EP.13 犠牲ー散る命ー
夜も更けて終電の無くなった東京は新橋の烏森側の繁華街を二人のスーツ姿のサラリーマンが居酒屋の明かりと中から聞こえる喧噪を横目に歩いていた。
「いやはや酔っぱらってしまったねぇ」
髪の薄い中年の男が若い青年に向かって言う。中年はすっかり酒に酔っぱらっていて顔を真っ赤にして微睡んだ目つきをしていた。
「えぇ酔いました」
中年の隣を歩く青年は平然とした口振りで答えた。
「本当かい高井君」
酒臭い吐息混じりに中年が言う。
「本当ですよ。顔に出にくいのでよく疑られるのです」
高井と呼ばれた青年が答えた。
「いいね若者は、なににも強くて!酒にも!仕事も!女にも!」
中年は酔いと機嫌が最高潮に達したのか言動が支離滅裂になっていた。
「仕事と女性はかないませんよ」
「いいね、いいね」
高井の返事に中年は上機嫌に相づちをうった。
「よし、もう終電は無いのだから今晩はとことん飲もうではないか」
「そうはいきませんよ」
高井はそう言ってJRのガード下を抜けていった。それから新橋駅の銀座口広場
に出ると地下へと向かった。高井は銀座口地下のロータリーでタクシーを拾わなくてはならないのである。
「つれないねぇ」
「また付き合いますから」
酔った中年に高井は宥めるように言う。
そうして高井と中年は新橋駅の銀座口に出た。高井はすぐにタクシーを拾うと酔った中年をタクシーに乗せた。
「いや、すまないね」
中年が右手を挙げて言う。
「いえ楽しかったので、また誘ってください」
高井が言うとタクシーの扉が閉まった。そしてタクシーが走り去るのを高井は見送った。
「ご苦労なもんだな」
高井の背後から男が声をかける。
「お前こそだろう田宮」
高井が田宮と呼んだ男に言う。
田宮もスーツ姿だが高井の着ているスーツよりも上等で三ピースの光沢のある紺色の上質な生地でしつらえてあった。
「どこで飲んだんだ」
高井が訊ねる。
「今日は数寄屋橋から八丁目さ」
「また豪勢だね」
「しかし気が抜けないよ。早く気楽に飲みたいさ」
肩をすくめて田宮が言う。
「そもそも俺たちは任務のあるうちは禁酒だろう」
この高井と田宮の二人は三谷電子に潜入しているE.M.Cの諜報部隊・隠密隊の諜報員である。彼らの任務は三谷電子の社員の警護にある。未知の敵からの襲撃に備えて隠密隊は三谷電子の内外に諜報員を潜入させて警護にあたっていたのである。その潜入範囲は三谷電子内部から出入り業者、果ては社員の住居の近所までに及んでいる。高井と田宮が連れて行かれた飲食店や上司を押し込んだタクシーの運転手も隠密隊の諜報員なのである。
高井は技術課の課長、田宮は営業部のチーフを警護している。互いに同じ任務に就いたのはこれで五度目になる。
「お前は今どこに住んでいるんだ」
田宮が高井に訊ねる。
「柴又だ。今回は転居は無しだよ」
高井が素っ気なく答えた。
「そうか俺は日本橋の掘留町だよ」
田宮が言う。
田宮は転居ありの役割を引き当てたのだと知ると高井は運の良い奴だと思った。
隠密隊の隊員は様々な役割を担う都合上E.M.C内でも随一の転居が発生する。普段は柴又の本部近くか葛飾区の中川周辺よりも東よりから江戸川周辺に居住しているが潜入先の所在地や諜報員の潜入時の設定によって転居が発生するのである。
「今日は泊まっていけよ」
田宮が言う。
「あぁ、そうさせてくれ」
高井は静かにうなずきながら言った。
夜の更けきった銀座の町の静けさに高井は心細さを感じていた。
田宮の住むマンションに向かって高井と田宮は銀座の裏通りを歩いていた。
「不思議なモンだよな、ほんの数時間前まではここのビルの中でドンチャンとしていただろうに今はこんなにも静かになっている」
高井が雑居ビルに目をやりながら言う。
「静かなのは結構。こちとら毎日がうるさくてかなわない」
田宮が言う。
「言ってくれるね営業の期待の星はさ」
高井が少しからかう様な口振りで言う。
「あまり目立ちたくはないのだがな」
田宮が僅かな微笑みをこぼして言う。
田宮の微笑みを見て高井は田宮が潜入先で営業マンとして働いている事に充実感を得ているのだと感じとっていた。そして高井は田宮から感じた事を諜報員であれば当たり前に感じられる事だと思った。
諜報員として命がけの使命に尽くすよりも普通の勤め人である方がいつ命をおとすかも分からないという恐怖や不安を感じないで生きていられるからである。その世間一般の当たり前を感じるからこそ他人の平穏の貴重さを知って、他人の平穏を守り抜かねばならないという使命感が沸き上がるのである。
