EP.9/警守-三上一久-
湘南から帰ってきてから綾の調子は回復の兆しを見せていた。五日間の休養を経て大学に復帰してからは駿介の家に帰っては無邪気に講義の内容やサークルでの出来事を話す程度には調子を戻していた。肌の血色もよく色艶が増していた。
綾の早い回復は駿介の暖かな献身があってこそであった。かいがいしく食事を用意し散歩に連れ出して言葉を紡ぎあって駿介は綾を励ました。この間の活気に満ちた様子で綾の面倒を見る駿介は正に青春の絶頂にあった。
立ち直りつつある綾の様子を見て一久は次の襲撃は綾に知れないように防ぎたいと切実に思っていた。また直向きな愛情を綾に向ける駿介の思いも無駄にしてはならないとも考えていた。
一方で湘南から帰った一久にも動きがあった。それはE.M.C.総司令官・千里大助とフラッカーズ隊長兼特別弾劾執行官・千里春樹のサインが記された最上位命令書が届けられていたのだ。この命令書によって綾の警護に関連する行動について一久はサインをした二人の指揮官の責任の元で動く事となった。つまり春樹と春樹の父親である大助が一久に任務の一切を任せたのだ。こうなると一久には失敗が許されない。もし綾が蠍男の手にかかる事があれば事は一久一人で収集はできなくなる。確実に責任を負って春樹と大助の二人は指揮官としての役職を委員会から取り上げられるだろう。そもそも命令書を委員会が通したのは大助や春樹を快く思わない委員が居るからこそなのだ。それを承知の上で大助と春樹は命令書にサインをしているのである。その事の重大さを思うと、かたや親友から、かたや父と呼び慕う大助からの温情がこもった命令書を強く両手で握りしめて一久は滲むような調子で「恩にきるぜ」と呟いてジャケットの内ポケットにしまい込んだ。
それから二週間間は敵からの襲撃は無かった。駿介は綾に純情であり、綾も純粋であった。その二人の影から見守る一久にもつかの間の安らぎがあった。
夕方頃になると駿介は綾を迎えに出かけるのが日課になりつつあった。警護や打ち合わせだとかで忙しなく動き回る一久に代わって綾の身の回りを世話を駿介が担っていたた。
バイクを走らせて綾の通う城北大学の本郷キャンパスへと向かった。
カルバートハイウェイを早稲田通りから大久保通りに抜けて後楽園へと抜けて城北大学の本郷キャンバスへと着いた。地下の駐車場にバイクを停めてエレベーターで地上へ向かう。そして地上への出口で入館手続きを済まして駿介は本郷キャンパスの敷地へと入った。
カルバートハイウェイには丁単位で支線が通されていて自動車は目的地の最寄りの支線にある駐車場に駐車させる様に定められている。そして備え付けのエレベーターで地上に出る事ができるのだ。
綾が講義を終えるのをキャンパスの噴水広場で駿介は待っていた。銀色のフルフェイスのヘルメットを片手に黒いレザーのパンツとライダーズジャケット姿の駿介は行き交う大学生の目を引いた。駿介の事をチラチラとわき目にしながら学生達は行き過ぎていた。
何を考える訳でもなく呆然としながら駿介が綾を待っている内にキャンパスから友人人と談笑しながら綾が出てきた。
綾は駿介に気がつくと友人との話を切り上げて駿介に駆け寄ってきた。
「おつかれさま」
えくぼを深くして駿介がほほえむ。
「毎日ありがとうございます」
軽く会釈して綾は頬を赤くした。父親と学友以上に親しい男性のいない綾には異性としての駿介と一久は特殊な存在だった。特に湘南から帰ってからの積極的な駿介の献身ぶりは箱入り娘も同然の綾には未体験の感情を向けざるを得なかった。
