第15話 キングオブキノコ(3)

 このアガーム大陸はその殆どが未開の地だ、日本人の僕はおろか、この世界で生きてきた人間の常識さえ通用しない場面が多々ある。


 この異空間の裂け目もその例の一つ。

 このアガーム大陸では時折こんな感じで空間に裂け目が生まれる、その裂け目を越えると異様な異空間へと行けるのだ。


「そしてそこには普通ではお目にかかれないモンスター、通称レアモンがいるのさ」

「…………レアモン」


 まっゲーム的に言えばボーナスステージだ、なんかシリアスな感じに現場はなっているけどね。

 無論レアモンはそこら辺にいるモンスターよりもずっと強い、魔物キノコに遅れをとるヘッポコ冒険者が異空間の裂け目に挑むのは自殺行為だ。


 しかし僕もある程度は戦えるし、今回はマコラと言うの心強い助っ人もいる。行けるのでは考える。

「何よりレアモンが待ち構える異空間の裂け目に挑めるのは運だ。マコラがやる気なら僕は挑む価値はあると思うよ?」


「…………」

「普通の冒険者なら強いモンスターのモンスター素材を目的にレアモンを追ってたりするんだけど、中には……とても美味しい食材になるレアモンもいるとか─」


「行く」

 マコラは自身の胃袋に正直だ、きっと冒険者として活動する原動力が食欲なんだろうな。

 ………僕はあくまでもグルメ、まだ見ぬ美食を求める者なのさ。


 意見は決まった。僕達は異空間の裂け目へと突入する。



 ◇◇◇◇◇◇



 異空間の裂け目に入ると周囲の景色が一変した、回りは杉の木並みの高さはある呆れる程に大きな……キノコが生えていた。


 キノコの森って所か?あの赤い帽子にMの文字がトレードマークの配管工のおじさんの世界観を思い出す、小さい頃で一番思い出に残ってるゲームだったな。


 まっこっちのキノコの森はなんか胞子とか飛んでるしリアル感がプラスされてかなり不気味な森だけど……一応魔法を使っとこうか。


「マジックミスト」

「……!」

 僕とマコラの回りに淡い青色の光のベールが現れた。


「これに物理的な攻撃を防ぐ効果はないけど、目に見えない攻撃やフィールド効果から僕達を守ってはくれるはずだよ」

「………見えない攻撃?フィールド効果?」


 その辺りはマンガやゲームの話になるからマコラには説明しない。

 僕が言うのはあの目に見えるキノコの胞子の事だ、あれって本当に吸って大丈夫なのかなって話。


 あくまでマンガやゲームの話だけどね、キノコがモンスターとして現れる世界なので注意をしておく。

「!……ハジメ」

「うんっ分かっています」


 回りを見る、そこには魔物キノコが集まっていた。しかも僕が知る普通の魔物キノコではない、なんか赤色とか黄色とかマーブルとか如何にも毒キノコでっせ!的なのに足が生えている。


「アレは体当たりを食らうのも避けた方がいいですね。ここは僕が魔法で防ぎます」

「……私も魔法を使える、どうせあの見た目のキノコは食べない方がいいから倒す」


「確かに、その通りだね」

 あんな毒キノコ(多分)、倒しても籠に入れたくない。

 遠慮なく魔法で退治してしまおう。


「サンドウォール!」

「エアリアルアロー!」


 僕の魔法で生み出した砂の壁が魔物キノコを呑み込み、マコラの魔法が生み出した無数の風の矢が魔物キノコの土手っ腹に風穴をあけていく。


 次から次へと現れる新種の魔物キノコ達、その手の研究者が見れば宝の山だろうが食えるともおもえない魔物キノコなど僕達には普通に排除すべきモンスターでしかない。



 どんどん魔法で魔物キノコを退治していく、僕達の快進撃は続いた。

 そして気づけばキノコの森の最深部らしき開けた円形の空間に出る。


 異空間の裂け目について僕が知る情報によると、異空間の裂け目は最後には必ず円形の開けた空間に出ると言われていた。

 そしてそこはいわゆるボス部屋なのだとか。


「マコラ、恐らくここにレアモンがいます」

「分かった。気をつける」

 周囲の気配を探る、今のところはモンスターの気配もない。


 そうっさっきまでしつこく僕達を追ってきてた魔物キノコ達がここに近付くと一切追ってこなくなったからだ。

 ここには何かがいる筈だ。


「…………!?」

 すると僕達の視線の先、不自然に地面がボコッと盛り上がる。

 そして地面を吹き飛ばして何かが現れた。


「マ!ツ!タッ!ケェエエーーーーーッ!」


 なんと、あの姿は!。

「まっまさか……特選王マツタケだと!?」

「特選王………マツタケ?」


 間違いない、すこしずんぶりしてるが巨大過ぎる六メートル越えのマツタケ。足のような物が生えている上に腕まで左右に二本ずつ、計四本生えているがマツタケである。


 問題はその開いたカサの上、そこにカサが開いていない立派なマツタケが幾つも生えているのだ!。

 この世界にもマツタケがある、しかし高級な秋の味覚と言えばマツタケと言う言葉が自然と出て来るようにアレクサンドのマツタケも目ん玉が飛び出るような値段がする鬼の様な高級食材である。


 理由は魔物キノコが沢山いるキノコの里でもまずお目にかかれないからだ、それがあんなに沢山あるとは。レアモンよありがとう。


「このテンバー地方で取れるマツタケは特選王マツタケと呼ばれているんだ。値段、香り、味その全てがテンバー地方で取れる食材の中でも最高ランクの食材とされているからね」


「…………最高の…食材」

 マコラの全身から魔力が漲る、マコラが本気になった!。


「マツタケェェーーーーッ!」

「………必ず仕留める」


 マコラが突撃した。音速越えてるかもしんないよあの速さは、僕じゃなきゃ見逃してるね。

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