第38話 ビビットカラーの街
時計台のある中心から時計と反対周りに半島を一周することに決めた。
ポルトガル人が初めにこの地に砦を作り、オランダ人が拡張し、その中に街を作った。砦の上は歩けるようになっていて、インド洋から吹き付ける柔らかい風が私たちを優しく包んでくれる。本当に気持ちよい。
インド洋の品の良いブルーが目に飛び込んできた。否応なしにテンションが上がってくる。今日の波は穏やかだ。大体の観光客が砦を歩きながらまずはインド洋を眺めるところからスタートしている。もちろんトゥクトゥクで回る人もいる。ただ半日で把握できるくらいの手のひらサイズの街なので、できたら歩いて堪能してほしいなと思った。砦をちょうど半周歩くと、灯台にぶつかる。
ここまでゆっくり歩いて20分程度。頭も暑くなってきたから、街中に入って、日陰を探そう。
さすが観光化されている街だけあって、本当にきれい。この街に住む人たちのおもてなしの気持ちが伝わってくる。カフェ、レストランだけでなく雑貨店や洋服屋さんまでいっぱいあるゴールの街。ヨーロッパ文化と東洋のオリエンタル文化が融合されてできた雑貨類は本当に可愛い。東南アジアにありそうなグッズだが、それにヨーロッパから来たポップな風を上手く織り込んでいると表現したらいいだろうか。でも観光客価格だ。思わず値札から目を反らす。
まず訪れたのはヒストリカルマンション。この建物は見つけやすい。旧市街の街に入ると、よく看板が立っている。
こちらは入場無料の博物館になっていて、宝石や海底から引き揚げられた植民地時代の品々が展示されているそして回廊では、宝石のカッティングやレース編みのデモンストレーションを見学することができる。ちゃんとした博物館ではないので、展示のされ方は雑だ。なんか置いてあるだけって感じ。ちゃんと展示してあったらそこそこお金の取れる博物館になっていただろうなと思う。良いものを展示してあるからこそ、損しているなと思ってしまう。
なんかここの管理人が、無料開放しているから、これでいいじゃん、と妥協しているような気がして、その手抜き具合が気になって仕方がなかった。
ヒストリカルマンションの向かいにあるのが、マンションカフェ。ここでしばし休憩を取る。ライムミントジュースをオーダー。これはゴールの名物ドリンクのようで、多くの店で提供されているらしい。初めて見た名称だ。日本では見かけない。ほんとさっぱりしていて、甘ったるくなくておいしい。南西モンスーンが当たるベストシーズンの1月にぴったりの飲み物だ。
こちらのジュース、320ルピー。大体そうだが、食堂とかファストフード店ではない場合、税金がとられる。ジュースそのものは290ルピー。30ルピーが税金と言う感じだった。だから昨日のステーキは税金が高かったのだ。500円くらい余計にとられた感じ。(おそらくサービス料も含まれていただろうが。)
英気をチャージした後はまた街散策。次はオーロラ要塞近くにあるダッチホスピタルゴールコンフォートに向かう。コロンボのダッチホスピタルと同じ、高級店が軒を連ねる施設だった。日本料理店もあるし、きれいなトイレもある。
その目の前に広がるのが一点の曇りもない、ブルーハワイカラーのインド洋。現地の人たちはこんな美しい海を見ながら心を整えていくのか。私は日本海エリアに生息しているから、うらやましくて仕方ない。
潮風にあたり心を整えた後、街中へ戻る。
コロンボと同様に、統治されている時代に造られた建物を今も活用している施設も多く目につく。ゴール警察署は1927年の建物だ。全体的に背丈の低い建物が大半だから、空が大きく感じる。
スリランカなのに仏教的な施設が少ないのもこの街の特徴だ。モスクがあったり、教会もいっぱい点在している。
穏やかな時が流れていたオールセインツ教会。賑やかなステンドガラスとか、ヨーロッパにありがちなゴテゴテした装飾はなく、シンプルそのもの。祈りに集中できそうな空間は空気の匂いも違う。外観よりも内観の方が素敵だった。
ちょうど街の中心部に位置していたのはオランダ教会。オランダ領セイロンだった時代は1658~1796年だから、その間に建てられた教会だろう。こちらは外観の方が好き。もちろん中はヨーロッパ諸国の教会ほど豪勢ではないけど、ステンドガラスもあるし、床には歴史が刻まれている。見ごたえは十分だ。
教会はヨーロッパと内装は比較しちゃ駄目だと思った。スリランカにキリスト教が伝わってからの歴史も、ヨーロッパと違って浅いし、キリスト教の捉え方や解釈も違うから。見る角度を変えたら、スリランカの教会は、内装は幼稚だなと思う人もいるかもしれないが、造られた当時の形をそのまま今に伝えている分、大切にしている気持ちは真っすぐに訪れる者に伝わってくる。
現地の人にとって居心地の良い施設ならばそれでいいんじゃないかな、と教会の椅子に座り、真摯に祈りを捧げている人々を見て思った。
暑い中散策していたら腹が減ってきた。
地球の歩き方に書かれていたお勧めのレストランへ、路地を散策しながら向かおう。
風通しの良い街並みに白が映える。地元の人々の大半は駅向こうの新市街に住んでいるが、もちろん旧市街にそのまま住んでいる方も多い。子どもたちが路地でボール遊びをしていた。そのボールが私のところに転がってきたので、投げ返したら、
「らぷしゃい」
と言う声を返してくれた。上手と言う意味だった。
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