連なって大学の広場を歩く駿介と綾。互いに他愛のない内容の言葉を掛け合って歩く姿は睦まじくあり誰もが羨ましく思えてならなかった。
駿介と綾の間柄を羨ましく思いながらも暖かく見守る男が綾の影の中に一人居た。一久である。彼は駿介と綾の間柄が親密になるにつれて忙しそうに振る舞っていたが実際には周辺の警備をしている隠密隊の諜報隊員との打ち合わせ程度しかやることがない。一久は綾の警護するうえで綾に付きっきりにならなくてはならい。しかし駿介の純粋な愛情が綾の精神を立て直していくのを見て一久は二人きりの時間を多く作るのが綾にとって良い事になると判断した。この判断には駿介への一久の個人的な心使いもあった。いくら親友とはいえども好意をもっている女性の近くを他の男がうろつくのは気にかかるだろうし、事故から立ち直った駿介には人並みの幸せを掴んでほしいいと一久は心から思っていた。そうして綾の警護の為に自身の能力を使って一久は綾の影に潜り込んで警護を続けていた。
地下の駐車場に着くと駿介がバイクを綾のもとへと回した。そして赤いヘルメットを綾に手渡す。駿介からヘルメットを受け取った綾はヘルメットを頭に被った。そしてバイクに跨がる駿介の背中に綾は自分の体をぴったりと寄せてバイクのリア側に乗った。
「出して大丈夫です」
綾が言う。そしてバイクのエンジンがかかると駿介の腹を抱きしめる力を綾は強めた。
綾からの合図を受け取ると駿介はバイクを発進させた。
来た道を戻るようにして駿介は家に向かってバイクを走らせた。駿介の家にたどり着くと二人は家に入っていく。
能力を使って一久は玄関の扉と綾の影が重なったのにあわせて扉の影に乗り移った。そうして二人がリビングに向かうのを影から身ととどけた。そうして一久は二人が寝静まるまでは影の中に潜んで過ごす。そして影から出て食事と風呂を近所で済ますと朝方には玄関の影へと戻って綾を待ちかまえるのだ。そして駿介と出て行く綾の影に移って警護に就くのだった。
影に潜り続ける一久の日常がニ週間ほど続いた夜である。一久は普段どおりにカプセルホテルの大浴場の湯船に浸かって体を休めていた。夜中の時間帯で浴場を一久は独占していた。そこに一人の男が入ってきて洗い場で男は体を洗い始めた。
シャワーから流れる水音に一久は耳をすませて瞼を閉じた。湯船が凝り固まった体をほぐしてくれる感覚が一久には心地よかった。
体を流し終わった男が湯船に浸かってきて一久の真横に座った。
男から妙な緊張感が一久には伝わってきた。背筋を伸ばし立て膝になって湯船には二の腕程度しか浸かっていない。
一久は湯船から出ようと立ち上がった。その瞬間に勢いよく男が湯船から飛び出して一久に掴みかかった。
羽交い締めにされた一久だったが男の腹と足の甲に一撃を加えて逃れすぐに男に向かって身構えた。
一久が構えるのにあわせてなだれ込む様にして更衣室やサウナルームから銀色の覆面の男達が現れた。
前後に控える銀色の覆面男に一久は殴りかかった。男一人と組み合うと背後から別の男が一久に襲いかかる。組み合っている男の体制を崩して一本背負いで一久は背後から襲い来る男に投げつけた。二人の男は床に勢いよく叩きつけられる。その二人に足下をすくわれた男が転倒する。その合間に一久と別の男は湯船の中でもみ合っていた。一久の拳が男の腹に入り更に追い打ちで後頭部にも一撃を加えられ湯船にしぶきを巻き上げて倒れる。
湯船で立ち回る一久の脳裏に春樹のテレパシーが飛んできた。
(何しているんだカズ。綾さんが襲われているぞ)
(やっぱり連中の作戦か!)
