魔法

水沢朱実

第1話

目を閉じて、ゆっくり開ける。


魔法みたいに、目の前の信号機が青になっている。


洗濯物を干す時、洗濯物干しが、何故かピッタリ洗濯物と

同じ数で終わる。魔法みたいに。


――そう、これは、私のささやかな魔法。


さりげなく、優しく、私を慰める、御伽噺。


「人に話しては、ダメなのよ。」


そう言ってくれたのは誰だったか。


魔法は、人に話したら叶わない。


私もそうだろうな、と思うから、

この魔法は、万年筆で書いたあと、

大事に大事に箱にたたんで仕舞っておく。


郵便で、いつか人に届ける日まで。


それまで、どうか見守っててね、と

見えない誰かに呟きながら。

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魔法 水沢朱実 @akemi_mizusawa

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