【capricious cat《気まぐれ猫》】オープンへ。
〈スキル〉の確認をし、少し試した後、私は行動を開始しました。
先ずは商人の先輩で、商業ギルドマスターを除いて唯一商売について相談出来る相手、イザークさんの店へと向かいます。
「先日ぶりですね、アキサメさん」
「突然申し訳ありません、今日はご相談させて頂きたい事がありまして寄らせて頂きました。お時間少し宜しいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。この時間は他の従業員達で店はまわりますから。どうぞ奥へ」
「ありがとうございます、お言葉に甘えさせて頂きます」
イザークさんの店で直ぐに本人と会う事ができ、奥の応接間へと案内された。座って間も無くお茶が出されると、
「それでご相談とは?」
「実は商売を始めるにあたって店舗を持ちたいのですが、その為に必要な事等を知りたいのです」
「成程。先ず、ガルトで店を持つ為には商業ギルドに登録していて、ギルドランクがC級以上である事が必須です。ここまではギルドで説明を受けましたか?」
「はい。確認しております」
「では、一般的な商人が店舗を持つ為にはどうするかというと、何処かの商会に入り下積みをして独立する、大手の商会の傘下に入り名義を借してもらう、行商をメインに商売を行い条件が整ったら腰を据えて店を構える、ですかね。後はギルドランクに関わらず商売する一つの案として〈屋台〉を出す事も出来ます」
「そうなのですね。因みに何故屋台を出すのにはギルドランクは関係ないのでしょう?」
「新人達への救済措置ですよ。お金も伝手もコネも無い時から日銭を稼ぐ事が出来る様にギルドが用意したモノです。1日の出店料を払えば直ぐに商売が出来ますので」
「その日の生活が懸かっている者も少なくないのです」と言うイザークの目には沢山のそういった人間を見てきたという事がうかがえた。
「そうなのですね...では私も手始めに屋台から始める事にします。ご教授ありがとうございました」
「いえ、お役に立てたのであれば良かったです。ところで、
「はい、そっちの方は大丈夫です」
「分かりました。出店したら寄らせてもらいますよ」
「はい、お待ちしています」
イザークさんの店を辞した私は商業ギルドへ行き明日の屋台出店登録をする。
屋台のレンタルもして手数料込みで支払いを済ますと手持ちのルクは殆ど無くなってしまいました。
「さてと、後は仕入れですね。宿に戻りましょう」
なごみ亭の泊まっている部屋に着くと、ドアに内側から鍵を掛けてスーツのネクタイを締め直す。
ーー〈
そう頭の中でイメージすると、突然目の前に木製の扉が現れる。扉の中央にはデフォルメした黒猫が寝そべり此方を見つめている飾りがある。私は、黒猫の目を見ながらドアノブに手を掛けて行き先を告げた。
「和菓子屋〈富士見堂〉へ仕入れに行きますよ、
『にゃ〜』
ロイロ、と呼ばれた飾りの黒猫は欠伸を一つしてから起き上がると器用に両前足を合わせて鳴き声をあげます。
その動作を確認してから扉を開けて中に入りました。
「いらっしゃい。よく来たね、秋雨さん」
扉をくぐった先は、以前から仕事でお付き合いのある有名和菓子屋〈富士見堂〉の店内。勿論、地球の、日本にある、正真正銘本物の〈富士見堂〉の店内です。
「何度もお邪魔して申し訳ありません、やっと店を出す段取りがついたもので。ところで先程の件、お考え頂けたでしょうか?」
そう言うと黙り込む店主。ジッと店主を見ながら返事を待ちます。
「はぁ〜。秋雨さんの頼みならしょうがないな。〈
その返事を聞いた私は、おそらく満面の笑みを見せながら言葉を返しました。
「ありがとうございます!!」
明日、異世界屋台〈
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