第32話 聖夜!ホーリーナイトクリスマ【怨】(1)
その日、世界は絶望に包まれていた。
「あっ!たっ君!」
「ん?どうしたの?」
「寒いよ~手を繋ごうよ!」
「え!?……わっわかったよ」
「……………」
【怨】。……いや~中の良いカップルだ、クリスマスイブの昼間の公園で中がよろしい事で。
「昼間に公園なんて、幾ら暇でもおじさんがくるべきじゃなかったな。地獄に落ちろよバカップルめ」
おっとついつい本音と建て前が逆になってしまったよ。
「あ~あ、今日雪降らないかな?」
「ホワイトクリスマスか、悪くないね」
「………………」
【怨】。豪雪に飲まれてしまっても構わんよ?。
本来、クリスマスはさ。
やっぱりサンタクロースとプレゼントを受け取る良い子の為にある日なんだよ、本来はどっかの聖人さんの誕生日らしいがそんな事はどうでもいい。
それなのに、なんでバカップルが大量発生する日になってしまったんだ?ハロウィンに馬鹿騒ぎする若者は許せてもこのバカップルの大量発生は許せないおじさんだ。
もういいや、こんなにモヤモヤした気分を味わう為にたまにしかない連休を潰すとか冗談じゃない。
異世界へ行こう異世界へ。
◇◇◇◇◇◇
『女神クエストだよ』
「………は?」
異世界行きの列車に乗る為にネビウス様がいる駅に転移させてもらったらいきなり妙な事を口走られた。
「あの、女神クエストとは?」
『僕からはじめ君にお願いがある時に発生するクエストさ。もちろん報酬もあるよ?受けない?』
日頃からネビウス様には異世界関係でお世話になっている。お願いがあると言うのなら話を聞いてみるべきだろう。
「お願いですか、それはどんな物なんですか?」
『今、君の元いた国はクリスマスとかってヤツが流行ってるんだよね?』
別にクリスマスって流行とかじゃない気がするけど、まあいいか。
『何でもその日はそこそこ神聖な日だとか、そこで僕は思ったんだ。アレクサンドにもそんな日を作ろうかなって』
「……………」
『そこで僕は考えた、やはりそれには撒き餌が必要だと…』
なんかヤな予感しかしないんですけど。
『何でもクリスマスにはサンタクロースって言うおじさんが子供に無償で欲しい物をプレゼントするらしいじゃん?そこで君には僕の代わりにサンタクロースになって欲しいだよ』
嫌な予感的中。いきなり女神クエストとか言いだしたかと思ったら…。
「子供にプレゼントを買ってあげろと?」
『流石に今日中にアガーム大陸にいる子供全ての欲しい物を把握するのは、はじめ君でも無理でしょ?そこは僕がやるさ』
「………それじゃあプレゼントを夜に配るのを?」
『いやっ君には……』
何かまだ面倒くさそうな話が続きそうだ。
『君には僕が用意したプレゼントをアレクサンドに生み出した異空間の裂け目から取ってきて欲しいのさ』
「は?異空間の裂け目にプレゼントがあるんですか?」
『これはある意味はじめ君へのプレゼントかな?なんか君はクリスマスを満喫出来ていないみたいだからね、僕が調べたクリスマスっぽい世界を堪能させてあげるよ』
ありがた迷惑の天元突破だよネビウス様。流石にこれは断ろうかな。
「その異空間の裂け目は直ぐに消滅させてプレゼントを配るだけにしましょうよ」
『えぇ~~~!?せっかく用意したのに~~?』
ネビウス様が頬を膨らませてぶ~たれる、しかしそんな百パー無駄な冒険なんて誰もやりたくなんてないんだよ。すみませんね。
『……ハァッ仕方ないね。なら今後はクリスマスの日を普及させてこの日にのみ現れる特別な異空間の裂け目って触れ込みで神殿とかに神託を降ろすとするよ』
「………………はい?」
『せっかく創ったのに勿体ないでしょ?結構可愛い感じに創れたから若い男女には人気が出ると思うんだ。だから今後はアガーム大陸に若い男女カップル冒険者を呼び込む為のイベント限定ダンジョンって感じでクリスマスイブからクリスマスまでの限定公開って事にするよ』
「……………それは、つまり」
『うん、異世界アレクサンドにもクリスマスの日には若い男女カップルがアガーム大陸に押し寄せる事になるかもしれないね』
【怨】。
僕はネビウス様の女神クエストを引き受ける事にした。異空間の裂け目は異空間のボスであるレアモンを倒せば消滅させられる、悪しきカップルなんてアガーム大陸に呼び込ませはしないぞ。
ネビウス様による悪のクリスマス普及作戦を打破すべく僕は行動を開始した。
その後ネビウス様にその異空間の裂け目が発生している場所について詳しく聞いた。
場所は『零度の森林』にあるらしい、あそこはいつも雪が降っている森だ。
生息するモンスターは獣型が多く、視界も悪いのでいきなりの奇襲とかが怖い場所である。
僕は女神クエストを受けて異世界アレクサンドへと急行していた。
邪悪なるカップル冒険者をこのアガーム大陸に呼び込むなんて馬鹿な計画を滅ぼす為に。
「…………ふうっ移動は順調かな」
ここまでスピード重視で魔法で気配や姿を隠して移動してきたのでモンスターとの戦闘はゼロ。体力もまだまだ余裕があるな。
僕は『精霊の指輪』を取り出して精霊へと語りかける。その力を発動させた。
僕の意志に答える様に一体の白い精霊が現れた。雪だるまの着ぐるみをした少女って感じの見た目をした小指サイズの雪の精霊である。
「このあたりに妙な物が現れたりしてないかな?」
「────!」
雪の精霊には心当たりがあるらしい、ついてきてっという感じでフワフワと移動を開始した。
やはり現地の事を知っている精霊に教えてもらうのが一番である。
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