第13話 キングオブキノコ(1)

「マロマロマロオォォーーーンッ!」

「なんの!サンドウォーーールッ!」


 その日は『紅葉の森』にて栗魔導師くりまどうしと激闘を繰り広げていた。

 栗魔導師は頭が大きな栗みたいなローブ姿のモンスターだ、マロンヘッドにつぶらな黒い瞳と口があるファンシーな敵だ。


 彼らは冒険者を見かけるとイガつきの栗を魔法で出現させて飛ばしてくる、沢山飛ばしてくるので冒険者からはとても不評だ。足元に転がったイガ付き栗も地味に嫌な仕事をしてくるのだ。


「マッマロッ!?マロロロ~~~~……」

 しかしそれ以外の攻撃手段も持たず、魔法一回で魔力が尽きるので魔法を撃った後は黙っていても勝手に逃げる弱腰モンスターになる。


 魔法を使っていないと物凄い強気なんだけどね、栗魔導師は背中を見せると『紅葉の森』の奥に逃げていった。


 ……よしっ僕は魔法を解除して砂の壁を消滅させる、後にはイガつきの栗が大量だ。

 実は栗魔導師の魔法で出現させた栗は食べられる、それもとても美味しいのだ。


 甘栗や栗ご飯にしても最高だ。今回のクエストはこの栗魔導師の栗だった、これでクエスト達成である。



 ◇◇◇◇◇◇



 ギルド支部にて栗魔導師の栗を納品して、あまった栗を飯処に持ち込むと調理してくれる。

 今日のご飯は栗ご飯と魚の煮付けとシュワシュワなアルコールさんだ。


 パクパクモグモグそしてゴクッと……。

「プハァッ……最高だ」


「………完全におっさんね、ハジメ」

「ん?あっマコラさん」


「…………」

 あっいけね、そう言えばマコラって呼べって言われてたわ。

「マコラ、聞いたよ?マコラも冒険者になったんだだってね?」


 近頃、新人冒険者のダークエルフが物凄い勢いでクエストを達成して実積をモリモリ積んでいると。

 今のマコラはボロ布一枚と言う奴隷の正装ではなく、なんかアラビアンナイト系のファンタジー世界に出て来そうな踊り子に近い軽装だ。露出度高め。


 腰に短剣、はいてる靴は先っちょが少し上向きにニュッとしてるあの靴だ。頭にターバンとかは巻いていない。


「それは、故郷の装備?」

「それに近いのを選んだ、動きやすい」


 動きやすいだろうけど、他の冒険者(とくに男子の)視線が凄い事になってるよ?。

 しかしマコラはどこ吹く風と言った感じだ、こう言う異性の視線に興味のない子ってたまに居るね。


「……じ、実は今日はクエストを一緒に受けないかと思って話し掛けた」

「クエスト?」


 いつもなら僕はソロでクエストを受けるので断る、変に魔法を使える事を知られると他の冒険者がうるさいからだ……まあ以前の白刃秋刀魚の時みたいに不味くなれば躊躇なく使うけど。


 全ては命あっての物だ、しつこい冒険者は実力行使で黙らせばいいからさ。

 話を戻そう、マコラの場合は僕の魔法の事も知ってるし問題はないかな。


「他のパーティーメンバーとかは?」

「いない、私も基本ソロの冒険者として活動してる」


「分かったなら後はどんなクエストを受けるかによるね。クエストの内容は?」

「……魔物キノコ」


「うわぁっそれはまた特殊なクエストを……」

 このテンバー地方にはモンスターとして扱われるキノコが何種類かある。

 見た目はシイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジを馬鹿デカくしたのにニュッと足っぽいのが生えている連中である。


 道行く冒険者の背中に体当たりとかしてくるので冒険者からは嫌われている。しかし倒すと足が消えてとても美味しいキノコになる連中なのだ。


「キノコ鍋を食べたい」

「…………」

 マコラは僕の影響なのか食べたい物をゲット出来るクエストを選んで受ける子になってしまった。


 巷の冒険者からはグルメな美人冒険者としも有名だ。ちなみにさっきからその美人冒険者と話をしてるおじさんに『なんだあの変なのは?』て視線が向けられているよ。


「…………何?」


 あっその連中がマコラに睨まれて視線を逸らした、マコラは他人が他人に向ける視線には敏感らしい。

 まあ他の冒険者はどうでもいい、問題は魔物キノコのクエストについてだな。


 モンスターを討伐する系のクエストを主に受けるのは冒険者としてある意味王道のスタイルだ、僕はあまり受けないが別に避けてる訳じゃない。


 ………まっ中には逆立ちしても敵わないヤバイモンスターもいるのでクエストの内容は吟味するのは冒険者の鉄則だ。

 マコラは既に依頼票をクエストボードから剥がしている、それを見せてもらい読む。


 ふぬふぬ、なるほどね。

 依頼票によると欲しいのは魔物キノコのなかでもエリンギ、シイタケ、シメジをそれぞれが10キロずつ納品して欲しいらしい。


 魔物キノコは普通のキノコサイズの数倍以上のサイズが殆ど、それぞれ十体と少し狩ればいけるか。

 そして魔物キノコが特に分布してる場所にも心当たりがあるし、問題ないね。


「分かった僕もそのクエストを受けるよ」

「うん、ならギルド支部のテントの受付カウンターに行こう」



 

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