一久がテレパシーを返した。
(隠密隊が苦戦しているようだから俺たちも救援にでるぞ)
(いや、俺がいく)
そう返すと銀色の覆面の男達に対してあえて体制を崩して一久は湯船の底に押さえつけられた。そして複数の男に揉まれているどさくさの内に能力を使って影の中に潜り込んだ。
カルバートハイウェイの中を専用バイクのブラックロータスに跨がって駿介の家に向かうべく春樹は疾走していた。その途中で春樹は駿介に遭遇した。
「佐山さん、綾さんは」
バイクを停めて春樹が訊ねた。
「この街道を八王子の方へと向かっています」
駿介が焦り気味に言う。
「了解した。この先は我々が引き受ける」
「いえ僕もついて行きます」
鬼気迫る強い口調で駿介が春樹に言った。
「ダメだ。佐山さんにまで何かがあったら俺は一久に会わせる顔がない」
そう言って春樹はブラックロータスのスロットルレバーを引いてブラックロータスを発進させる。
ブラックロータスに追いすがるようにして駿介はバイクを走らせる。やがてブラックロータスと駿介のバイクとが並んだ。
「帰れ!帰るんだ!」
怒気のこもった声で春樹は駿介を制止した。
「帰りません。綾さんに何かあれば僕はカズに顔向けできませんよ」
ヘルメットのバイザーから鋭い視線を春樹にむけて駿介は言った。
「それでもだ!」
声をあらげて春樹はブラックロータスを加速させた。しかし、執念深く俊介も追走する。そのまま二人は敵を追いかけて武蔵野の造成地に出ていた。造成地の赤土の上には敵の車の轍が残っていた。五キロ程度、轍をたどっていくと轍は途切れていた。
「タイヤの跡がない。奴等はどこに行ったんだ」
バイクから降りて駿介が周辺を見渡す。
「タイヤの跡が途切れていると言うことは入り口が近くにあるんだろう」
土を手でいじりながら春樹が言う。そうして地面を探っていると土に偽装した金属の板を見つけた。
「ここからは俺が一人でいく」
春樹が言う。
「いや、僕も行きますよ。ここまでやってきたんだ」
息を巻いて駿介が言う。
「いや、君にはここで後から来る仲間たちの引き込みをやってもらいたい」
「引き込みですか」
「そうだ。この入り口を後から来た連中に知らせるんだ。頼んだぞ」
駿介の方に軽く手を当てて春樹は言った。
「わかりました」
少し拗ねた口振りで駿介は春樹の頼みを引き受けた。
春樹は鉄板の上に掌をあててオーラを這わせる。ハッチの向かいの奥へとオーラを伝わらせてハッチを開ける仕掛けを探った。大旨の仕組みを把握するとおもむろに春樹は、春樹と駿介の乗ってきたバイクを押して鉄板の上へと置いた。するとバイクのタイヤが鉄板に隠されたスイッチを押してエレベーターを作動させた。春樹とバイク二台を乗せた鉄板は地下へと下降していくと入れ替わりで別の鉄板がせり出してきて入り口を隠した。
エレベーターがアジトの地下にたどり着くと春樹はアジトの通路を進んで綾を探した。途中で二人組の戦闘員に見つかったが警報を鳴らされる前に素早く立ち回って一人を昏倒させ、もう一人を羽交い締めにして締め上げた。
「ここに女が一人つれてこられた筈だ。何処にいる」
激しい怒気のこもった重たい春樹の声に戦闘員は恐れをなして綾の捕らわれている牢屋の場所を白状した。
「Aニブロックの六号」
戦闘員が言うと春樹は戦闘員の頭を強く殴って昏倒させた。それから春樹は綾の捕らわれている牢屋へと向かった。
薄暗い廊下を慎重に進み春樹は牢屋へとたどり着いた。牢屋の入り口に立っている看守を締め落として牢屋の鍵を奪い春樹は牢屋へと入った。
春樹はオーラの感触で綾を見つけた。真っ暗闇の牢屋の隅でで綾は怯えながらうずくまっていた。
「綾さん、助けにきましたよ」
綾の体を抱き起こして春樹が言う。
「千里さん」
かすれた声色で綾が言う。
不意に背後から春樹は殺気を感じた。次の瞬間、蠍の尾が暗闇から綾にめがけて飛んできた。春樹は咄嗟に綾をかばって抱き寄せた。そして、深々と背中に毒針を突き立てられた。苦悶しながらも力ずくで毒針を春樹は抜き去った。
