第34話 今こそはオリンピズムに則りてパンデミックに立ち向かひたし
オリンピックを観戦していて思うのは、ずいぶん競技種目が増えたということである。
オリンピック選手といえば、サイボーグのように鍛えられた超エリートを連想したものだ。
確かにテレビでは、人間業とも思えないスリリングで華麗な場面が映し出される。
しかし種目によっては、隣の兄ちゃんや姉ちゃん風の選手が、オリンピックを楽しんでるという雰囲気も感じられる。
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競技種目が増えるにつれて、オリンピックの開催期間も延びた。
その頃、国連では「アメリカ合衆国も遵守するオリンピック休戦決議」が採択された。
強気発言を続けていた大統領も、スキャンダルの相手が10人を越えてからは、トーンダウンせざるを得なくなったようである。
その後も、休戦期間を延長しようとする各国の努力により、オリンピックの開催期間は飛躍的に延長された。
オリンピックの総元締めとも言うべきIOCは、観客動員数の増加に気をよくして、完全な企業体へ変身してしまった。
サッカーくじで大騒ぎになった日本も、IOCが胴元のオリンピックくじは真っ先に受け入れた。
コンピュータのMS社まで傘下に入れたIOCは、ついにオリンピックの開催を1年おきで検討し始めたらしい。
インターネットで、ファンファーレとともにメイルが届いた。
次の冬季オリンピックでは、あらたに5種目が加えられることになったというのである。
そのなかには、なんと10,948番目の競技種目として、「スパイク付き長靴」競争があった。
大枚12,000円で「スパイク付き長靴」を購入し、毎朝の通勤トレーニングを続けた成果が生かされるときである。
男子2,000m障害物競争に参加申し込みをしたところ、数日後にIOCから参加受付のメイルが届いた。
もちろん、オリンピック参加保険の手続き書類も添付されていた。
国の代表としてオリンピックに参加できたのは21世紀初頭までで、最近では全ての選手が個人の資格で自費参加しているのである。
そのため、多くの国民がオリンピック参加保険に加入しており、潰れかけた生命保険会社が息を吹き返したという話まである。
今日もテレビから元気なコマーシャルが流れている。
「オリンピックは参加することに意義がある!」
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