第19話 冒険にポンコツを添えて(2)
「……………」
ファプマーさんは笑顔だ、しかしこう言うのってあんまり良くない印象があるんだよ。何か面倒くさい事の予感がする。
「僕はそんな有能な冒険者とかじゃないよ?」
「けどハジメさんって冒険に出ても怪我らしい怪我もしてる所を見たことがないんですけど?」
「それは事前に準備をちゃんとしてるからじゃないかな?ほらっ冒険者って結構気分屋の人が多いし。あんまり準備しないで出掛けた先で強いモンスターに遭遇したとかで怪我するんじゃない?」
我ながら苦しい言い訳だ。命の危険がない街やベースキャンプの外に気分一つで冒険に出掛けるヤツなんて息抜きで異世界に来てる僕みたいなヤツのことである。
しかしファプマーさんは僕の言い分をさらっと聞き流して話を進めてきた。
「実は~新作の魔道具があるんですが、それを完成させるのにあるモンスターの素材が必要で…」
「はっはぁ、そうですか…」
「そこでハジメさんにお願い出来ないかな~と、もちろん報酬は払いますから。どうですか?」
「冒険者ギルドの方には?」
「依頼は出してるのですが、全く引き受け手がいないらしくて……」
それ、かなり高難易度の依頼って事じゃないのかな?こんなおじさんに無理を言ってくれるなよ。
この『精霊の指環』の性能を試す事もしてないのに、難しい依頼を受けるのは不安しかないんだけどな。よしっここはキッパリ断ろう。
「あっもしも依頼を達成してくれたならその『精霊の指環』を更に強化出来るアイテムを報酬にしますよ?」
「わかりました」
気がついたらそんな言葉を言っていた。
◇◇◇◇◇◇
そして依頼内容を聞いて軽く憂鬱になり、テンバー地方に戻ってきた。
依頼内容は
まあその話は後だ、何故なら今僕の目の前にそのモンスターと同等か。それ以上に厄介なのが目の前に現れた。
「ハジメさ~ん、聞きましたよ?特選王マツタケで一儲けしたんですってね?お金ないんで貸して下さいよ~~」
競馬、ボード、パチンコ、あらゆるギャンブルに負け続けたギャンブラーがそれでもギャンブルに注ぎ込む金をせびりに来た時のような嫌な感じの笑顔をしてポンコツちゃんがベースキャンプの入口に仁王立ちしていた。
そんなセリフを堂々と他人に言えるその頭の中に多少の興味すら出て来た今日この頃。
「……なら今から僕が行くクエストでちゃんと働けば報酬を出しましょうか?」
僕は悪魔見たいな笑顔で提案した。
そして『紅葉の森』にて事の次第を説明する、道中は適当にはぐらかしていていたがここまでくれば話しても良いだろう。
何故ならもう旅は道連れ状態だからだ。
「ハァッ!?紅葉大狐!?それかなりレベルの高い冒険者が討伐依頼を受けるクエストですよ!?」
僕に騙されたポンコツちゃんが目ん玉をまん丸にしながら文句を垂れてくる。
「なら帰る?もう『紅葉の森』の結構深い所だからソロだと割と命懸けになるけど?」
「ちょっだからここまで依頼内容を濁して来たんですね!?」
当たりである、そもそもクエストの適性レベルならタブルスコアなんだよ(紅葉大狐のクエスト適性レベルは30である)。私のレベルは66、普通ならポンコツちゃんが受けられないクエストだけど僕と一緒なら問題ないと冒険者ギルドでも判断したのだ。
ブーブーと文句を垂れるポンコツちゃん、今回はモンスターの討伐とは話していたので胸当てとか革の膝当てを装備してきている。武器は遠距離武器のボウガンである、腰に構える大型のボウガンだ。これでもライトボウガンと呼ばれる軽量のボウガンらしい。
人間相手の片手に持てるボウガンとかじゃモンスターには何の効果もないので必然的に武器も巨大化したらしい、異世界の生物は本当に強いです。
僕達は『紅葉の森』から更に奥の未開拓地『真紅の渓流』へと足を踏み入れる。ここにしか紅葉大狐は姿を表さないからだ。
無論ゲームみたくクエストを受けて目的の場所に行けば必ずそのモンスターがいる、なんて事はない。クエストを受けてもモンスターがいないのでクエストが失敗するなんてままある。
そんな感じだから僕は滅多にモンスター討伐のクエストを受けないのだ。非効率なんだよ、それに自分からモンスターを捜し回って戦うとかゲームじゃないとそんなマゾい事を誰がしたがるのだろうって話だよね。
『真紅の渓流』は『紅葉の森』以上に真っ赤に色付いた紅葉樹が生い茂り大小様々な川が流れている
「…………むっ」
「うげっモンスター、まあ出ますよね『真紅の渓流』なら…」
そうっここは五分も歩けばモンスターと遭遇するレベルに未開拓地である、『紅葉の森』は小一時間くらい全くモンスターと遭遇しない時もあるのでその差はかなり大きい。
現れたモンスターは赤い鱗に覆われたコモドオオトカゲ見たいなモンスターであった。
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