第17話 キングオブキノコ(5)
◇◇◇◇◇◇
その日、テンバー地方のベースキャンプはちょっとした騒ぎになった。新種のレアモンを狩ってそのモンスター素材を持ち込んだからだ。
と言ってもアガームは未開の大陸である、新発見されるモンスターもまだまだ普通にいる。新発見されたモンスター素材は使えるかどうか不明でも割高で買い取って貰えるのでおサイフは暖かい。
僕もマコラも通常クエストの報酬とは別に特別ボーナスが出て幸せである。
そしてその日、日が傾く頃にて…。
ベースキャンプを歩く僕の耳に飯処から冒険者の声が聞こえた。
「オイッ!見ろよ、マツタケフルコースだってよ!」
「うおっ!?このテンバー地方でも滅多に食えないマツタケかよ!」
「しかもただのマツタケじゃねぇぞ、特選マツタケの更に上。特選王マツタケだ!」
「そっそんなのを飯処に降ろしたヤツがいたのか!?」
フッフッフッ……僕はね、基本的に美味しい物は自分の取り分は必ず確保する主義だ。しかしその取り分がちゃんとあればお裾分けも苦じゃないのさ。
冒険者ギルドに特選王マツタケを納品するか悩んだが、どうせ納品したら金持ちの所にしか行かないので飯処にでも割安で卸してこのテンバー地方で活動してる冒険者達に格安で振る舞って欲しいと飯処の店主に頼んだのだ。
運良くゲット出来た特選王マツタケ、是非とも味わって欲しいものである。
僕は気分よくベースキャンプに立てられたテントに向かう。
お金を払うと利用出来る空きテントの一つだ。中に入ると半分は普通に地面、もう半分は板が張られている。
そして板の張られた所で待つのは一人のダークエルフだ。
マコラが待っていた。
「……遅い」
「ごめんごめん」
今日は日本から持ち込んだ調味料とか野菜とかを使った料理を今日のクエストで頑張ったマコラに振る舞う事にしたのだ。
既に調理は完了している、ネビウス様の不思議なリュックサックから料理を取り出す。
その料理とは……これだ!。
「お待たせ、土鍋を使ったマツタケご飯とマツタケのすき焼きだ!」
「…………この、香りはっ!?」
解放されしマツタケの香り、マコラは鼻と耳をヒクヒクさせている……なんで耳も?まっまあいいか。
改めて…フフフッマツタケの香りは最強だからね、すき焼きにしてもマツタケの香りは割り下を凌駕するのだ!。
と言うわけで頂きますだ。先ずはやっぱりマツタケご飯である。マツタケはご飯を炊いた後に蒸らすタイミングだ入れるのがミソだ。
パクッと一口。
「…………!?」
旨い、圧倒的な香りとマツタケの旨味が凄いわ。
香りマツタケ味しめじと聞くけど、マジで旨いマツタケは味も旨いのだ……日本のマツタケなんて一度も食ったことないけど。
マコラも目を見開きとてつもなく感動してるご様子だ。
「たかがキノコと……侮っていたね?」
「っ!?……そっそんな事は……ない」
目が泳ぎまくるマコラ、可愛らしいね。
ニヤニヤしていると握り拳を向けてきたのでニヤニヤを辞めた、暴力的なダークエルフさんである。
そして次はいよいよマツタケのすき焼きだ。勿論肉やら野菜やらを入れてある。
ちなみになんで調理済みを運んで来たのかと言うと、ここで作ると他の冒険者が集まってくる可能性があったからだ。
さっさと食べてしまわなければどこぞのポンコツちゃんとかを呼び寄せる危険がある、けどこのマツタケのすき焼きはゆっくり食べたい。
このジレンマ、マツタケは罪なキノコだよ本当に……。
そしてマコラと同時にマツタケをパクッと。
「…………旨い」
「美味しい」
本当に幸せな時間だ。この後マツタケのすき焼きとマツタケご飯の匂いに釣られた阿呆がテントに侵入してくるとマコラが悪鬼の様な形相で不埒な侵入者をコテンパンにするショーが始まるのだが、それはまた別のお話である。
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