千客万来。

ってお終い、ですか。それも、一理ありますね。ですが、リズの事もありますしね...どうしたものか」


ーーニャ!?ヤバい、急ぐニャ....!


「ん?何か言いましたか、ロイロ?」


ーーニャ、ニャんでもないニャ〜。そ、そうニャ、リズが悲しむのは駄目ニャ。ぶっそーな事はほどほどが良いニャ!(....ヨシ!陣が組めた!)


「それもそうですね。リズの教育上良くない事は止めておきましょうか。

 そうすると、この阿呆共2人と周りの害虫ゴミをどうしましょうかね...」

「あら、アキサメ。それなら私が手を貸すわよ」


 振り向いた先に居たのは、紅髪の美女とその傍らに立つ護衛騎士。

 エリスさんは、私の返事を聞くよりも先に、私の隣に歩いて来て、リーゼ嬢に話し始めました。


「せっかく忠告してあげたのに。お馬鹿さんね、リーゼ」

「......大公妃殿下は、ご存知だったのですか?」

「何の事かしら?アキサメの実力の事?それとも、貴女達の性根が腐ってる事?」

「クッ!.....」

「馬鹿ね。ちゃんとって、言ったじゃない。そこ40点執事が公爵家の影だって事も、ガルトラム家を乗っ取りたかった、王都貴族学院の歴史に残る、稀代の悪女さんの事も」

「......」

「取り敢えず、牢屋個室に案内しましょうか、カイン!」

「ハッ!」

「待って下さい!私はまだ何も!」

「何言ってるのよ。貴女の部下である執事が、ガルトラム女辺境伯の保護責任者に、危害を加えようとした。誰が見ても、立派な犯罪者と、その首謀者じゃないの。

 後、周りに隠れている公爵家の関係者も。

 逃げ隠れするなら、公爵家が辺境伯家に対して謀有り、と看做すわよ」

「そ、そんな...」


 おぉ。御見事な名裁きですね。思わず拍手しそうでした。


「アキサメ!無事か!?」


 おや、この声は、


「アキサメお父さーーん!リズがたすけにきましたですーー!」


 ふふふ。これはこれは。何とも力強い助っ人の登場ではないですか。

 こちらに走ってくるレオンさんと、その腕に抱かれるリザティア。後ろからは、ロドスさん達レオン家に仕える家臣達の姿も。

 近くまで来たレオンさんの腕から降りたリズが、私に目掛けて飛び込んで来ました。


ーーポフッ。


 まだまだ幼いリズをしっかりと受け止めて抱っこする、私。

 何でしょう、上手く言い表わせないですが、とても良い気分ですね。


ーーそれがお父さんの気持ちニャ。(ナイス!リズ)


 成程。この重さがそうなのならば、お父さんも悪くないですね。


「こら、リズ。淑女レディが端ないですよ」

「ステラちゃんが、アキサメお父さんがあぶないって!だいじょうぶですか?けがはないですか?」

「ええ。私は大丈夫ですよ。心配してくれてありがとう、リズ」

「はいです!」


 不安そうな顔が一転し、満面の笑みを私に向けるリズ。

 そして、その光景に唖然としている実母リーゼ


「やはり大丈夫な様だな。あまりにもリズが血相を変えて言ってきたから、少し心配したぞ?

 何やらステラから聞いた、とか言ってたからな。一応確認しに来たんだよ」

「それは、御心配をお掛けしました。

 この通り、私は無事です。

 少し、変な羽虫が周りでブンブンと飛んで五月蝿かったのですが、所詮は、ただのですので。

 あまりにも度が過ぎるようなら、しまおうかと思っていたところです」

「.....ある意味、儂やエリスは間に合ったのだな」

「むしですか?リズもむしは好きではありません...でも、ちょうちょさんと、てんとうむしさんは好きです!」


 おや、この世界にも地球と同じような虫がいるのですね。


「ロイロちゃんがおうたで、おしえてくれました!ちょうちょ〜♪ちょうちょ〜♪...」

「おやおや。リズは歌が上手だ」


 ロイロの教えた童謡ですか。偶には良い事もするじゃないですか、ロイロ。


ーーいつも、してるニャ!


「あら、リズ。変わった歌ね?アキサメお父さんの故郷の歌かしら?エリスにも教えてくれない?」

「ッ!!....」

「はいです!リズがおしえてあげるです、エリスお母さん!」


 確かに、リズからリーゼ嬢が見えない様に私が抱いてるのですが、この光景には流石にダメージを受けた様子で、俯いて暫くすると、ポタポタと石畳を濡らし始めました。


「うっ...うぅ...あぁ...」


 その涙が、嘘では無いと信じたいと思う私は、まだまだ甘っちょろいのでしょうか。


「自業自得、だ。一時いっときとは言え、家族だった者の、こういう姿は見たくも無かったがな...連れて行け!」


 レオンさんがそう言うと、家臣達が取り押さえて連れて行く。

 隠れていた公爵家の者達も、素直に姿を現していました...1人を除いて。


ーーシュッ!...ズドンッ!


「ギ、ギャーーッ!!」


 連絡係か、後始末口封じを任された者か。

 どちらにせよ、逃がす訳が無いので、0点執事暗殺者のナイフをちょっとお借りしました。勿論、リズには見えない様に。


「1匹、まだ羽虫が飛んでいたようでしたので」

「...................本当に、間に合って良かった」


 ええ、勿論、感謝しております。


ーー本当ニャ...ニャ...。





『キャーーーーーーーーーッ!!!!』

『う、うわぁーー!に、逃げろーーっ!!』


 そんな、空気を切り裂くような悲鳴が、屋台通りに響き渡ったのは、その直後の事でした。




『おい!猫神!ナニかがコッチに来るぞ!気をつけろ!!』


ーーそんな音ちゃんの声が聴こえたのも、同時だったニャ。



「やれやれ、千客万来、ですかね」


ーー..........あ、ヤベ、ニャ。


午前10:37頃


『ふふっ、私のぷりてぃな姿で千客万来ニャ!

 おっと、アキサメが蓋を開けたニャ!

 見せてやろうニャ、私の〈招き猫神力〉のセイノーとやらを!』


午後1:12頃


『ニャ?.............あ、忘れてたニャ。ココ、地球じゃ無かったニャ。そこら中、神気ぱわーすぽっとだったニャ』

『てへぺろ、ニャ。地球カンカクが抜けて無かったニャ〜、ロイロだいしっぱい、ニャ』

 


ーー...............イヤニャヨカンシカシナイニャ。

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