似た者同士。

 長年連れ添った老夫婦の、愛を確かめ合った素敵なプロポーズ。感動でした。

 私の実年齢を知り、驚愕の表情を見せた皆さん。失礼ですよ。


「アキサメ、その顔面は詐欺だぞ」

「アキサメさん、反則です」

「アキサメさん、若く見えるのね?本当に人族?」

「アキサメお兄さんは、アキサメおじさんですか?」


 みんなして。

 ルーチェとサーシャさんには言われたく無いですよ。

 レオンさん、商人を詐欺師扱いしないで下さい。

 リズお嬢様?確認されても困りますから。


「そこまででしょうか?確かに童顔だとは、良く言われますが...」

「そうだな。世の女性を敵に回すくらいには、な」

「アキサメさんと、なごみ亭の店主が同じ年齢...」


 え!?なごみ亭の店主、私とタメ?


「あなた、取り敢えず、家の中に入って頂いたら?いつまでもこんなところで話していても」

「おぉ、そうだったな。すまんな、アキサメ、ルーチェ。中へ案内しよう」


 レオンさんを先頭に、屋敷の中へと進みます。

 いつの間に、出迎えに出ていた執事やメイド達が、玄関ホールにて両サイドに整列し、レオンが入って来ると同時に、綺麗な御辞儀を披露してくれました。


「「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」」


「今帰った。この2人は、儂の友人だ。

 しっかりともてなす様に。

 ロドス、ミルザ」


「「はい、旦那様」」


「ロドスはアキサメを、ミルザはリズとルーチェをそれぞれ客室へ案内してくれ。

 アキサメ、ルーチェ。少し支度をする故、客室で休んでいてくれ。

 そうだな、30分程したら呼びに行かせるのでな。良いか?」

「分かりました」

「はい、レオンさん。リズちゃん、行こっか」

「はい!ミルザ、よろしくです」

「畏まりました、リズお嬢様、ルーチェ様。こちらへ」


 リズとルーチェは同じ部屋に行く様です。

 お着替えもありますしね。

 さて、私を案内してくれるロドスさんは、先程、めっちゃ睨んでた方ですねぇ。


「アキサメ様、ご案内させて頂きます、ロドス、で御座います」

「アキサメと申します。先程は、失礼致しました」


 え?そんなにびっくりした顔しないで下さいよ。


「...いえ、私の方こそ、大変失礼しました。

 旦那様や奥様の為に、あそこまで言ってくださる方は、今までおりませんでした。

 つい、カッとなってしまい...恥ずかしい限りで御座います」


 忠臣、なのでしょうね。愛されてますね、レオンさん。


「貴方の行動が、正しいのでしょう。

 貴方の忠心が、レオンさんを前に向かせてきたのでしょう。

 貴方達、レオンさんに仕える全ての人達が、レオンさんを辺境伯として、この地を護り、繁栄へと導いてきたのでしょう。

 ですから、どうぞ、胸を張って下さい。

 貴方の行動は、正しい。決して、間違ってなどいない」

「.....あ、有り難う、御座います...」


 少し、偉そうに言ってしまいましたかね?


「アキサメ、ウチの大事な家臣を口説くのはやめてくれ。私にはロドスが必要なんだぞ」

「旦那様.....」

「あら、残念」

「うふふ。アキサメさんったら」


 周りのメイドや従者達にも、笑顔が。

 良い関係が築けている様で何より。

 何処ぞの御宅とは、違いますなぁ。


「アキサメ様、お待たせしてしまい申し訳ありません。改めてご案内させて頂きます」

「はい。よろしくお願いします」


 ロドスさんに案内されて向かった部屋は、12畳程の広さに、ソファとローテーブル。

 豪奢、というよりは、洗練された上品さを感じさせる部屋。

 良いセンスです。


「では、準備が整い次第、お迎えにあがります。暫しの間、ごゆるりとお過ごし下さいませ。

 何か御入用の際は、そちらのベルを鳴らして頂ければ、メイドが参ります」

「ありがとうございます、ロドスさん。

 早速で悪いのですが、少しお願いがあります」

「はい、何でしょう?」

「実はーーー」


 それから30分程経った頃、迎えに来たメイドさんに案内され、テラスが美しい、お茶会を開くにはもってこいの、白を基調とした優雅な雰囲気の漂う部屋に、案内されました。


 先に着いていたリズとルーチェは、2人お揃いのインフォーマルなドレス姿。益々、姉妹に見えます。

 因みに、私もお着替えしましたよ。

 ライトグレーに薄紫のチェック柄のスリーピーススーツに白のシャツ。ネクタイは無しです。


「お嬢様方、お似合いですよ」

「ありがとうございます!ドレスを着れるなんて夢みたいです!アキサメさんもカッコイイです!」

「アキサメお兄さん、オシャレさんです!」

「お褒め頂き、ありがとうございます」


 バタン。と、レオン夫妻が入って来ました。


「うわぁ!サーシャ様お綺麗です!!」

「ありがとう、ルーチェ。貴女達も可愛いわ。お姫様みたいよ」

「うむ。本当に姉妹の様だな、リズ、ルーチェ。

 アキサメも着替えたのか。中々の男前ではないか」

「ありがとうございます。

 サーシャさんはライトグリーンのドレスがとてもお似合いですね。綺麗なプラチナブロンドの御髪と合わさって、まるで妖精のようにお美しい」


 レオンさんと並ぶと、ね。


「お上手ね、アキサメ。ありがとう、嬉しいわ」

「...アキサメ、良くスラスラと褒め言葉が出てくるな」

「ふふふ。褒め言葉として受け取っておきます」


 揃ったので、皆が席に着くと、待機していたメイド達が給仕を始めました。

 流石は大貴族のメイドです。流れる様な動きで紅茶の用意をしていきます。

 テーブルの上には、幾つかの焼き菓子を盛り合わせた物が。配膳されたティーカップも、とても上質で品のある物ですね。


 ルーチェがソワソワしているのが、見ていて伝わって来ます。良い笑顔ですね〜。


 準備が整ったところで、レオンさんから一言。


「今日は良き出会いに恵まれた日だ。

 儂もサーシャも、この上なく喜ばしい。

 可愛いらしい客人もおるので、茶会とさせてもらおう。

 必要ならば酒も出すぞ、アキサメ?

 では、ゆるりと楽しんで欲しい」


 和やかな雰囲気の中、お茶会がスタートしました。

 ルーチェやリズは、サーシャさんとお喋りしながら、お菓子や紅茶を楽しんでいる様です。


「アキサメ、ありがとな」

「何がでしょう?急に」

「サーシャの事、ロドスや家臣達の事だ。

 儂は、まだまだ、だな。

 見えていたような、知っていたような。

 それでいて、何もしておらなんだ。

 見て見ぬふりを、していたのかもな」


 ほんの少しだけ、自嘲を込めた言葉が、彼女達の楽しそうな笑い声のお陰なのか、不思議と優しく聞こえます。


「1人で見えないのなら、皆で見れば良いのです。

 1人で知る事が出来ないなら、皆に教えて貰えば良いのです。

 レオンさんがそうしたいと思うなら、話をすればちゃんと、皆が応えてくれますよ。

 レオンさんは、1人じゃないんですから」


 少しだけ、驚いた表情を見せた後、「ははは」と笑ったレオンさんが、


「...この、人たらし」

「それ、褒めてます?」


 「あははは」と、お互いに笑い合います。

 でもね、レオンさん。


 貴方だけには、言われたくありませんよ。

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