第14話 キングオブキノコ(2)
そして小一時間後、ギルド支部にてクエストを受注して僕とマコラは『紅葉の森』に繰り出していた。
マコラしかいないので今回はスパイダーゴーレム君も召喚済みである。
「この『紅葉の森』には魔物キノコ達が集まるスポットが幾つかあるけど、問題はどこに行くかだね」
僕が内心キノコの里と呼んでいるスポットである、本当に至る所に魔物キノコが生えていてしつこく群がって来る場所だ。
「私は魔物キノコが何処に住んでるか知らない。だからハジメに任せる」
「そう?なら一番近いキノコの里に行こうか」
「……キノコの……里?」
「ああっ気にしないでいいよ、適当に名前をつけて憶えやすくしてるだけだから」
マコラは僕の後ろで『キノコの……里』と頻りに言っていたが構わず歩く事にした。
『紅葉の森』はかなり広いので一番近くのキノコの里でもそれなりに歩く、舗装なんてされていない道を歩くのはそれなりに体力を使うのだ。
レベルアップした身体じゃなければ早々にへばっていただろうな、僕達は二時間ほど歩いた。
すると辺りからカサカサと地面に落ちた落ち葉がかすれる音がする。
「…………」
「…………」
不意に何かが落ち葉の下から飛び出して来た。
それは見た目エリンギっぽいキノコ、この世界のキノコにはそれぞれ違う名前があるが見た目で僕の世界のキノコの名前で呼んでいる僕だ。
足っぽいのが生えたエリンギはこちらに向かってキノコのカサを向けて突進してくる、魔物キノコ達の攻撃手段は体当たりのみだ。しかし自身の身体を硬化する特殊能力があるので食らうとそこそこ痛い。更に……。
回りの落ち葉からシイタケやマイタケに激似の足を生やした魔物キノコ達が多数出現。
コイツらは基本的に群れで襲ってくるのである。
「ここは、私がやる!」
マコラが腰の短剣を抜いた、速い!一瞬で僕の前に躍り出るとフライングボディアタックをしていたエリンギを真っ二つにした。
真正面からの場合、魔物キノコは体当たりするときにジャンプして冒険者の頭やお腹を狙ってくる。しかしジャンプしたらもう空中では身動きが取れないのでそこを狙って叩きつけると倒せた、魔物キノコの硬化能力はショボいので冒険者の腕力ならワンパンだ。
「……遅い」
他の魔物キノコがフライングボディアタックをマコラに仕掛ける、冷静に近い順に短剣で切り払うマコラ。余裕である。
魔物キノコの群れは数分で全滅した。
「………これを籠に入れて納品する」
「いや~~それがダメなんだよね」
「何故?」
「何故って、見れば分かるでしょう?」
そこにはバラバラになった魔物キノコの残骸だ、魔物キノコは倒すと普通に美味しいキノコになる。
しかし倒す際に切れば切れたまま、殴ったりしたらひしゃげてしまったままになる。ゲーム見たいに食べられるキノコが別にドロップする訳ではないのだ。
この状態では冒険者ギルドでは納品を受け付けてくれない、精々が飯処で捨て値で買い取ってくれるかなって感じである。
基本的に好戦的でお邪魔虫、それなのに力ずくで倒すと商品価値がなくなる。
「だから魔物キノコって冒険者からわりと嫌われてるんだよ」
「………食べられれば何の問題もないはずなのに」
そう言いながらカットされたキノコをスパイダーゴーレムの籠に放り込んでいくマコラ、きっとキノコ鍋にでもして食べる気なのだろう。もしかして調理するのって僕なのかね?。
「………けどね、実は結構やりようはあるんだなこれが」
「やりよう?」
「そうっ何事も小さな気付きでクエストの難易度は格段に下げられる場合って結構あるんだよ、ついてきて」
僕が先行してキノコの里を歩く、程なくして再び礼の落ち葉が擦れる音だ。来るね。
魔物キノコ達が僕に向かってフライングボディアタックを仕掛けようと突撃してきた。僕はベストの胸ポケットからサイコロカットしたチーズの欠片を目の前の地面に放った。
たったそれだけで魔物キノコ達は僕への攻撃を中断してチーズの欠片へと群がり始める。
小さなキノコ山になった所で物理的ダメージではなく、精神にダメージを与える系の魔法で攻撃する。
「アストラライト」
淡い青色の光がキノコ山を包む、光が消えた後には足を失った無傷のキノコ達だけが残った。
「キノコってチーズが好きなのか、目の前に置くとめっちゃくちゃ群がるんだよね。後はキノコ自体にダメージを与えない下級の精神攻撃魔法とかで十分倒せるんだよ」
「………………」
「あっ他にもサンドウォールとかでキノコ達の体当たりを受け止めて、そのまま砂を操作してキノコ達を呑み込む。三分も待てば窒息して普通のキノコになるよ?サンドウォールの魔法を解除すれば砂は消えるし、こっちもオススメだね」
なんかマコラから少し呆れられた視線を感じる、そんなバカな今回の僕は先輩冒険者としてお手軽な魔物キノコを倒してキノコゲット方法を教えてあげてるだけなのに。
まっまあ気にしても仕方ない、僕達はこの方法で二度ほど魔物キノコの群れを全滅させて大量のキノコをゲットした、そしてクエスト達成の条件である10キロを確実に越えた量をゲットする。
「………ん?」
その時妙な気配を感じた、僕はなにもないはずの空間に手を伸ばす。
すると空間が歪み。そして裂けたのだ。
これには近くにいたマコラも驚く。
「ハジメ、これは何?」
「……これは異空間の裂け目だね」
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