太陽
目を開けると、暗闇のなかでカーテンが空いていることに気がついた。スマホの画面を見ると、夜中の二時になっていた。私は体を起こして、入浴と食事を済ました。夕方に寝たせいで、こんな真夜中に起きてしまったのだ。部屋に戻って気がついたが、私はカーテンも閉め忘れていた。だいぶ疲れていたのだろう。ひとまずカーテンを閉めて、もう一度ベットに潜りベッドでスマホをいじりながら夜明けを待つことにした。
私は目を覚ました。また寝ていたのだろう、スマホを見ると時刻は朝の六時だった。少し早く起きすぎたかもしれない。リビングに行って仕方がないと思ったから、そのまま部屋にとどまることにした。
課題を終わらせて、少しぼうっとしていると、もうすぐ葵が来る時間になった。私は着替えをして、彼女を迎える準備をした。ピンポーン、とチャイムの音がした。
「はーい、ちょっと待ってて」
一声かけてドアを開ける。
「おはよう」
「おはよ〜、お邪魔します。京子さんいるの?」
「うん、今日はいるみたい」
「おっけ〜、じゃあ挨拶してくるわ」
「はーい、待ってるわ」
葵は京子ちゃんに挨拶して、また玄関に戻ってきた。私の部屋に行こうと言って、ふたりで階段を上った。部屋に入ると、すぐに何かが馴染まない気分がした。
「あれ、あの大きな段ボール箱何?」
「分からない、さっきまで無かったのに」
「えー、不思議だね」
「これ、今まで届いたやつ」
そう言って、机の隅に置いていたふたつの小さな箱を開けて見せた。
「うわ、ほんとに福笑いできそうだね。妙にリアルで気持ち悪いし」
「分かったでしょ? 木曜日に私がどれだけ焦ってたか」
「これは本当に気持ち悪いわ。ウチだったら発狂してる。その段ボールも開けようよ」
「今までとは比にならないくらいデカいから開けたくないんだけど」
「順序的に行けば、たぶん体なんじゃない?」
冗談めかして言う葵を背中に、カッターを使って段ボール箱を開ける。昨日までに届いた箱には、テープなんて貼ってなかったのに。
段ボールを開けると、顔のない頭がついた人の上半身と下半身が入っていた。服装と体格を見ると、男性の身体だと分かった。マネキンなのか、何なのか分からないその物体を箱から取り出した。
「何これ、意味わかんない」
「とりあえず組み立てみよう」
わたしは、下半身と上半身を箱から出した。意外に軽くて、びっくりした。それは、発泡スチロール製だと思わせられるほどの軽さだ。組み立てた後、届いた順番に従って顔をはめていく。
全てのパーツが揃うと男の人らしきものが喋り出した。
「明里、久しぶりだね。お父さんだ。覚えているかい?」
私の困惑はひどいものだった。人間でもロボットでもないような存在が喋り出して、それが私の父だと言うのだから。男の人らしきものは、ずっと喋り続けた。いったい何を言っているのだろう。話について行くことはできない。動揺で冷や汗が止まらない。しばらくすると、男の人らしき物はこう言った。
「もう時期迎えが来る。そうしたら会えるだろう」
すると男の人は、綿毛が飛んで行くように消えていった。
「消えた?」
「明里、何喋ってたの?あの人形みたいなやつ何喋ってたか分からないんだけど」
「え?」
葵には聞こえていなかったのだろう。あれだけはっきりと喋ってたのに。もう私には訳が分からなくなってくる。頭を冷やそうにも、あまりにも状況は混乱し過ぎている。大丈夫? と声をかけてくれた葵に、わたしは何も言えなかった。彼女は、心配そうに私の横に座っている。
「ごめんね、なんかこんなことになっちゃって」
「ううん、大丈夫」
「とりあえず今日は、もう解散でも良い?」
「いいよ。また明日」
「うん、またね」
葵が部屋を出て行った。玄関でお邪魔しました、と言う声が聞こえた。
私はおかしくなってしまったのだろうか。私は部屋のなかで呆然としていた。
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