街灯の白い光が心もとなく感じる中央通りから昭和通りへと抜けて京橋・八丁堀へと高井と田宮の二人は歩いていった。
八丁堀に差し掛かって裏通りを歩いていると高井と田宮の耳に物音が聞こえた。
高井と田宮は互いに顔を見合わせた。そして直ぐに物音が聞こえたビルとビルの間の路地へと駆け込む。
室外機や配管の輪郭が朧気に見える薄暗い路地の奥に人影が見えた。
「おい!」
田宮が声をあげると人影は逃げ去るように路地の奥へと進んでいく。高井と田宮は躊躇なく人影を追跡する。
狭い路地を駆け抜けながら高井が懐からペンライトを取り出し人影に向かって明かりを照らした。すると高井と田宮の目には人の形をした緑色の物体が目に入った。
高井と田宮が緑色の怪物を目にした瞬間、緑色の怪物は急に踵を返して高井と田宮に向かってかけだした。
高井と田宮はすぐに身を翻そうとしたが緑色の怪物があっというまに二人に詰め寄ってしまった。そして、二人の眼前に立った怪物は両腕を突きだして吹き出して高井と田宮に緑色の噴煙を浴びせた。
緑色の噴煙が止むと緑色の怪物は姿を消していた。
「田宮、無事か」
むせかえりながら高井が言う。
「大丈夫だ」
尻餅をついている田宮が答えた。そして答えるのと同時に酷い喀血をした。
「田宮!」
田宮が喀血したのに驚き高井は声をあらげる。そして声をあらげた拍子に高井も吐血した。
互いの有様を見て高井と田宮は互いにカビに蝕まれて命を落とすのだというのを悟った。
高井は田宮と目を見合わせると懐から発信機を取り出し非常事態をE.M.C本部に知らせるシグナルを発信させた。そして高井は発信機に向かって声を吹き込み始めた。
「隠密隊の高井だ。田宮と共に敵と遭遇して攻撃を受けた。敵は恐らく一連のカビ化事件の主犯だ。俺たちもそのうちカビになっちまうだろう」
ビルの壁面に力なくもたれている田宮の四肢がカビに覆われていくのを高井は横目に発信機に声を吹き込む。
「これはチャンスだ・・・・・・敵に勝てる芽だ」
体の感覚が徐々に無くなっていくのに連れて高井の声がかすれていく。虚ろな視界にかろうじて見える田宮の姿は緑色のカビに全身を覆われた姿だった。高井は自分も同じ姿ならば、この上ない勝ち目を掴んだのを確信していた。
「なぁ・・・・・・」
田宮に何かを問いかけようとしたが高井は喉は声を発せなくなっていた。高井は満足に笑ったつもりだったが、その顔には高井の微笑をかき消すほどのカビが蔓延っていた。
二十分後に百獣騎兵隊と科学班の隊員が急行してきた時には高井と田宮の判別がつかない程にカビに侵された二人の亡骸があった。
「惨いな膵臓までカビに変質している」
頭から爪先までを保護する白いビニル製の防護服を既婚だ解剖医が言う。
「膵臓どころじゃありませんよ。髪の毛先から爪先までカビになっていますよ」
解剖医同様の服装の解剖医の助手が言う。
銀座のはずれの裏路地で発見された高井と田宮の遺体はE.M.Cに回収をされると葛飾区柴又の地下にあるE.M.C本部の細菌研究所に収容された。
敵対勢力の犠牲になった者の解剖は医学研究室の解剖室にて行われるのが通常の対応であるが今回の事件の肝であるカビの飛散による二次被害の防止の為に高井と田宮の遺体は細菌研究所で解剖されることになったのだ。
解剖を進めるにつれて高井と田宮の遺体は緑色のカビの固まりから屑へと変わっていった。二人の遺体は骨の髄までカビに変質して脆くなっていて執刀医と助手が軽い力を加えるだけでもボロボロと崩れてしまう有様であった。
「あんまりね」
防護服を着た理沙が言う。
「うん」
理沙と同様の防護服を着た真理が静かにうなずいた。
二人は高井と田宮の遺体から発せられるオーラの波形がカビと同様になっているのを感じ取っていた。
オーラは生命と物質がもつ固有の波形である。その波形は細胞や原子の結びつきによって決定される。こと生命においては構造が複雑な種になるに連れて細胞の結びつきだけではなく細胞の動きによってオーラの波形は変化する。つまり人間が思考や成長をする際に起こる細胞の増殖や神経細胞の電気信号のやりとりが人間のオーラを決定するのだ。オーラとは人間にとっては個人と個性を象徴する事象なのである。