「千里春樹。予想通りの行動だ」
暗闇から気味の悪い男の声がする。
おぼつかない足取りで立ち上がり声のする方へと春樹は身構える。
「狙いは俺か。俺が綾さんを庇うのを読んでいたんだな」
息を荒くしながら春樹が言う。
「そうだ。ここしばらく観察させてもらって貴様たちの行動原理は正確に把握しているのだ」
暗闇からの声の主は淡々とした調子で言う。
「そうかい」
不適な笑みを浮かべて春樹は声のする方へと殴りかかる。毒に体を犯されているとは思えない鋭い拳が暗闇からの声の主をとらえる。
春樹のパンチを受けて暗闇からの声の主は牢屋の明かりの下へと姿を現した。茶褐色の外骨格の体と両腕の先は鋏になっていて頭頂部からは蠍の尾のような部位が垂れ下がっている。蠍男の姿が露わになった。
「貴様だな、一久とやりあったのは」
「そうだとも。あの時はしとめ損なったがな」
右腕ぼ鋏を春樹に向けて蠍男が言う。
身構えて体のオーラを集中させてクロム=セイバーに変身しようとするが蠍男に注入された毒がオーラの流れに乗って体中に一気にまわり春樹の体を蝕んだ。そして毒がもたらす激痛に耐えかねてオーラを散らしてしまいクロム=セイバーに春樹は変身できなかった。
「私の毒はどうだね。千里春樹。流石の貴様も変身できなくば私には勝てまいよ」
余裕のある笑い声を交えて春樹に向かって言い放った。
「毒ごときで勝てると思うなよ」
喉の奥から絞り出すようにして春樹が言う。
春樹の危機を察したのか呼び出されもせずにレディ=ゼロが姿を現す。
「まったく何をしているんだ」
全身を拘束具によって封じられているレディ=ゼロが春樹に言う。
「レディ、綾さんを連れて脱出してくれ」
「それでいいのか」
蠍男を見据えながらレディ=ゼロは春樹に問いかけた。
「それでいいんだ」
苦しみを滲ませて春樹は言った。
「まったくお前という子は本当に・・・・・・」
唯一露わになっている口元に微笑みを見せて腕の拘束を解くとレディ=ゼロは綾を担ぎあげた。
「逃すか」
頭頂部の毒針をレディ=ゼロに向かって蠍男は翻した。毒針がレディ=ゼロに向かって一直線に飛来する。
綾を抱えたままオーラを前方に張ってレディ=ゼロはオーラの障壁で毒針を弾き飛ばした。
あらぬ方向に飛んでいった毒針の軌道を修正するのに蠍男の気が割かれた隙をついてレディ=ゼロは綾を抱き抱えて牢屋から出て行った。
蠍男はレディ=ゼロを追いかけようと駈けだしたが春樹に足払いを仕掛けられ転倒してしまった。
「くたばりぞこないが」
憎しみと侮蔑のこもった視線を春樹に向けながら荒っぽいうなり声で蠍男が言う。蠍男の言葉に呼応するように春樹に狙いを定めて毒針がゆらりと蠢いた。そして尾が鞭のように振るわれて先端の毒針が春樹に襲いかかる。
春樹は針が刺さる寸前に蠍男の頭から延びている尾と毒針の付け根を掴んだ。そして勢いをつけて尾を引っ張って蠍男を転ばせる。
「くたばるには、まだまだ」
ふらつきながら立ち上がって春樹が言う。熱と倦怠感が回りきった体を力の入らない両足でんとか支えて春樹は立っていた。自分の体の危うい状況を思うと青白い顔に自然とうすら笑みが浮かんできていた。
春樹の見せる気味の悪い表情に圧倒されて自分は優位にあるというのが急に不安になって蠍男は思わず固唾をのんだ。恐る恐る立ち上がって俯いて薄ら笑みを浮かべたまま大股になってかろうじて立っている春樹に向かって蠍男は右腕の鋏を振りかざした。
蠍男の意に反して春樹の頭の寸前で鋏が止まった。
「遅いなぁ」
春樹がぼやく。
蠍男の影が揺らぐと影の中から一久が姿を現した。
「お前いつのまに」
一久の姿を見て蠍男は大声をあげた。
「何を驚いてんだ」
不適に笑いながら言って能力を解くと素早く春樹の傍らに一久は回り込んだ。
「佐山さんはどうした」
かすれた声で一久に春樹は訊ねた。
