天使が2人。孫馬鹿と自重している男が1人ずつ。
「とーーっても美味しかったです!!」
私、感動してます!って顔のルーチェを見ながらお茶を飲む私。
こらこら、
「幸せです〜♪」
語尾に音符でも付いてそうなくらい、ルンルンな声ですね。それにしても、人の喜ぶ姿を見るのは気分が良いものです。
さぁ、そろそろ片付けをしましょうか。
「ルーチェ。食べた終えたお皿とカップを洗って来て貰えますか?3件隣に臨時の共同炊事場がありますから」
「分かりました!アキサメさ..アキサメ店長!」
ふふふ。では、お願いしますね。
私は屋台の中をやりますか。
さて。無事?、まぁ想像以上に忙しくなりましたが、
結果的に言えば大成功と言える内容の営業でしょう。
ガルトの女性達の間にハンドクリーム、〈天使の祝福〉の名前が、これから少しずつ話題にあがってくるのは間違いありません。
どの世界でも、女性の美に対する関心は大きいのですから。侮ってはいけませんよ?
〈気まぐれ猫〉は美容の店、とならない様に注意していかないといけませんね。
あくまでも〈気まぐれ猫〉は気まぐれであってこそ、ですから。
明日の商品は何にしようかな?
そういえば、なごみ亭の店主にご挨拶しなくてはいけませんね。ルーチェがいつから働けるのかも確認して、
「アキサメお兄さん!こんにちは!」
おや。
「アキサメお兄さーーん!!リーズーでーす!」
ふふふ。リーズーお嬢様ご来店です。
「あーそーぼー」と聞こえてきそうです。
「おやおや、リザティアお嬢様ではありませんか。いらっしゃいませ」
「はい!アキサメお兄さん。また来ました!くろねこちゃんもこんにちは!リズですよ?」
しゃがみこんで
ですが、リズお嬢様?
もし宜しければ、お嬢様の背後で仁王立ちしながら、だらし無く頬をゆるめている、歴戦の猛者の如き初老の男性を、ご紹介頂けませんか?
早くしないと
「その黒猫は、ロイロ、という名前ですよ。仲良くしてあげて下さいね。
ところで、リザティアお嬢様。本日は如何されましたか?申し訳御座いませんが、〈気まぐれ猫〉は商品が完売した為、閉店致しました」
シュタっと効果音の聞こえそうな勢いで立ち上がり、こちらを見たリズお嬢様が元気良く言いました。
「アキサメお兄さん、ごめんなさい!」
ペコリ、と小さな頭を下げて。
何の事でしょうか?リズお嬢様に謝罪される理由がありませんが。
想像はつきますがね。仮に、これが作為的なモノであるのならば.....私はあの方達を到底許す事など出来ません。
「リザティアお嬢様、先ずは頭を上げて下さい。
私は、お嬢様から謝って頂く理由に心当たりがございません。
ですので、お話を聞かせては頂けませんでしょうか?」
何故、こんな幼い子に自分達の不始末を、代わりに謝罪をさせているのか、を教えて下さい。
「え〜っと、エリス様がアキサメお兄さんにごめんなさい言わないとねって、それで、リズはお店にいったことあるから、リズがごめんなさいするって言ったの!」
なるほど。良く分からない事が分かりました。
エリス様?辺境伯夫人でしょうか?でも、リズお嬢様はお母様、と呼んでいましたよね?
そのエリス様が、ごめんなさいと言わないといけない....?
「少し宜しいだろうか、アキサメ殿」
幼い子どもに他者紹介は難しいと思います。
この人は、間違い無く身分の高い方ですね。
格好は変えても、その人の持つ存在感はそうそう変えれません。
「ええ。勿論で御座います、先代様」
「....分かる、か。儂はレオン。レオン・ガルトラムだ。
爵位は息子に継がせたのでな。今回は、天使の様に可愛い孫に付き添うただのお祖父さんだ。レオンとでも呼んでくれ」
はい。孫馬鹿爺さんですね。
今回は、ね。
「畏まりました。それではレオン様、と」
「.....少し敬遠されたか。此度の
アキサメ殿、馬鹿息子をはじめ、我が辺境伯家の者が迷惑を掛けて、すまなかった。
これは辺境伯家を代表しての言葉では無い。
儂は隠居した身、故にな。
だから今は、ただの1人の父親として、子の非礼を詫びさせてもらっている」
「改めて、すまなかった」と、頭を深々と下げるこの方は、先代辺境伯閣下としてでは無く、父親として、筋を通される。
あぁ、レオン様が御当主の時なら、ブローチを返す事も無かったかもしれませんね。
「その謝罪、確かに受け取らせて頂きます。
元の通りに、とはいきませんが、少なくともレオン様とリザティアお嬢様を厭わしいとは思っておりませんので」
「その言葉が聞けただけで十分だ。
辺境伯家の事は気にしなくて良い。彼奴らは少しやり過ぎたのでな。今頃、エリスから説教をくらっている頃だろうよ」
エリス様。少なくとも、辺境伯より上位の人物のようですね。
そのような御方が関わってきた理由が分かりませんが。
「エリス様はね、はんどけあ?してごきげんなのです!」
ハンドケア!?え?お客様の中にいらっしゃったのですか?.....あ、もしかしてあの可愛いらしい感じの40代位の裕福そうな女性でしょうか?