高井と田宮の遺体からは全く同じ波形のオーラが発せられていた。その波形は人間の発する基本波形とも全く違っていた。近しい波形をもつオーラはカビである。人間の遺体からカビのオーラが発せられているというのは人間の体の全てがカビに変質させれてしまったという事を物語っていた。
「人間をカビに変えるなんて」
重たい口調で理沙が言う。
「うん」
真理が静かに頷く。
「責める事じゃないのよ」
真理が高井と田宮の犠牲に責任を感じているのを察していた理沙は少し口調を強くして言った。
「分かってる」
防護服越にこもった真理の声色が発せられる。
高井と田宮の犠牲が自分の責任ではない事は十分に分かっていたが敵の狙いであるOSの開発を担っているからには真理にとっては無関係な犠牲とは受け止められなかった。
千里亭の六畳間の自室で春樹は高井の最後の通信の音声データを聞いていた。座卓の上に置かれたタブレットから高井の声が再生されている。春樹は座卓の前に立て膝をついて座りながら高井の残した肉声に聞き入っていた。次第にかすれる高井の声からはカビの体を蝕まれている痛みや苦しみが感じられたが、高井の発する言葉からは痛みや苦しみを感じながらも情報を伝えようとする高井の使命感に溢れていた。
録音データを聞き終えると春樹は心中で高井と田宮が命と引き替えに遺した勝機を無駄にはしないと決意していた。
「ずいぶんと勝ち気な連中だねぇ」
あざ笑う様な調子の女の声が春樹の脳裏に響く。そして部屋の片隅に小さなオーラを感じ取った。
「負けると思って戦う奴はここには居やしないさ」
春樹が自信に溢れた口振りで言う。
「特に人の部屋の隅で小さくなっているような奴にはね」
春樹が鋭い目つきで部屋の欄間の隅を睨みつける。
春樹の部屋の欄間にオーラが集まってくる。小さなオーラが周りのオーラを蝕みながら怪人の姿へと変化していく。緑色の体表に胞子が納められた胞子のうのコブが無数居に生えている。四肢は長細く女性的な体つきをしている。
「さしずめカビ女ってところか」
ゆっくりと立ち上がりながら春樹が言う。
「貴様等になんと呼ばれようと私には関係はない」
カビ女が言う。そして春樹に向かって大きく飛びかかった。
春樹は素早くカビ女をかわしながら全身にオーラシールドを張り巡らせる。
間髪入れずにカビ女が春樹に蹴りを乱打するが、春樹はカビ女の蹴りを一撃ずつ両腕でいなしていく。カビ女の脚に着いているコブが次々に弾けて中からカビの胞子が飛び散る。
(かかったな千里春樹、私の攻撃を受けるというのは胞子を受けることよ)
カビ女のコブの中には高井と田宮を葬ったカビの胞子が内包されていて春樹にカビの胞子を付着させて能力によってカビを増殖させて春樹をカビに蝕ませて殺そうとカビ女は企んでいたのである。
カビ女は春樹に付着させた胞子にオーラを送るが自分の蒔いた胞子を感じられなかった。確かに蒔いた筈の胞子を感知できないのにカビ女は動揺した。
「高井と田宮の死体に引っ付いてくるまでは上出来だったが練り混みが甘かったようだなカビ女」
カビ女の動揺を悟った春樹が力強く言う。
「俺のオーラシールドは対消滅シールドだ。おまえの蒔いた胞子なんざコブと一緒に消し去っているんだよ」
春樹がカビ女に言い放つ。
春樹のオーラシールドは春樹の破壊能力の影響によりシールドにふれた物を瞬時に
破壊する対消滅シールドとなっているのである。カビ女が自身の蹴りを春樹に見舞った時点でカビ女の胞子は春樹の対消滅シールドによって破壊されていたのである。
「くっそぉぉぉ」
カビ女は絶叫すると三度、春樹に向かって襲いかかる。対して春樹は身を屈めて向かってくるカビ女の懐に潜り込むとオーラを集中させた手先でカビ女のわき腹に貫手を打ち込んだ。破壊の力が込められた春樹の右手がカビ女の体を突き抜いた。その瞬間の手応えの無さに春樹は唖然した。
「おとりか!」
春樹が言う。
「その通りよ」
カビ女は強い口調で言い放ちながらボロボロと崩れ去った。
春樹は愛用のロングコートを手に取って自室を飛び出して地下のE.M.C本部へと駆けていった。
ー春樹、敵がきた
春樹の脳裏に理沙からのテレパシーが届いた。
ーやっぱり本命はそっちか
春樹が理沙にテレパシーを送る。
ーどうゆうことよ
理沙の問いに答えようとした瞬間に通信機の呼び出し音が鳴る。
「こちら百獣騎兵隊の長尾だ。例のカビ事件を起こしている怪人に攻撃されている」
長尾の声を聞いて春樹は本部へ向かう足を止めた。
ー足を止めるな、本部へは私が行くよ
