中央付近には大きく黒猫マークがついていて、中々オシャレ。各々、自分のエプロンをつけていく。

 リズはイエロー、ルーチェはグリーン、カメリアはレッド。私はダークグレーです。


「さて。では早速取り掛かりたいと思います。

 今日のランチは、時間が無いのでお手軽なメニューにします。

 作る料理は〈ハンバーガー〉です。

 簡単に言うと、焼いたお肉と野菜をパンで挟んだものですね。お肉は、この間、レオン邸の晩ごはんに出したハンバーグですよ。この料理はバリエーションが豊富なのが特徴なんですが、今日はシンプルなものにしましょう」


 ロイロとソラはもちろん知っているので、2人でセットのフライドポテト論争を繰り広げています。皮付きくし形も、細長定番も。どっちも良いと思いますがね。ただ、今日はフライドポテトはありませんよ。


「お父さん、はんばーがー、はおいしいですか?」

「ええ、私の故郷では良く食べられていた料理ですね。手軽に食べる事が出来てお腹も膨れるファストフードの代表ですね」

「ふぁすとふーど、とは何ですか?アキサメさん?」

「そうですね...こちらでいう屋台の料理みたいなものですね。ファストとは、迅速な、という意味ですよ」

「それなら確かに屋台の料理と一緒だな。はんばーがー、楽しみだよ、アキサメ父さん」

「ニャ!アキサメ早く作るニャ!」

「はいはい。では、

 ルーチェはレタスを洗ってちぎって下さい。その後はトマトをスライス。後、エリスさんから頂いたこのビネガー漬けの野菜を細かく刻みましょうか。

 カメリアはルーチェの手伝いをお願いします。

 リズは私と一緒にハンバーグを担当しましょうか。ロイロとソラもこちらを手伝って下さいな」

「はい、分かりました」

「了解だよ。あっちで野菜を洗おう、ルーチェ」

「はんばーぐ、がんばります!」

「はいニャ〜」

「分かりました!お任せ下さい!」

「メェメェ?《つきは?》」


 つき君は...どうしよう?

 あのフォルムで出来る事...あるかな?


「どうしましょうか?つき君、何か出来ますか?そのわがままボディじゃ難しくないです?」

「メェ?...メェメェメェメェ!《そうか?...じゃああじみたんとーで!》」


 まぁ、それで良いでしょう。1つだけお願い事をしておきますか。


「では、表で番犬らなぬ番スラとなっていて下さいな。何かあったらこっちに飛び込んでくる事」

 《り!》と念話を飛ばしてくると、大袈裟に頷いてからてくてくと外へ。因みにつき君は、何処だろうとお構いなしに行き来可能なのです。この間はロイロの部屋で神様2人とお茶会してました。

 曰く、《どーそーかいみたいなもんだぜ〜》と。深く考えるのは止めときました、そんなもんなんだろうと。


「さぁ、リズ。ハンバーグを作っていきましょう」


 そう言って、飲食店で使われるタイプの業務用大型冷蔵庫の扉を開けて、ラップをかけてある大きなボウルを取り出す。

 先日、晩ごはんで作った際に、を使用してかなり多めにタネを仕込んでおいたのです。この冷蔵庫、神様仕様なので扉毎に経過時間の調整が出来るのです。

 〈停・冷蔵〉に合わせた庫内はちゃんと冷えているのに、時間経過ゼロ。〈停・保温〉にすれば温かい料理がいつでも温かいまま美味しく頂ける、という料理人垂涎の冷蔵庫マジックボックスなのです。他にも色々と下拵えした食材を保存してあるので、旅の間は食事が楽しめるでしょう。


「リズ、ロイロ、ソラ。その使い捨てのビニール手袋をつけて成形しましょう。形は楕円形でこの間のハンバーグよりは薄くします」


 3人に踏み台を用意して、キッチンアイランドでハンバーグの成形を教える。

 ペタッペタッペタッと空気を抜くのはソラが上手だったのでお任せして、団子状のものを楕円形にするのをリズとロイロにやってもらう。ステラはリズの応援係です。


「ま〜るく♪ま〜るく♪ぺったんこ〜♫」

「にゃ♪にゃ♪」

「私の分はニャンコの形にするニャ〜♪」

「ロイロ、ソラの分はきつねにして!」

「ニャ?...ソラちゃん、きつねはムズいニャ」

「え〜...」


 暫く一緒に成形した後、楽しく作業する横で鉄板焼台に火を点ける。

 隣の5連コンロの1つの五徳の上に、予め作り置きしていたコンソメスープを寸胴ごと弱火にかける。

 鉄板が温まってきたかな?というタイミングでルーチェとカメリアが作業の終わりを告げてきたので、バンズを取り出して、オーブンで焼けるようにオーブン用の鉄板に並べてもらう。


 その頃には鉄板焼台も十分に温まったので、薄く油を引き、表面にこびりつかないようにして、徐々に出来上がってきた成形済みハンバーグを鉄板の上に並べていく。


ーーージュウウウゥゥゥウ!!


 辺り一面にお肉の焼ける匂いが広がっていく。

 みんなが一斉に私の手元を見ていたようで背後から歓声が聞こえてきました。


「すごい、いいにおいです!」

「にゃ!」

「うわぁ!美味しそうな匂い!」

「美味そう!凄い食欲を刺激する匂いだよ!」


 神様2人の声が聞こえないな、と振り返ると直ぐ後ろで涎を垂らして立っていました...これでもか!ってくらいに目を見開いてますよ。

 あ、そうか。2人には分かってしまいましたか。





 ふふふ。さて、この美味しそうな匂いの正体は何でしょうか♪


 

 

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