幕間 幸せ者。

 エリス大公妃殿下によるガルトラムお家騒動の報告会を終えた後、休憩の為再び案内された先程と同じ客室で、ある事に頭を悩まされていました。


「明日売る商品、仕入れて無かった...」


 だいぶ1日を過ごしてきた為、すっかり頭から抜けていました。

 初日の和菓子は、リズ母娘にしか売れませんでした。好評だったのは間違い無いのですが。

 2日目の今日、ハンドクリームは、ルーチェのお陰もあり、体験販売が攻を奏して見事完売。


 さて、明日はどんな商品をお客様に提供しましょう?

 お客様に楽しんで頂ける商品モノは...


ーーコンコン。


「アキサメさん、入ってもいいですか?」


 おや、この声はルーチェですね。何かありましたかね?


「もちろん。中へどうぞ」

「ありがとうございます。失礼します」


 ふむ。特に変わった表情ではありませんね。

 悩み事では無さそうです。


「どうかしましたか?ルーチェ」

「いえ、どう、という事では無いんですが、ちゃんとお礼を言いたくて。


 アキサメさん、ありがとうございました。

 私は、とても幸せ者です。

 今朝起きた時は、まさか自分にこんな事がいっぺんに訪れるなんて、思ってもいませんでした。

 ハンドケア体験で手が綺麗になって。

 悩んでたオッドアイの事が解決して。

 美味しいお菓子を食べれて。

 探していた仕事が見つかって。

 可愛い妹みたいな子と友達になれて。

 綺麗なドレスを着させてもらって。

 優しいお母さんと、お父さんができて。


 全部、アキサメさんと出会う事が出来たからだと思います。だから、


 アキサメさん、本当にありがとうございます。

 私を幸せ者にしてくれて、ありがとうございます。


 これからも、いっぱい、幸せになります。

 〈気まぐれ猫お仕事〉の方も頑張りますので、これからも宜しく、お願いします」


 .......良い子、ですね。ルーチェは。


「私の方こそ、これからも宜しくお願いしますね。

 でもね、ルーチェ。1つだけ、訂正させてもらいましょうか。


 貴女が幸せ者になれたのは、貴女が今まで一生懸命に頑張り続けたから、です。


 幸せのカタチは、人それぞれです。

 ルーチェが、幸せだと思うものは、ルーチェが頑張って築き上げたものだからこそ、幸せだと感じる事が出来るのです。

 だから、その幸せは、ルーチェが頑張って生きてきた証、なのですよ。


 もし私に、ルーチェのお手伝いが、ほんの少しでも出来たのであれば。


 それが、私の幸せ、です。

 そして、私も幸せ者、なんですよ」


 こちらこそ、ありがとうございます。ルーチェ。


「うふふ。お互い幸せ者だったんですね」

「今頃気付いたんですか?」


「「あははは!」」


 これからも、宜しく。

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