第8話 マコラ=ルベライト
私の名はマコラ=ルベライト。
元はアガーム大陸とは違う大陸に広がる砂漠に住む一部族のダークエルフだ、しかし一人で狩りに出掛けた時に人間の人攫いにあって…。
それからは各地を転々と連れ回され、あの忌々しい奴隷の首輪を付けられた。そして最終的に私を買った冒険者達がアガーム大陸にいると言うことでそこまで連れて来られたのだ。
冒険者達は全員男のパーティーだった、その下卑た視線から戦力として以外の目的があるのは明らかだった。この首輪にかけられた魔法のせいで舌を噛み切る事も出来ないのが残念だ。
そして私を戦闘奴隷として戦力アップしたクズ冒険者達がテンバー地方とやらに冒険に行くと決めたらしい。私には武器どころか盾の一つも寄こさないくせに自分達はそこそこの装備で身を固めている。
この奴隷の首輪のせいで私はヤツらに攻撃も出来ないし逃げる事も出来ない。それなのにこの人間達は……。
その後は何というか、お粗末な結果となった。
テンバー地方の『紅葉の森』に意気揚々と出発した連中は直ぐにモンスターと遭遇した。
そしてあっさり全滅した、私を無理矢理前に出して戦わせたと思ったらいつの間にか全滅していた。
よもやあの装備まで見かけ倒しだとは……本当にいつやられたのか私にも分からなかった。本当に何故冒険者になんてなったんだコイツらは。
魔法が誤爆でもしたのか?と思った程だ、まああの連中についてはもうどうでもいい、問題はその後だ。
流石に始めて見るモンスターに苦戦していると、魔法による援護射撃があった。
見ると現れたのは中年の冒険者だ、覇気はとくに感じないがあの攻撃魔法の練度はかなりの物だった。モンスターはその冒険者の魔法が大打撃となり私は碌に動けもしないモンスターにトドメを刺すだけでよかった。
その後はその中年の冒険者、ハジメと話をして色々と冒険者の話を聞いた。
その話をまとめると……言える事は甘党梨は本当に美味しかったと言う事だけだった。
なんとなくハジメが自分がした話は何だったんだと言ってきそうな気がした。
その後はキャンプ地からイルバーンに移動して冒険者ギルドに行った、ハジメは依頼を受けていたらしく甘党梨を納品していた。
その後は私の事を少し話してさっさとギルドを出て行ってしまった。
渡されたお金、返さなくていいと言われたけど本当にそれで良いのか考えていると冒険者ギルドで受付をしていたサーラが話し掛けてきた。
「こんにちは、どうかしたんですか?」
「……別に」
「そうなんですか?あっそう言えばハジメさんが貴女に『先ずは服とか買って、後はお風呂とか入りなよ~』て言ってましたよ?」
「………………」
ハジメはデリカシーがない、確かにそこは私も女だから分かっていた。しかしずっと気にしないようにしていたのに……。
「それとハジメさんが『この街にいる間はまた人攫いに会うとかないから~』とも言ってたんだけど、もしかしてマコラさんって元は奴隷だったの?」
「……無理矢理あの首輪をはめられた」
私が答えるとサーラは視線を伏して『…そうっ』と答えた。あの首輪をしてる者がそれだけの罪を犯した者か攫われて無理矢理奴隷にされたのか、判断がつかない以上冒険者ギルドの人間も奴隷を連れた冒険者に対して何も言わない。
私からすればあんな道具を使わせる精神が理解できないが、サーラに言っても仕方がない事なので何も言うことはない。
「けど、この街には人攫いがいないと言うの?」
あのクズ共はどこにでも現れる虫の類と同じだと思っていた。
「ふふっそれはまあ……元は結構居たんですけどね?ここって本当に色んな種族の人達が集まる街ですから……」
「それじゃあなんで今はいないと言い切れるの?」
「……ハジメさんですよ」
「……ハジメ?」
「はいっ彼、実はかなり有能な冒険者さんなんですよ?このアガーム大陸でも殆ど入手出来ない希少な食材を何度も入手するくらい」
サーラの話は更に続く。
「それで~彼がこの冒険者ギルドやイルバーンで影響力のある有力者に一時期とても希少で、とても美味しいアガーム大陸の食材をそんな人達に渡していたんですよ……」
「しっ食材?」
「そうです、人間って食欲程自制が効かない欲求はないでしょ?そのとても美味しい食材を渡して言ったらしいですよ……」
「このイルバーンから人攫いと奴隷で商売してる連中、目障りだから排除してくれませんか?嫌なら二度とこの食材の入手依頼を受ける事はありませんので……ってね~~」
「…………」
「お陰でこのイルバーンからガラの悪い連中は綺麗さっぱり消えました、それでもコソコソとイルバーンに残った連中もいたそうですけどその人達も何処かに消えたって話ですよ?」
「何処か?何処かって何処……」
「さぁ?私に言える事は、ハジメさんのレベルって確かに60代後半だった筈でしたしね~って事くらいですよ?」
そんな馬鹿な、レベル60代後半?。
レベルは単純に強さを示すステータスだ、四十もあればベテラン戦士、五十で一流の戦士と見なされる。それが六十代後半となれば間違いなく超一流と呼ばれる存在だ。
「ま~あ?そんな人が人攫い相手に何をしても私達冒険者ギルドは感知しませんってスタンスなんですよ~~あっもちろんそんな人に『この子の面倒を頼みます』って言われたら適当な仕事は出来ないんですよね……」
成る程、やたらと喋ると思ったらそう言う事か。
しかしそれだと今度はどうしてそんな冒険者が私を助けたのだろうか?まさか本当にただの善意だとでも?。
それ以外にも気になる事がある。例えば街の有力者を脅せる程に美味しい食材とか、ギルドマスターに言う事を聞かせる事が出来る程に美味しい食材とか……あとやっぱり渡されたお金についても。
それらを解決しないで故郷に帰るなんて選択肢は、最早私にはなかった。
「………一つ聞いても良い?」
「はいっ何でも聞いて下さい」
「冒険者ってどうすればなれる?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます