第35話 年末年越し大決戦!前編(2)
まさかこの三人が集まるとは、改めて見ると僕は色々とキャラが濃い面々と縁があるらしい。
僕自身は一般人なのに何故だろうか?。
「むん?この二人は、ダークエルフと謎の美人!流石はムッツリスケベのハジメさんですね。知り合いの女子は皆顔が良くておっぱいデカい娘ばっかじゃないですか!」
偶然でしょ、少し久しぶりに会って早々自分を顔が良い女子だと大きく出て来るポンコツちゃんは相変わらずのフルスロットル。この世に自分の思い通りにならない事なんてないとばかりの態度だ。
「人を勝手にムッツリスケベにしないでよ」
「えぇ~~そうですか?」
そうですよ。このままポンコツちゃんと話しても他二人に悪い印象を与えるだけなので取り敢えずマコラとリゼルさんにも話を振る。
「こんにちはリゼルさん、リゼルさんも異空間の方に?」
「異空間の裂け目は未知、強力なモンスターも多いから狙い目だ。ウチは新たな装備をゲットする」
リゼルさんは強くなる事が目的でアガーム大陸で冒険者をしてるのだろう。冒険者の王道スタイルなのでそれもありである。
「……けどあのクリームシチューは美味しかった。だから今後は美味そうな食材になる物はキープする」
「良いと思うよ、やっぱり自分が仕留めたモンスターの一番美味しい部分を遠慮なく食べられるのも冒険の報酬だからね」
ん?マコラは僕とリゼルさんを交互に見ながら何やらブツブツと呟いてる?。
「………やはり、この人がクリームシチューの人」
「おお~っこのリゼルって人、なかなかに強そうな装備をしてますね」
「まっまあ、それなり揃えるのに時間もお金も掛かったからな」
リゼルさん、ポンコツちゃんに装備の良し悪しなんて全然分かりっこないよ?適当言ってるだけだからねって事を後で教えてあげとこうかな。
しかし女子も三人寄ればなんとやら、何やら三人で会話をし始めたその時である。
異空間の裂け目の前に一人の男性が現れた。
「ギルドマスターのゴウズだ。先ずは色々と話したい事がある、聞いてほしい」
冒険者ギルドのギルドマスターか、久しぶりに見た気がする。
短い銀髪を刈り上げたガタイのいい四十路くらいの中高年男性だ。上半身にゴツい鎧を着込み大剣を背負っている、確か歴戦の冒険者だと聞いた事がある。
ゴウズは冒険者以外のイルバーンの人間も聞こえるように魔法で声がある程度遠くの人々にも聞こえるようにしてから話し始めた。
「現在、このイルバーンを囲むように異空間の裂け目が出現している。こんな事は初めての事だ…」
だろうね、何しろネビウス様の気まぐれクエストが発生してしまったからね。年末年始のゲームアプリのイベントの話とかしなければよかった。
「時を同じくしてイルバーンの教会の聖職者達から女神より神託を受けたと言う話がきた。その木の板は女神から教会に与えられた聖遺物だ、雑に扱えばどんな災いがあるか分からんぞ」
ゴウズの言葉に木の板を小突いていた冒険者の手が止まった。どうやらアレクサンドでは女神という存在は実在する者として捉えられているようだ。
「それと肝心の神託だが、この異空間の裂け目は明日の日の出までに消滅させなければ異空間からモンスターが押し寄せてイルバーンが滅びると言うものだった。そんな事は断じて容認出来ない、故に私は冒険者ギルドの力をここに結集してこの異空間を消滅させる事に決めた。諸君達には是非協力をお願いしたい」
そう言ってゴウズは頭を下げた、本当の所はイルバーンどころの話ではないはずだ。ネビウス様がアガーム大陸が滅びると言ったらイルバーン以外の所も滅びるだろうからね。
しかしイルバーンがって話の方がまだ冒険者的には受け入れやすいのかも知れない。冒険者から成り上がって街の英雄になるなんて話はアレクサンドにも結構なる話らしいし。
「冒険者の実力は問わない。時間は限られているので一人でも多くの力が必要だ、なんとしてもこのイルバーンを救うぞ!」
ゴウズの言葉に冒険者達は勢いを増す。
元から装備を整えて来ていた冒険者が殆どだ、ゴウズを先頭に僕達冒険者は異空間の裂け目へと侵入した。
そして中の景色に絶句する。
裂け目を抜けた先にはなんと…とても大きな山がそびえ立っていたのだ。
所々に人工的な建物が伺えていた、それはまるで要塞のようである。
そうっ僕達の目の前には要塞化された『富士山』が現れたのだ。
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