春樹の脳裏にレディ=ゼロの声が響く。
「ありがとうレディ。頼んだ」
春樹のオーラが独りでに放出されて再結晶されるとレディ=ゼロが姿を現した。
「行け、春樹」
「頼むぞレディ」
春樹は外へと、レディは地下の本部基地へ向かって駆けだした。
ーカズ聞こえるか俺と長尾の支援に行くぞ
春樹が一久にテレパシーを送る。
ーそうしたいがこっちもカビ女に絡まれている。長尾の方は任せる
一久からテレパシーが返ってくる。
春樹は千里亭の勝手口から外に出ると駐車してある専用のオートバイ・スカイ=ロータスに乗り込んだ。そして手早くエンジンをスタートしスカイ=ロータスを発進させて千里亭を後にして百獣騎兵隊の支援へと向かった。
「同時に仕掛けてくるとは恐れ入ったが本部が本命だろう」
眉間に皺を寄せた一久がカビ女に言う。
「そうだとしたら、どうするのだね」
カビ女が嘲けた口振りで一久に言う。
「速攻でブチ抜く」
怒気の籠もった口調で一久が言った。
一久がカビ女に遭遇したのは高井と田宮が息絶えた銀座の裏路地であった。一久が高井と田宮に弔いの花を手向けている最中にカビ女が一久に仕掛けてきたのである。
「チェンジ、ガンナー」
一久の怒りが込められた叫びがビルの谷間に木霊する。一久の体がガンメタルの生体装甲に身を固めたクロム=ガンナーの姿へと変身する。
「花を散らされて猛るとは噂に似合わずセンチメンタルな男なのだな」
カビ女は嘲笑しながら一久に向かって言う。
カビ女に向かってクロム=ガンナーはファイヤーランチャーアタッチメントを装着した左腕を向けている。
「よっぽど勘に障ったか」
カビ女が鼻で笑う。
「勘違いするなよ、こちとら端っからキレてんだっ」
クロム=ガンナーの怒声と共に腕のアタッチメントから火炎弾が打ち出されるがカビ女は難なく交わす。
「この程度かぁ、クロム=ガンナー」
「なわきゃねぇだろう」
クロム=ガンナーが再び叫ぶと右腕にもファイヤーランチャーアタッチメントが装着され背面からはショルダーキヤノンとマシンランチャーが展開され両肩には三連装ナパームランチャーが展開される。そしてクロム=ガンナーは躊躇なくカビ女に向かって展開した武装を一斉射した。
カビ女は交わそうとしたがマシンランチャーから矢継ぎ早に放たれたエネルギーボムの激流に呑まれたのが運の尽きであった。そこからナパームミサイルと火炎弾を交わしきれずに直撃してカビ女の全身が赤黒く燃え上がった。
クロム=ガンナーは燃えさかるカビ女を前に変身を解いて一久の姿に戻った。
「少し派手な線香だがリンドウの代わりにしてくれ」
そう呟くと一久は燃えさかるカビ女を背にして路地裏を後にした。
一久にとって高井と田宮という男は深い仲であった訳ではなかった。何度か任務を共にしただけである。しかし任務を共にした事を誇れる良き仲間ではあった。仲間の命を絶ったのと仲間の死を弔うのを仇に愚弄されるので一久の怒りが爆発するのには十二分であった。その怒りにカビ女が焼き尽くされるのに十分とかからなかった。
そして一久の乗ったワインレッドのクーペは春樹のスカイ=ロータスのシグナルを追って町屋方面へと向かった。
首筋の奥にジンと熱い電流が走るの真理と理沙は感じた。人体のオーラ送受信器官の交信帯に何者かのオーラが触れたのである。
高井と田宮の遺体に向かってオーラが走った。そのオーラは高井と田宮を蝕んだカビと同じ波形のオーラで、高井と田宮の遺体のカビと結びついて急激に増殖して甲高い奇声を発しながらカビ女の姿へと変貌した。
「逃げて」
解剖医と解剖医の助手に向かって理沙が叫んだ。
理沙の叫びと同時にカビ女が気味の悪い奇声を発しながら体から胞子をまき散らす。
「チェンジ=キカー」
「チェンジ=アナライザー」
胞子の奔流に呑まれながら理沙と真理が叫んで二人はクロム戦士の生体装甲を身に纏う。二人の変身による眩い紫と深紅のオーラの烈風が蒔き散らされたカビ女の胞子を焼き尽くす。胞子が晴れると理沙の変身した紫の生体装甲のクロム=キッカーと真理の変身した深紅の生体装甲のクロム=アナライザーが並び立っていた。
キッカーの両手の甲と胸元そして額の宝玉が輝くと五つの緑の光球がカビ女に向かって打ち出され瞬く間にカビ女を取り囲んだ。
「絶命化殺ピラミッド=フィールド」
キッカーの発したオーラによってカビ女を取り込んだ光球は三角錐の結界を張ってカビ女を封じ込めた。
「これで、お得意のカビは散らせないわね」
