背信棄義な対応を受けるアウトサイダーと〈天使の祝福〉。
OEMメーカー〈KumA〉の愛美さんからハンドクリームを仕入れさせて頂く事ができました。
仕入れ値は思ったより安い価格です。
「ちゃんとお客様の顔を見て商いをするのよ」と有り難い御言葉も頂いています。
帰りにロイロに挨拶をしようとしたのですが、穏やかな顔で幸せそうに寝ていたので小声で「おやすみなさい」とだけ言ってなごみ亭の部屋に戻りました。
ささっと寝る準備を整えて明日に備えて早めの就寝です。おやすみなさい。
ピピピピ、ピピピピ...
「ふぁ〜...良く寝ました」
今日は屋台の前に辺境伯夫人へご連絡を入れなくてはなりません。アラームの設定を早めにしてあったので無事起きれました。
裏庭の井戸で顔を洗って歯を磨き、部屋に戻って身支度を整えた私は、1階のカウンターで朝御飯を食べています。
メニューはサンドイッチとスープです。サンドイッチの具はお肉ですね。
「おはようさん。サンドイッチの肉は昨日のレッドボアの残りだ。今日も屋台だろ?頑張ってな」
「おはようございます。しっかり食べて頑張ります」
モーニングのピークが始まりそうなのでしょう、店主は直ぐに厨房に戻って行きました。
美味しい朝御飯を食べ終えたら、従業員に鍵を渡して出掛けます。
外に出て、領主邸へと向かう為に、昨日ブローチと一緒に渡された地図を頼りに歩き出しました。
ユルクの人々は日が昇ると同じくらいの時間から動き出すので、大通りには朝採れの野菜を運ぶ荷車や、買い出しに走る丁稚の様な少年、これから依頼を受ける為にギルドに向かうのでしょうか?冒険者らしき人達もいて、それなりに人々が行き来しています。
皆さん朝が早いですねぇ。
「えぇっと、この角を曲がって...アレですね」
見えた建物は正にヨーロッパ風のお屋敷。
広い敷地の周りをしっかりとした塀で囲んであり、門は閉ざされており、がっしりとした門番が2人立って目を光らせています。
近づくにつれて、その雰囲気に今すぐ回れ右をして立ち去りたくなる気持ちをグッと堪えて、門番さんに話しかけます。
「止まれ、ここは領主邸である。何用だ」
「おはようございます。私、アキサメという者ですが、ガルトラム辺境伯夫人にお会いしたいのですが、ご確認頂けないでしょうか?」
「奥様に来客など聞かされておらぬ。約束はあるのか、貴様」
「いえ、正式な御約束は頂いておりません」
「ならば話にならんな、貴様の様な下賤な者に奥様がお会いする訳なかろう!今すぐに立ち去れ!」
えぇ〜...何ですかその対応は。私はちゃんと
そうですか、下賤ですか。
所詮、貴族様の戯言だったと言う事ですね。
良いでしょう。そちらがその気ならこちらも考え直させてもらいましょう。
「分かりました。直ぐに立ち去りましょう。では、
あぁ、そうでした。セバス殿に言伝をお願いします。
〈口約束とはいえ、約束は約束。商人は信用を第一と致します故、この度の御対応を以てアキサメ・モリヤとのご縁は無かったものとさせて頂きたく〉
一言一句漏らさずお伝え願います。それでは失礼」
私はブローチをセバスの書いた
セバスさんの名前を聞いた門番が慌てながら「ま、待て!」と言うのを背中に受けながら、振り返る事なく歩きます。
あ〜〜気分悪いですね。
門番とは、そこを守ると同時に〈顔〉でしょう?あんな風に自分まで貴族だと勘違いした様な輩に任せているなんて。恥ずかしくないのでしょうか?私が責任者なら即刻解雇します。
確かに貴族制の
ですが、私はこの世界の人間ではありませんから。ルールは守っていきたいと思いますが、理不尽な仕打ちを許容するつもりは微塵もありません。
そういう面倒くさい貴族との
害された気分も屋台の受付に着く頃には幾分落ち着きました。良かった良かった。
「では、良き商いを」
「ありがとうございます」
借りた屋台を引き、割り当てられたスペースへと向かいます。
しっかりと気持ちを切り替えて頑張りましょう。
着いた場所は昨日よりも大通り寄りで比較的人の流れがあり、既にご近所の屋台にはちらほらとお客様がいらっしゃいます。
お隣さんはスープを売っていますね。良い匂いがします...お昼御飯に購入しましょう。
反対側のお隣さんは...何屋さんでしょう?アンティークショップ?様々な物が並べられてます。何か掘り出し物でもあるのでしょうか?気になりますね〜。
他所に目がいき過ぎて自分の屋台の準備が進んでいませんでした。
2回目ともなると慣れたもので、屋台の設営もスムーズです。愛美さんから仕入れたハンドクリームを〈
あの優しいハンドクリームは、愛美さんの会社の倉庫に眠っていた小さな木製の容器をタダ同然の値段で譲って頂いたので、蓋に黒猫マークを描いてハンドクリームを入れてあります。
商品名は〈
最後に看板を立てて準備完了です。
「さぁ、〈気まぐれ猫〉オープンです!」
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