自信を売る店
ヒロト
僕がアルバイトとして働いている店は結構変わっている。
店内にはこの店特有の『商品』が宝石店のようにガラスケースに飾られている。
しかし、『商品』は宝石と比べると全く美しくなく逆に嫌悪感すらある。それはそのはず、この『商品』はお客様が身につけて価値が出る。美しく、華やかな人生を一瞬にして手に入る、それが『商品』の特徴である。少なくともそう店長からは聞いている。
「店長、なぜお客様達は『商品』を買いに来るのでしょうか」
アルバイトを始めた頃からの疑問を聞いてみた。
「ん~そうだなぁ~。やっぱり――」
店長が言いかけた瞬間、チリンチリンと入店のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
お客様は女性、年齢は三十代から四十代辺りだろか。顔は美しく整っていて、服は高そうな物に包まれ、この店に来る必要性がないと思う。
「あら、店員さんを雇ったのね」
「はい、上田様。最近、『商品』の量が多くなってしまって、管理が大変だったので」
「へえ〜。ところで今日は新しく買おうと思って」
「承知しました。バイト君!六十四番と三十五番の商品、お願い」
店長に言われた通りマスターキーで六十四番と三十五番の札がついた『商品』を専用プレートに乗せた。
「こちらが上田様好みの六十四番と三十五番でございます」
「まぁ、これは素敵ね。試着してもいいかしら?」
「はい。こちらへどうぞ」
お客様を連れて店長は店の奥にある試着室へと向かっていった。
僕も『商品』を二人の元へ持っていく。
「では、こちらの六十四番からどうぞ」
お客様は『商品』を受け取ると試着室のカーテンを閉めてた。
数分後。
「どうかしら?」
六十四番を試着したお客様が顔傾けて見せた。
僕は反応に困ったが店長はニンマリと笑顔で
「少しクールな印象ですね」
「そうよね。でも鏡で見ると何となく違和感があるような気がするわ」
「では、こちらの三十五番を試着してみては。こちらは六十四番よりも現在の物に近い商品になっております」
「そうね。もう一度試着してみるわ」
またもや数分後。
「どうかしら?自分ではいいと思うのだけど」
「上田様の明るい印象が引き立っております」
「そう。それじゃあ、これ頂こうかしら」
そうしてお客様は新しい『商品』をつけて店を出ていった。店から出たお客様は来店時と服装や体型は一緒だか全く違う人物になっている。
「よーし!儲かった儲かった!」
「そうですね。ところで店長、話の続きをお願いします」
「え?なんの話だっけ?」
「なぜ『商品』を買うのか?ですよ。こんな不気味な物」
「まぁ、確かに不気味ではあるよね。でもこの『商品』は不気味ではあるけど身につければ、間違いなく自信が手に入る。その自信が欲しくてみんな買いに来るんだよ。でもその自信もなくなって、また買いに来る。これの繰り返し」
「ん〜。なんとなく分かったんですが…やっぱり、『顔』が店に置いてあるのは不気味ですよ」
「だよね」
店長は頷いた。
自信を売る店 ヒロト @hiroto33
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