結界面にカビを吹きながら抵抗するカビ女にキッカーが言う。
「キッカー、アナライズするわ」
アナライザーが言う。
敵の構造を知れる絶好の機会をアナライザーは逃したくは無かった。アナライザーはその名の指すとおり分析に長けたクロム戦士である。敵の構造分析を行えば急所・構成物質を割り出すことができる。そうなれば酸素から金をあみ出せる真理の物質変換能力
によって最も有効な攻撃を敵に繰り出せるのである。
「オッケー重ねて」
キッカーが言う。彼女の張った結界を媒介にしてアナライザーはカビ女の構造解析を開始した。
「理沙、コイツは・・・・・・」
アナライザーが言い掛けた瞬間にアナライザーとキッカーの交信帶に悪寒が走った。
二人の真後ろに突如として四体のカビ女が現れたのだ。
四体のカビ女はキッカーとアナライザーを羽交い締めにしてカビを吹きかける。オーラシールドを張る間の無かった二人の生体装甲に青緑色のカビが根を張って腐食させる。
キッカーとアナライザーが生体装甲を蝕まれる痛みに悶絶する。
「さすがのクロム戦士も形無しだな」
「どうだ、男連中に助けを求めたら」
キッカーとアナライザーを押さえつけているカビ女が言う。
ー春樹、敵がきた
春樹の脳裏に向けてキッカーがテレパシーを飛ばした。
ーやっぱり本命はそっちか
春樹からキッカーにテレパシーが送られてくる。
ーどうゆうことよ
キッカーが問いかけると春樹と繋がっていたオーラの感覚が急に遠退いてテレパシーが通じなくなった。
何かが同時多発的に発生しているのはキッカーとアナライザーには想像に容易かった。それ故に挑発を真に受けるものではないなとキッカーはつくづく思った。
敵は強いしキッカー達は二人の非戦闘要員を庇いながら戦わなくてはならないという不利な状況である。しかし不利である事がクロム=キッカーの闘志を激烈に刺激していた。
ー真理、合図したら全身に物質変換をかけてカビを生体装甲に取り込んでちょうだい。その後に二人を安全な場所に逃がして
キッカーがアナライザーにテレパシーを送る。
ー分かったわ。
真理がテレパシーで理沙に応答する。
「さてクロム戦士をかだつけてしまおう」
「時間を与えては厄介だ」
「早く次の段階に進もう」
カビ女達が言う。そしてキッカーとアナライザーの生体装甲のカビを急成長させる為にオーラを流し込んだ。
ー今よ真理!
キッカーのテレパシーの合図がアナライザーに飛んだ。
アナライザーとキッカーを蝕んでいたカビがアナライザーの物質変換能力によって光沢のある生体装甲へと変換される。
「行ってちょうだい真理」
キッカーの声に応えてアナライザーが駆けて解剖医と助手を抱えて走り去った。
ー早く胞子の範囲を抜けなきゃ
焦るアナライザーの心が自身の足を早めた。
「逃がした所で無意味だろうに」
男二人を抱えて走るアナライザーの背を見てカビ女がせせら笑う。
「いえ、意味はあるわ」
鋭い声色でキッカーが言う。
「助からない命を拾おうととはな流石のクロム戦士だ」
「奇跡は起こせると言うか」
「正義の味方は猛々しいな」
カビ女と分身が口々にキッカーをあざ笑う。
「命をなくしたアンタには分からないわよ」
喉の奥から捻り出す様な声でキッカーが呟いた。その心中は真理と解剖医と解剖医の助手に対する罪悪感でいっぱいだった。
「真理さん、おろしてください」
解剖医の助手が掠れた声で言う。
「そうだ、私たちは自力で待避できる」
解剖医がせき込みながら言う。
二人の懇願に真理は応えずにいた。解剖医と助手を置き去りにしてキッカーの加勢に向かうことを二人に望まれるのをアナライザーは分かっていた。分かっているから
わき目も振らずに、がむしゃらになってカ霧の様に広がる胞子のただ中を走っていた。走らないことには自分が憎くて仕方がなかったのだ。
「懸命なのは健気なものだな」
霧状のカビが結集してカビ女の姿になる。
「どけぇぇぇぇぇぇ」
アナライザーがカビ女の周囲に向かって殺気だったオーラを放つと廊下の壁面がたちまち無数の針になってカビ女を串刺しにする。
「痛いじゃないか」
カビ女が言うと、再び空気中の胞子が結集してカビ女の姿になってアナライザーの背に蹴りを見舞う。
背中を蹴り込まれたアナライザーが抱えていた二人もろとも床に叩きつけられた。
「あッ!」
自分の腕からこぼれた二人の背中を見てアナライザーは愕然とした。解剖医と助手の防護服が破けていたのだ。
「ははははは、残念だったな」