「エリス様、ですか。本日のお客様の中にいらっしゃったのですね。
ハンドケア体験を楽しんで頂けた様で、嬉しく思います」
「大喜びだったよ。
アキサメ殿、ありがとう。
彼女は、これまで自分へのご褒美など考える余裕も無く、あの歳まで走り続けてきた筈だ。
あんなに嬉しそうに笑うエリスを見たのは、随分と久しぶりだ」
「左様でしたか。それほどまでにお客様が満足して頂けたのであれば、作り手も喜ぶ事でしょう。しっかりと伝えておきます」
「頼むよ」と、一瞬、何か確認したげな表情をしたものの、何も聞いてこないところがレオン様の
とても好感がもてます。
「アキサメ店長、戻りました!...あ、ごめんなさい!お客様がいらっしゃったんですね」
ルーチェが戻って来ましたね。
さて、どうしましょう?このまま、さようなら、というのも変な感じで終わってしまいそうですし。
「お姉ちゃん、こんにちは!リズはリザティアってお名前なのです!」
「!...初めまして、リザティアお嬢様。私の名前は、ルーチェ、といいます」
「はい!ルーチェお姉ちゃん!」
ルーチェも辺境伯の御令嬢だと気付いた様子です。
こうやって2人を見ると、まるで、仲の良い姉妹の様に見えますね。
「まるで姉妹の様だな。
お嬢さん、初めまして。儂はレオンという。リザティアの祖父だよ。
リズと仲良くしてやって欲しい」
レオン様も同じように思った様です。
「初めまして、レオン様。ルーチェと申します。
リザティアお嬢様はとても可愛いらしいです。お嬢様が宜しければ、仲良くさせて頂きたいと思います」
「もちろんです!なかよくして下さい、ルーチェお姉ちゃん!リズのことはリズと呼んで下さい!」
「はい。では、リズちゃん、と呼ばせてもらいますね。私の事は、ルー、と呼んで下さい」
「はーい!ルーお姉ちゃん」
天使が2人。ニコニコ顔でお喋りしています。
癒されますねぇ。
折角、御足労頂きましたし、サービスしておきましょうか。
「レオン様、リズお嬢様。もし、お時間の都合がよろしければ、少し休憩されていかれませんか?」
「時間は問題ない。しかし、アキサメ殿は良いのか?店は終わったのであろう?」
「問題ありません。折角足を運んで頂いたのですから。後、私の事は、秋雨、と呼び捨てで構いませんよ、レオンさん」
「!...そうか、そうだな。儂はただの孫好きな爺だからな。世話になるよ、アキサメ」
「はい、喜んで」
さて、先ずは4人でゆっくり座れる席を用意しなくては。
〈気まぐれ猫〉のテーブルでは小さいですねぇ。レオンさん、ガタイ良すぎです。
何処かでお借りしましょうかね。え〜っと...
「アキサメ、どうかしたのか?」
「ええ、皆で座れるような席をどうしようかな、と。〈
「あぁ、そういう事か...
なぁ、アキサメ。良かったら儂の家に来ないか?
今日はリズを儂の家で預かる事になってな。
妻にもアキサメ達を紹介させてくれんか?」
「レオンさんの家ですか?私は構いませんが、ルーチェはどうです?」
「私も予定は無いので大丈夫です、アキサメ店長。でも、私までお邪魔してよろしいのでしょうか?」
「よいのです!ルーお姉ちゃんもいっしょにいきましょ!」
「ルーチェちゃんも是非来てくれ。リズも、妻も喜ぶから」
「そうですよ。御言葉に甘えて一緒にお邪魔しましょう、ルーチェ。....後、営業時間外はアキサメ、で良いですよ」
「では、私も行きます。アキサメさん。
レオンさん、宜しくお願いします。
リズちゃん、一緒に行こうね」
「はーい!」
相変わらず賢い子ですね、ルーチェ。
おもてなしする予定が、される側になりそうですが、お断りするのも失礼ですしね。
ですが、しっかりとサービスしますよ?
【
遠慮なんて、しません。
...そもそも、誰に遠慮しないといけないのでしょうか?
私は、間違いを起こさないように慎重にしているつもりですし、自分の価値を理解して大切にしています。
ちゃんと、自分を重んじています。
ね、してるでしょ、自重。
さぁ、さっさと屋台を返却して、レオンさんの御宅に向かいましょう!
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