第4話
白浜のホテルで1泊して、早朝、出発した。
新幹線と電車とバスを乗り継いで、ようやく大間崎に着いたのは昼過ぎだった。
朝子はまだここにいるだろうか。いや、ここにいてくれ、お願いだ。
バス停から歩きながら、心の中でそう唱えていると、携帯が短く鳴った。
朝子が更新すると分かるようにしてある。
写真には、海をバックにした大きなマグロの像が写っている。
いる。間違いなく、朝子は目と鼻の先にいる。
大きなマグロ像が正面に見えてきた。
その後ろには白浜より荒々しい海が見える。対岸には、大きな灯台らしき建物と函館の街も小さく見える。
朝子は、朝子はどこだ?
辺りを見回していると、海へと下る階段があることに気づく。
その一番下の段で、しゃがみ込んで海に触れている後ろ姿を見つけた。
「あ!朝子ちゃん!?おーい!朝子ちゃーーん!!」
年柄もなく叫んでいた。
…朝子が、本当にいた。本物だ。
俺は、ほんの少し、感動すら覚えていた。
「あれ、ヒロ。もう来たの?」
この温度差よ。
振り返った朝子はいつもの朝子だった。
「今日はそこのホテル泊まろうと思ってたのに。仕方ない、大間のマグロ食べて、東京帰るか」
「いや、俺来たばっかなんだけど。1泊くらいしてもいいんだけど」
「それはダメ。見つかったらすぐに私たちの家に一緒に帰る。それがルールなんだから」
“すぐに”…そんなルールあったか?
まあ、なんでもいいや、朝子が見つかったんだから。
「本当は北海道の宗谷岬に行きたかったんだけどね。日本の最北端。でも白浜から遠すぎたから、本州最北端でもいいかなって。日本の最北端はまた今度かな」
「いっや、ここでも十分遠すぎるから!」
そっか、と朝子は笑った。
こんなになんでもない会話にも、俺の口角は上がってしょうがなかった。
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