第18話 冒険にポンコツを添えて(1)
今日はイルバーンに来ている。少し前にマツタケ関係で大金が懐に入って来たので久しぶりに大きな買い物をしにきたのだ。
イルバーンの街並みは中世ヨーロッパのそれに近い、あくまでもヨーロッパ風だけどね。冒険者以外にも商人や武器職人、その下っ端やその家族と言った普通の一般人も多く住んでいる。イルバーンの都市の中央には大きな広場があり円形に木が植林されている。
そこでは子供が走り回ったり女性が居ろ端会議をしていたり、年寄りがベンチに座っていたりしている。
実に喉かな時間が流れる。そんな広間にてお昼ご飯に用意したおにぎりを食べて水筒の水を飲んで人心地ついてるのが僕だ。
「よしっそろそろ行くか」
予定はあるが、スマホなんて僕以外誰も持っていない。だから事前に連絡とか取り合う事はないのだ。
しかしそんなのも慣れるとむしろストレスなく感じる、ああっ昔はこんなんだったよなっと思い出す。どうせ相手は殆どその場所にいるのですれ違いになる可能性も低いってのもある。
ラップを巻いたおにぎりを包んでた風呂敷と水筒をリュックサックに入れてイルバーンの街を歩く。
しばらく歩き、イルバーンでも商人や道具屋の人が出入りする区画へと向かう。
人通りも多く活気に満ちてる場所だ。ここはいわゆるアイテムショップ、様々な冒険の役に立つアイテムを売っている商店が建ち並んでいる。
そんな店の一つ、二階建ての建物が目につく。
『ファプマー魔道具店』と言う屋号のお店だ、ここは僕の数少ない知り合いが経営してる店である。
イルバーンには武器や防具を買いに来る冒険者も多いが。こういうファンタジーなお店に行く冒険者も多い、魔法が自力で使える冒険者って実はそこまで多くはないらしく、大抵の冒険者はこういう店でマジックアイテムを買うことで魔法の恩恵を受けているらしい。
僕も魔法は使えるが、便利な物はあって困るもんじゃない精神の地球人なのでこう言う所に顔をよく出すのだ。
炊事、洗濯、おトイレ事情。それらをこの未開のアガーム大陸で何とか出来るのは、実は魔法のファンタジーアイテムがあるからこそ何だってここの店主に聞いた事がある。
それはともかく早速中に入る。お店の棚には様々なマジックアイテムが並んでいた。
お手頃価格から結構な値段がする物まで様々だ、中には変な人形とか木箱に札が何枚も貼られている奇妙な箱もある。こう言うのに冒険するのは危険なんだよね。
店内を歩いているとお店を一人で切り盛りしている店主が顔を出してきた。
「こんにちは、ハジメさん」
「こんにちは、ファプマーさん」
黄緑色の髪のボブカット、瞳の色も黄緑色でいつも笑顔でホワッとした印象を受ける美人だ。笑顔が似合う女性である、年齢は知らないが二十歳前後だと思われる。
若い美人店主が経営してるとこの辺りでは密かに人気のある魔道具店がここだ。
「今日はどの様なアイテムをお探しに?」
「取り敢えず見に来たって所ですね」
「分かりました、ならご覧になって下さいね…」
少し話すとファプマーさんは店の奥に移動した、変に長い接客をしないのもこの店の魅力だ。
今のところのまだ他に客はいない、ああは言ったが大きな買い物をする時は変に人目がない方がいいので、ある程度お目当ての品は決めている。
ただそれがまだ置いてあるか……。
「あった」
それは木箱に入った指環である、別に結婚指環とかじゃない、相手もいないしな。
これは『精霊の指環』と呼ばれるマジックアイテムだ、本来は契約をして使役する精霊というファンタジーな存在を自分のような魔力なしの輩でも力を貸してくれるようにしてくれると言う実にファンタジーなアイテムだ。
魔法が使えるとは言え、魔法には基本的に詠唱がいるので不意打ちに滅法弱いのだ。まあ生き物って基本的に不意打ち、奇襲に弱いけどさ。魔法に頼ってばかりいると更にそれに拍車がかかるのである。
そこでゴーレム以外にも周囲を警戒してくれるような存在が欲しい、しかし誰かと組むのもな~、そんな僕みたいなヤツにはこれなのである。
精霊は口は聞かないので他の人間に余計な情報は喋らないらしいので前々からこの指環には目をつけていたのだ。
しかし当然いいマジックアイテムは一点限りなのも少なくない、そしてそれらはとってもお高いので今まで全く手が出なかった。
そのお値段、なんと金貨二十枚!金貨一枚が十万円くらいである。つまり二百万だ。
何の宝石も付いていない、シルバーリングが二百万である。異世界だわ~~。
しかし今日はの懐にはお金がある!僕はそれを手に取るとファプマーさんの所に向かった、彼女はカウンターで何やら作業中だ。
「すいません」
「はい、そちらは…ええ!?それを買うんですか!?」
ファプマーさんがめっちゃ驚いている。そりゃあそうか確かにこれは高いもんね。
「はいっ懐に余裕が出来たので買えます」
「わっわかりました…」
ファプマーさんも僕のレベルとか知らないのでなんでこんなおじさんがそんな大金を持っているのか不思議なんだろうね。
「それではこちらを」
「はいっ」
代金を支払い『精霊の指環』を手にする。
今日はクエストに出る気もないので後はゆっくり過ごそうかな。
そんなことを考えていると、ファプマーさんが話し掛けてきた。
「あの~、もしかしてハジメさんって有能な冒険者だったりします?」
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