「空しいものだよな」
カビ女と分身が体から意気揚々と胞子を吹き出しながらアナライザーをあざ笑う。
「そんな」
防護服から露わになっている解剖医と助手の背中からカビの菌糸が伸びている。解剖医と助手の体が着々とカビに変質していくのをアナライザーは目に焼き付けていた。
愕然としているアナライザーにカビ女が迫る。アナライザーが起きあがりカビ女の顔面を力一杯に殴りつける。そして続けて分身の腹に蹴りを打ち込む。
「まだ来るか」
オーラの流れからカビ女の結集をアナライザーは感じ取った。霞の様になっているカビ女にオーラの籠もった手刀を打ち込んでアナライザーはカビ女の結集を妨害する。しかし背後から結集した二体のカビ女に蹴り込まれて床に転がされる。
「このぉぉぉぉぉぉ」
床を怒気に任せて拳で殴って立ち上がりアナライザーはカビ女に殴りかかる。そしてカビ女を倒す。そして結集して新たに現れるカビ女に叩き伏せられる。一体を倒せば二体に叩きのめされてニ体をしとめた頃にはカビ女は六体になってアナライザーを取り囲んでいた。
「そろそ止めだな」
カビ女が言うと他の五体が息を合わせてアナライザーに襲いかかった。アナライザーが両手の拳を握って身構える。
そのとき芯の通った清々しい女の叫びが木霊した。
「カスケード=ハリケェェェェェェン」
黒い光のオーラの旋風が六体のカビ女を胞子の霧諸共のみこんでたちどころに破壊し尽くした。
「なんなんだぁぁぁ」
カビ女の断末魔が黒い旋風に呑まれて消えていった。
「貴様には分かるまいよ」
廊下の奥から力強い足取りで現れたレザーベルト状のアイマスクをして四肢の拘束が解かれた拘束衣姿のレディ=ゼロが言い放った。
敵が去って胞子の霧が晴れたのをアナライザーは感じ取った。そして一目散に解剖医と助手の元に駆け寄った。
解剖医と助手の体はカビに侵されているが意識はかろうじてあった。アナライザー
は解剖医の背中に手を添えてカビの物質変換を行おうとした。
「よしてくれ真理君」
解剖医が掠れた声で言った。
「そうです。よしてください」
助手が力のない作り笑いをアナライザーに見せて言う。
「でも私・・・」
アナライザーが嗚咽混じりの声を出す。そして解剖医に添えた手にオーラを流してカビの物質変換を試みたがカビを蝕まれた臓器を正常な臓器に変換できない。
「真理、よすんだ。できないことを無理にするな」
レディ=ゼロはそう言うと顔のアイマスクを解いた。凛とした切れ長の大きな黒い瞳が解剖医と助手を見つめる。
「レディ、お願いだからやめて」
アナライザーが言う。
「それはできない。分かるだろう君ならば。こうするのが私と春樹の役割なんだ」
淡々とした口振りでレディ=ゼロが言う。そして解剖医の助手の額に手を当てた。
助手のオーラがレディ=ゼロの体内へと吸い込まれていった。苦悶に満ちていた助手の顔つきは次第に白く穏やかになって眠るような顔つきになっていた。
続けてレディ=ゼロは解剖医の額に手をあてる。
「酷ですな」
解剖医がレディに言う。
「そうだな真阪、君には最後に嫌な役割をあてがってしまったよ」
「彼女の為になれるのなら悪くはありません」
解剖医はそう言うとこの上ない幸せを感じながら息を引き取った。
「レディどうして二人を助けられなかったの」
アナライザーがレディに問いかけた。
「その問いは君自身に向けるべきだな。しかし私があえて答えるならば彼らの生命体としての尊厳と魂は救えたぞ」
「それでも生きていないんじゃ意味はないじゃない」
うわずった声色でアナライザーが言う。
うなだれているアナライザーをレディが静かに抱きしめる。
「そうだな。けれどな生きているお前が意味を持たせることだってできるんだ」
「それはそうだけど」
「何でもできる訳じゃないのさ人間はね。だからこそ自分のできる事に全力を尽くすべきだよ」
不意にレディとアナライザーは大きなオーラのうねりが近づいて来るのを感じた。そして基地の通路がガタガタと音を立てて揺れ始めた。揺れが強くなるにつれて何かが大きなオーラの固まりがレディとアナライザーに近づいてきていた。
向かってくるオーラの固まりに対してレディとアナライザーが身構える。
アナライザーは向かってくるオーラの波形パターンを解析するとカビ女のオーラと同じであるのが分かった。そこから導き出されるのは胞子の嵐か巨大なカビ女の襲来であった。
「まったく懲りないようだな」