「シュン?見てないぞ」
目を丸くして一久が言う。
「なに?」
春樹が眉間に皺を寄せる。
春樹の驚いた顔を見て一久は事態を察した。
「てめぇ!シュンを何処にやった」
蠍男に向かって一久は怒号をあげた。
「ここだよカズ」
蠍男が一久に言った。
蠍男の声と言葉を聞いて一久は愕然とした。蠍男が駿介の声で喋ったのだ。
「そうだよカズ。この佐山駿介が蠍男なんだよ」
そう言って一久に向かって頭頂部から延びている尾をふるって毒針を蠍男が飛す。
迫ってきた毒針を素手で払いのけると蠍男に向かって一久は詰め寄った。
「最初から俺たちを利用していたのかよ」
蠍男に向かって一久が拳を振るう。
「そうだとも。全ては科せられた任務の為だ」
一久の拳を蠍男が受け止める。
「それじゃ綾さんはどうなんだ」
「彼女こそ私の目的に最も利用価値のある存在だよ」
「何だと」
蠍男の蹴りが一久に襲いかかる。それを後ろに飛んで一久は蹴りを避ける。間髪入れずに姿勢を低くして蠍男が一久との間合いを詰めてきた。そして両腕の鋏をふるってラッシュをたたき込む。
自身に打ち込まれるラッシュに対して一久は払いのけていた。そして、ラッシュが途切れた瞬間に腹部に毒針を突き立てられた。
瞬く間に一久の体中に毒が回る。腹部を強く押さえて一久は膝をついた。
「ざま無いなカズ」
あざ笑いながら一久のことを蠍男は足蹴にする。
蠍男にされるがままに地面に一久は転がされた。
無抵抗の一久を蠍男は鼻で笑うとそのまま牢屋を出て行った。
「カズ、しっかりしろ」
重たい体を引きずる様にして春樹は一久にすり寄った。
仰向けになって倒れている一久はか細い声で駿介の名前を呼んでいた。
「よすんだ、奴はお前を」
春樹がのどの奥から絞り出すように言う。
「かまいはしねぇよ」
一久が囁いた。
「後ろから撃たれた傷だって誇らなくちゃならねぇ時があるもんさ」
真っ青な顔色に脂っこい汗を滲ませ苦し紛れの笑みを浮かべながら一久は言った。
春樹が潜入したアジトの出入り口の近くには理沙と真理が甲虫機甲隊の隊員を四名引き連れて来ていた。
先行して出動した春樹を追って理沙達はアジトの入り口付近までやってきていたが彼女達が見つけたのは春樹の専用バイクのブラックロータスだけであった。目にした状況から春樹が敵のアジトに潜入したと判断した理沙は応援の為にアジトに突入しようとしていた。
理沙と真理はクロム戦士の姿、紫の生体装甲のクロム=キッカーと紅の生体装甲のクロム=アナライザーに変身していた。理沙と真理に随伴してきていた甲虫機甲隊の隊員も装備を身につけていて敵のアジトに踏み込む準備は整えられていた。
理沙達がアジトに踏み込もうとしたとき出入り口のハッチが開いてアジトの中から綾を担いだレディ=ゼロが飛び出してきた。
「レディ!」
不意の出来事に理沙は思わず大声をあげた。
「理沙と真理か。丁度良かった」
そう言って気を失っている綾をレディ=ゼロは降ろした。
「春樹はどうした」
真理が訊ねる。
「まだ中に居る」
アジトの出入り口に目をやってレディ=ゼロは答えた。
「なら二人と合流しましょう。私と真理とレディとで踏み込むわ。甲虫隊は綾さん護衛をお願い」
理沙が指示を飛ばした。その指示には全員が従った。
理沙達が再びアジトに踏み込もうとしたとき、今度は地鳴りが起こった。
「自爆よ」
アジトの奥から真理の紅の生体装甲に内蔵されている熱探知機能が高熱を探知した。熱はアジトの奥底から放射状に広がって施設を飲み込んでいっていた。
一際大きな振動があってからアジトの出入り口を塞いでいるハッチが天高く吹き飛んだ。
敵のアジトは施設内が全て爆破されていて瓦礫が散乱していた。凄惨な有り様の施設の中を傷だらけになりながら一久を引きずる様にして担いでいる春樹を理沙達は見つけだして保護した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます