第6話 甘党梨と奴隷ちゃん(3)
「先ずは自己紹介からする?僕は田中一。一応冒険者をしている者だ」
「………マコラ=ルベライト」
奴隷ちゃんはマコラ=ルベライトと言う名前らしい。流石に奴隷ちゃんはアレなのでこれからはマコラと呼ぶ事にするか、もちろん心の中で。おじさんが名前を呼び捨てとかね、嫌がる女の子は沢山いるのだよ。
僕も下の名前をオッサンに呼び捨てにされたらかなり嫌な気分になる。おじさんはオッサンに優しくはないのさ、女子も同じようなもんだろう。
「先ずは回復するよ、ヒール」
マコラの身体を淡い緑色の光が包む、かすり傷くらいなら下級の回復魔法で一瞬で消えるだろう。
問題はこの後だな…。
「それと、これからもう一つ魔法を使って君に幾つか質問をしたいんだけども、良いかな?」
「…………」
「使うのはウソを見抜く魔法、それを使って君がどんな理由で奴隷になったかを知りたいんだ」
「そんな事を?……別にいいけど」
早速僕は自分に魔法を発動する。そして目の前のマコラに質問をした。
「フェイクコールサイン。君は大きな犯罪を犯して奴隷となったのかい?」
「違う、故郷で人攫いにあった。イルバーンには無理矢理連れて来られてあの気持ち悪い人間の冒険者達に買われた。死んでせいせいしてる」
うん、嘘偽り一切ありませんな。
それとやっぱり人攫いに無理矢理奴隷にされちゃった方だったか、この世界にも人の過去を知る魔法とかない、そして奴隷はマコラもしている黒い首輪をしてるかどうかで判断される。
本来の手順を踏んで奴隷となったかどうかを確認する方法がないから無理矢理奴隷にして…なんて言うキモい真似がまかり通ってるのが悲しいね、本来は犯した罪を償わせる筈の仕組みな筈なのに。
ちなみに奴隷を買った奴隷主ならある程度事情を知っていてもおかしくはない。それでもマコラを奴隷として連れ回していたらしいので恨まれるのも仕方ないのかな、僕もそこまで同情はしない。
まっ美少女の奴隷ちゃんに興味がないと言えばアレだけど……僕には無縁の存在だ。
「分かった、君はウソは何も言ってないね。それなら………マジックブレイク」
「!?」
マコラの首の黒い首輪が塵となって消えた。
「よしっこれで君は奴隷から解放されたよ」
「……ウソ、あの首輪は破壊なんて出来ないって」
「奴隷の首輪も魔法の道具でしかないよ。なら魔力を消し去ればただの首輪だ、まさか塵になるとは思わなかったけどね。まあ結果オーライって話だと思おうか、それと自由になったからって人間に復讐とかは勘弁して欲しいかな。その人攫いとかなら別にご自由にって話だけど…」
こちとら女神様の呪文書から拝借した魔法を使ってるんだ。人間が作った魔法の道具くらいどうとでも出来るに決まってるじゃないの。
流石に人間に恨みを持った上にモンスターを蹴りで倒すダークエルフを自由の身にするには魔法で最低限の確認はしたかったのでフェイクコールサインを使ったのだ。
ちなみにあの魔法、相手がウソをつくと全身から赤い光か黄色い光を発するようになるのだ。
赤い光だとかなりヤバイウソをつくヤバイヤツの可能性が高い。黄色い光は赤よりは下だけどどの道危険かもってレベルである。
まあとにもかくにもマコラを奴隷から解放は出来たので後はこのままキャンプ地まで……。
その時クゥウッと可愛らしいお腹の音がなった。
無論僕じゃない、ならば……。
「……………違うぞ」
「ハッハッハッ…少し待ってて」
僕はゴーレムを呼んでリュックサックの中をゴソゴソとする。中からプラスチック製の皿にラップをした物を取り出した。
ラップを取る、そこにはカットされた梨が。
「…………!」
「召し上がれ、果汁たっぷりでとても甘い梨だよ」
毒味代わりに一つ食べる。う~ん最高に美味い。
何故そんなに美味いかって?だってこれ
このリュックサックはラノベで言う所のマジックバックだ中に入れた物は時間経過で劣化とかしない。食べ物も傷まないのだ。
そうっ実は甘党梨を既に僕は持っていたのだ、つまりあの依頼の甘党梨が果樹園でゲット出来なかったとしても何も問題はなかったのである。
冒険者ってギルドの依頼を定期的に受けないとギルドへの登録を抹消されるのでこんな風に依頼を失敗しない為の姑息な真似もしている。
姑息おじさんだからね僕は。まあ元々この甘党梨が大好きで自分の分をストックしときたかったと言うのも本音だけど。
マコラは余程喉が渇いていたのか甘党梨をパクパク食べている。甘党梨を食べれば水分と糖分は十分に補給出来る筈なのでキャンプ地まで歩くくらいなら体力も回復するだろう。
「……一つ聞かせて」
「?、答えられる事なら良いけど」
マコラの素性を無粋にも聞かせてもらった手前、多少はこちらの話をするのもやぶさかではない。
けど異世界から息抜きで来ました~なんて話はしない、頭がアレかもと思われるのは嫌だからだ。
「貴方はアイツらと同じ冒険者とは思えない、人が良すぎる」
「そっそうかな?」
「このアガームは危険なモンスターが多い、アイツらも慢心してたらあっという間に全滅した。貴方はそんな場所を一人でいる、幾ら魔法使いでも危険過ぎる……」
「ああっまあ趣味があるからね」
「趣味?」
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