レディがゆったりとした口振りで言う。そして両手を胸の前で広げてオーラを結集させ凄まじい勢いで圧縮していった。圧縮されたオーラは重力と光をねじ曲げる程の凄まじい量のエネルギーを発している。
「待ってレディ、理沙がいる」
アナライザーが壁向こうで跳ね回るキッカーのオーラを察知して言う。
跳ね回っていたキッカーのオーラが一気にアナライザーとレディに向かってくると隔壁をキッカーが吹き飛ばされながら突き破ってきた。
「やってレディ!」
キッカーが叫ぶ。
「真理、見えているんなら」
レディが声をあげる。
「バラすわよ!」
アナライザーの叫びと共に強大なカビ女が隔壁を押し破りながら現れる。
アナライザーのゴーグルの奥の両目が力強く輝くいとアナライザーのオーラが巨大なカビ女をたちまち取り巻いた。
アナライザーのオーラが巨大なカビ女を構成するカビを素粒子にまで分解する。
「いいぞ真理」
そう言ってレディが結集したオーラをカビ女に放った。レディの放ったオーラはカビ女の前で炸裂するとマイクロブラックホールになって巨大なカビ女と体を構成するカビをオーラごと呑み込んでいく。
野太いうめき声を上げる巨大なカビ女は体のカビを増幅させて体を再生させようとするがアナライザーのオーラに巻かれてカビが素粒子に分解されてカビを結集でき無くなっていた。そうして巨大なカビ女は分解されてブラックホールに呑み込まれていった。
ブラックホールがレディにオーラを取り込まれて消えていく。黒い重力の渦が小さくなってレディの手のひらに握られて消えた。
「相変わらず強烈ね二人とも」
キッカーが生体装甲にかぶった砂埃を払いながらいう。
「そりゃあたりまえよ」
少しばかり息をあげながらも明るい調子でアナライザーが言う。
アナライザーの声色を聞いてレディとキッカーは顔を見合わせた。
「まったく手のかかる子だよ君たちは」
溜息混じりに穏やかな口振りでレディは言った。
「どうだ我々の力は」
「我々が敵にするには手応えが無かったな」
カビ女のクローン達が体のコブから胞子をまき散らしながら意気揚々と言い放つ。
そしてカビ女に従えられている五体のクローンも体から胞子を噴出させていた。
奥多摩の森林を抜ける国道にはカビに侵されて腐り果てたオートバイがあって、その周囲にはカビに蝕まれて力つきたE.M.C隊員の姿があった。
カビ女によって撒き散らされるカビの胞子は霧となって辺りを包み込むと道路や森林をカビで蝕んでいっていた。
胞子の霧を広げながら闊歩するカビ女の一団の頭上から矢継ぎ早にレーザーが音もなく降り注いでニ体のカビ女の体を打ち抜いた。
他の三体のカビ女が頭上を見上げると胞子の濃霧の霞む向こうでチッチッとオレンジの光が細やかにまただた。そしてレーザーの雨が再びカビ女達に降り注ぐ。カビ女達はレーザーを見切ってかわした。
胞子の濃霧の向こうの空から男の声が響く。カビの濃霧を引き裂くようにして急降下する黒い空飛ぶオートバイのスカイ=ロータスのエンジンの高らかな唸りと共に千里春樹の叫び声が木霊する。
「チェンジ、セイバー」
スカイ=ロータスに跨がった春樹を黒いオーラの閃光が包み込んで黒い生体装甲に身を固めた戦闘形態のクロム=セイバーに変身した。
クロム=セイバーはスカイ=ロータスを大きく横滑りさせて車体後部の主翼でカビ女のクローンを横一文字真っ二つに切り裂いた。そして正面に向かい合っている残りのニ体のカビ女へとスカイ=ロータスを突撃させる。
宙を舞ってカビ女が迫るスカイ=ロータスをかわす。
カビ女とすれ違った瞬間に十時型の手裏剣を投げつけた。
わき腹に手裏剣を受けたニ体のカビ女はバランスを崩して地面に叩きつけられた。
クロム=セイバーはスカイ=ロータスを急旋回させてフロントカウルのレーザー機銃の照射線上に捉えてるとレーザー発射ボタンを押した。
レーザー機銃の照射口から鮮やかなオレンジ色の閃光が瞬いてニ体のカビ女の体をヅタヅタに焼き抜いた。
クロム=セイバーはスカイ=ロータスから飛び降りると息絶えたE.M.C隊員の傍らへと駆け寄った。
カビのたかった遺体をクロム=セイバーが抱き抱えようとするとボロボロに崩れてしまう。
崩れたカビにオーラが通って胞子と結びつきカビ女へと姿を変える。クロム=セイバーが倒したカビ女達も胞子や周囲のカビを吸収した再生する。
クロム=セイバーはカビ女がクローンを生成し再生していく様を伺っていた。
「「「「どうしたクロム=セイバー。この量は裁ききれないか」」」」
