第11話 名刀秋刀魚とポンコツちゃん(3)
◇◇◇◇◇◇
船に乗り込んだ僕達はモール湖を白刃秋刀魚を求めて進む。勿論水夫達が白刃秋刀魚を探せる魔法なんて使えない、ラゲルも使えない。
そうなると必然的にそんな魔法を使える冒険者が探すことになる。
僕である、まあ他にも三名程だがそれぞれの船に乗り探索系の魔法を使って白刃秋刀魚を探している。
「……マジックソナー」
魔力を周囲に音波のように発して魚群を探る。
「白刃秋刀魚の魚群は見つかりそうか?」
「以前白刃秋刀魚の漁に一緒になった時と似た感じの魚群を探してます、恐らく……!」
魔法に何やら多くの魚を感知する。ふむふむこの感じは…。
「ラゲルさん、魔法に反応がありました、場所はここから西に向かって下さい。それで先回り出来る筈です」
「ハハッやっぱりお前の魔法が見つけたか!分かった、お前らー!西に舵を取れ!」
水夫達が元気に返事をする、船は速度を上げた。
そして進むこと数十分くらいかな?うまい具合に魚群の進路に先回り出来た、この世界にほ日本の漁で使われる機器の類いがないから全て魔法で代用しているので何気に僕の仕事は大変だ。
しかしラゲルさんには網を上げる作業の方には行かなくていいと言われてるのでここまで来れば後は観てるだけである。
水夫達は網を放るタイミングを計る……合図がきた。
一斉に網が投げられる、その身を鋼の刃以上に強靭な武器に変える白刃秋刀魚、その漁に使われる網が普通の網じゃない。
このアレクサンドの謎金属を魔法で強化した錆びない切れない軽くて頑丈なファンタジーな金属製網なのだ。
更に放られた網は自動で水中を動き、白刃秋刀魚の魚群を包み込む。
もうあの網さえあれば漁師も冒険者も……そんな事さえ思える程に有能な魔法の網ですな。
ラゲルは声を上げる。
「よぉーーし!順調だな。このまま…」
冒険者達が網を力一杯引き上げる。
白刃秋刀魚の姿が見えた……。
冒険者達と水夫達、大歓喜である。
「よぉし!今回の白刃秋刀魚の漁は成功したも当然だな!」
「秋刀魚!秋刀魚!秋刀魚!」
「うぉおおーーっ!喋ってないでさっさと引け!」
「んっ!?おいっちょっと待て……網が、おい網が……!」
しかし何故か破れない筈の魔法の網が破られた。
白刃秋刀魚の重さに網が耐えられなかったのか!?。
「まさか………
「めっ名刀秋刀魚?それは一体…」
その名前は初めて聞く名前だった、ラゲルは驚愕の表情浮かべながらも説明をしてくれた。
「白刃秋刀魚の特異個体だ!姿は他の白刃秋刀魚と変わらないが特殊能力が更に強力になってる、ヤツの刃が相手じゃあ魔法の網も破られるぞ!」
なんとまあ、あの大型の水棲モンスターすらも捕らえるのに使われる魔法の網を断ち切るとは。
「名刀秋刀魚が相手だと下手すると船底を切られて船を沈められる、急いで引き返すんだ!」
ラゲルさんの号令は拡声の魔法で他の船にいる水夫達に伝わる、直ぐに撤退が始まった。
今回は冒険者も漁という事だったので武器や防具の類いは殆ど装備してきていない。だってモール湖に落ちたら鎧着てたり武器を背負って泳ぐとか無理だからね。
船は慌ただしくしながらも旋回する。
しかし一隻の船の様子がおかしい、動きが鈍いなと思っていたら船の上の水夫が叫んだ。
「やられた!名刀秋刀魚に船底を切られて大きな亀裂が入った、このままだと船が沈むぞ!」
マジか、あの船にも八人くらいの人間が乗っているのに。沈んだら白刃秋刀魚にやられるぞ。
すると冒険者の一人が大きな布を上に放る、その冒険者が呪文を唱えるとその布が宙に浮いた。
物体を浮遊させる魔法か、浮遊する物に捕まれば少しの間は宙に受ける。水夫達と冒険者はその布に捕まり一番近くの船に移動して事なきを得た。
「不味いな、完全に名刀秋刀魚は船を全滅させる気だ。このままだと」
「ラゲルさん、秋刀魚たちの気を引くにはどうすれば良いんですか?」
「そんなの誰が湖に飛び込めば連中はその人間に殺到するが……」
「…………」
流石に無茶が過ぎるとラゲルさん、それただの自殺だよ?。
それは無料だっと思っていたら……。
「ハジメさん!何とかあの秋刀魚たちを捕まえられないんですか!?もうお金もないので今回のクエストは失敗出来ないんですよ!?」
ポンコツちゃんである、当たり前の様に同じ船に乗っていた。目に涙を浮かべて悲壮感漂う美少女を演出している。
人から借りた金を後先考えずに使い切っただけのくせになんでそんなに悲劇のヒロインみたいな顔が出来るの君?。
すると僕達が乗っている船が結構揺れた。
ふうっ危うく落ちそうになったよ…。
「ハッハジメさぁぁーーーん!」
見えたのは船から放り出されるポンコツちゃんの姿だった。本当に何なのかな?あの子……。
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