第02話 永遠伴走と綴るあの日
自死を選んだ理由は諸説あるが、音楽に対する挫折も大きかったと振り返る。
コード進行はりぼて法と言う作曲方法を用いれば、どんな態勢からも作曲することは可能だが、ウェディング・ソングを作ると立候補して、二人を祝福する歌詞が浮かばなかった。当時は未だ、執筆活動を盛んに取り組んでいなかったので、作詞出来て当然、みたいな立ち位置ではなかったものの、百組のカップルが居たら、百通りの祝い歌が出来ないでどうするの? と、現在の僕は上から目線でモノ申す。
※メロディを抜いてコード進行だけ残し、別のメロディを上手に上書きする。
回りくどそうだが、多くのミュージシャンも同様の手順から作曲のいろはを学ぶ。
じゃあ、例えば、僕と妻のウェディング・ソングを今から書こうとなった時に、どれ位のアドリブ力で完成に漕ぎ着けられるか、ちょっと、やってみようか。
永遠伴走(サビVer.)
♪背中追いかけて 背中追いかけて 街路樹を帰る君を 見詰めていたよ
♪いつか隣で走ろう 隣で君を支えようと
♪誓ったあの日の 表題(Title)に込めた想い
出逢ったのは3年前の10月上旬。二人共自転車通勤。
職場で私語が認められていなかったから、帰り道に話すきっかけを求めていたが、クリニックと歯科医横の街路樹で、いつも見失う位に速度を出して、彼女は帰路に就いていた。
表題(Title)とあるが、正にそれが「永遠伴走」であり
僕で良ければ、残りの人生を伴走するよ。
と言う言葉を彼女に贈った。そう言うエピソード・ソング。
傷の痛みは日に日に薄れ、次なる目標は人生の生き甲斐を見つけることだった。死に急いだ人間が生き甲斐だなんて滑稽だが、終らせる今日よりも、積み上げて行く今日の方が実感はあったので、思慮を巡らせ、資料を取り寄せる。
決めたのは社会福祉士資格を取得することだった。程々に難易度が高く、後年の人生に有意義なキャリア。当初は雲を掴むような作業だったが、過去問を入手して、1日150問ずつ解くようになってから、全体把握が利くように成って来る。
専門学校にも籍を置いたが、通信制だったために主だった記憶は無し。
ハロゲンヒーターの前で毛布を被り、CDラジカセも、DVDプレーヤーも預けた部屋で五者択一をひたすら解き続ける毎日。
希死念慮は定期的に湧き上がったが、試験勉強中はそれどころでは無かった。苦しい日々だったが、闘病と言う観点から観たら、充実の日々だったように思える。
資格取得には、都合3年半掛かった。96点が合格ラインで自己採点は107点だったと記憶。福岡県の西南女学院大学が試験会場で本試験は2Fでおこなわれたが、下駄箱の両親を見つけて、階段を下りながらガッツポーズをしたことを深く記憶に刻んでいる。
前述にも記したが、僕はスタート地点の大部屋個室の窓の向こう側の世界には戻れないと思っていたのに、西南女学院大学と言う遠征先で履歴を更新すると言う快挙を遂げた。
人生は挑めばどう転ぶか判らない、そんな実感を抱く一連の流れ。
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