カビ女のクローン軍団が声をそろえてクロム=セイバーに言い放った。
カビ女の嘲笑にクロム=セイバーは黙していた。そしてカビ女のクローン軍団に向かって両腕に展開したアームブレードをかかってこいと言わんばかりに身構えるのみであった。
「かかれっ」
カビ女の号令が発せられるとカビ女の軍勢が一斉にクロム=セイバーに襲いかかる。
クロム=セイバーは両腕のアームブレードを振るってカビ女のクローンを次々と切り捨てていく。しかしクロム=セイバーがカビ女のクローンを切り捨てる度にクローンは周囲のカビと結合して再生するか新たなクローンが生み出されるかしていた。
ーカビを散らしてしまわない事にはどうにもならいか
次々と現れるカビ女の軍勢に囲まれながらクロム=セイバーは身構えていた。
「まだ、やる気か」
「だが我々も暇ではない」
「そろそろトドメを刺させてもらおうか」
そう言ってカビ女のクローン達が一斉にクロムセイバーに向かっていった。何体かのクローンはクロム=セイバーに切り捨てられたが大多数のクローンがクロム=セイバーの体にでたらめな体制で組み付いた。
そしてクローン同士がクロム=セイバーごと結合して一体のカビ女へと成り代わりクロム=セイバーの四肢をカビ女の体へと取り込んだ。
「私の体内に取り込めば対消滅シールドの効果も大したことは無いのだよ」
カビ女の体に取り込まれて身動きのとれないクロム=セイバーにカビ女が言う。
クロム=セイバーは黙して答えづずにいる。
そして、どこからかともなく何とも知れないオーラがカビ女の体を貫いてクロム=セイバーに結集する。
「なんだこの攻撃は」
「貴様には分かるまい」
クロム=セイバーが怒りを滲ませた静かな唸り声で言う。そして結集させたオーラを一気に解放させてカビ女の体を木っ端微塵に吹き飛ばした。
吹き飛んだカビ女の体は瞬時に再構築を開始するがクロム=セイバーが放ったオーラが張り付いてカビ女の再生を阻んでいた。
「一体、何なんだ」
再生能力が使えずカビ女は動揺するばかりである。なぜ再生できないのかも分からないし原因も分からない。バラバラになった体に漠然とした力が重荷の様になってのしかかっている感覚があるだけである。カビ女にとって正体不明の力に押しつぶされている感覚事態が恐ろしくてならなかった。
そしてカビ女は体をバラバラにされたまま地面に転がり落ちた。
ゴーグルの奥からゆらりとした赤い眼光を光らせながらクロム=セイバーがカビ女の頭部に近づいてくる。
「安心しろ。その力は貴様を殺しもしない。生かしもしないがな」
重々しい口調でクロム=セイバーが言う。
「ただ裁かれるだけだ」
クロム=セイバーがそう言うと、バラバラになったカビ女の体を力が押しつぶして体を構成するカビを残らず破壊する。
カビ女を押しつぶす力が発するオーラがカビ女に蝕まれて息絶えたE.M.Cの隊員達の最後の瞬間を追体験させる。E.M.C隊員達のカビに体を蝕まれる苦痛と未練や悲しみが一気にカビ女にのし掛かってカビ女を責め苛んでカビ女の体を破壊していった。
間髪入れずにクロム=セイバーは周囲を舞うカビのオーラと自分のオーラを結びつけると一気にたぐり寄せた。オーラの繋がりに引っ張られて辺りを霞ませていたカビがクロム=セイバーの手元に結集し胞子の霧が晴れる。空は重苦しい曇り空で爽快さに欠けている。
集められたカビがカビ女に変じようと蠢くがクロム=セイバーのオーラが放つ引力に負けてしまう。そうして集められたカビはクロム=セイバーの引力に負けて手のひら大の大きさにまで圧縮され最後は破壊エネルギーを流されてカビを残らず死滅させられた。
クロム=セイバーは変身を解いて春樹の姿へと戻った。そしてスカイ=ロータスに跨がるとエンジンをスタートさせる。春樹がスカイ=ロータスのアクセルを引き絞ると木々まで腐らされて木の葉ひとつ擦れる音のしない森林の跡にスカイ=ロータスの甲高いモーターの励磁音を響かせて車体を曇天の彼方へと向かわせた。
スカイ=ロータスが飛び立つのと同時に一久が乗ったワインレッドのクーペが姿を現した。
辺りを見回してから曇り空に飛んでいくスカイ=ロータスに乗っている春樹を見て
一久は「アイツも辛気くさいなぁ」と呟いた。そしてスカイ=ロータスの後を追ってクーペを走らせた。
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